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デザイン思考とアート思考(再考)

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これまでnoteで執筆した「デザイン思考とアート思考(再考)」関連の記事を集めています。
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2022年7月の記事一覧

それぞれの思考法の間で重なり合うところ

それぞれの思考法の間で重なり合うところ

 拙著『デザイン、アート、イノベーション』ではどちらかと言えば、デザイン思考、デザイン・ドリブン・イノベーション(以下、DDIとする)、アート思考、それぞれの間にある「違い」にスポットライトを当ててきた。そこでは、デザイン思考は「あなた」に焦点を当てた(イノベーション創出のための)アプローチであるのに対し、DDIは「人々」に焦点を当てたアプローチ、アート思考は「私」に焦点を当てたアプローチであるこ

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インクルーシブデザイン

インクルーシブデザイン

 本編⑫では、デザイン思考の実施に際して、これまでターゲットとされてこなかった少数派の狭いニーズや、極端な行動をとる人々の深いニーズを優先的に探し出そうとすることがよくあると述べた。そうすることで、誰も気づいていないニーズ(指摘されて初めて気づくような潜在的なニーズ)や、今はまだ小さくても将来大化けする可能性のあるニーズを探り出すことができるためである。

 このような“これまで排除されてきた人々

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デザイン思考やアート思考の本当の効果とは?

デザイン思考やアート思考の本当の効果とは?

 番外編②のところでも触れたように、デザイン思考に対してはこれまで「生み出されたソリューションが意外としょぼい」などの批判がなされてきた。その一方で、ソリューションとは違った点に注目して、デザイン思考を評価する声も一部にはある。大坪(2021)は別の視点から、デザイン思考を次のように評価している。

 このように、デザイン思考は「みんなの意見を形にできること」や「現時点での情報と参加メンバーの思考

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ソリューションがしょぼいという問題

ソリューションがしょぼいという問題

 このトピックは、本筋の意味形成の話からは逸れるため番外編扱いとするが、実はこれもデザイン思考の重要な論点である。デザイン思考に対する批判の一つに、「生み出されたソリューションが意外としょぼい」というものがある。例えば、大坪(2021)は、デザイン思考を使って価値のあるソリューションを導き出すことは難しいとして、以下のように述べている(なお、括弧内は筆者が補充した)。

 このような批判が起こる背

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