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みじかいたんぺん

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みじかいたんぺんです。短いです。体感時間は長めです(たぶん)。
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2022年2月の記事一覧

とてもとても

 とてもとてもが口癖の彼だったことがある。
 彼女は習字だかお花だかのお家元で、一緒にいると茶室にでもいるようなのっぴきならない座標軸を感じてしまう。
 僕はただの書店員だった。
 苦しいことが多かったので、笑顔で仕事をしていたら彼女に誘われた。

 僕はお腹から内臓が飛び出ているんですよと言ったけれど、彼女には関係がないようだった。
 私が選んだのが正解みたいな顔で、僕の飛び出した胃やら膵臓やら

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【大河小説】くに

 ある男が悪い行いをする。
 彼は追われ、身を守らなければならない。
 そのために味方を作る。
 しかしその味方も方々に敵を作っている。
 彼らは自分たちの安全を守るため、さらに強力な共同体を作る。

 こうしてできたのが、国である。

小説の逆刷り込み

 小説を書き上げた直後、それが途轍もなく面白いと思うことがある。だが数日経って見るとどこが面白いのか、なんであんなに興奮したのか訳が分からない。はずかしい。そんなことはないだろうか。

 私はこの現象を小説の逆刷り込みと名付けた。
 言うまでもなく、ヒナが初めて目にした生き物を親だと思うのが刷り込みである。

 小説の逆刷り込みは、生み出された小説(ヒナ)を見た最初の生き物(大抵は作者)は、その作

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雨乞い

 僕の妻は完璧だ。そばにいて楽しい。料理なんてちょっと感動的なくらいうまい。僕なんて3食感動しっぱなしである。雨乞いもうまい。世が世なら卑弥呼みたいな感じで村長に祭り上げられてしまうだろう。
 さらに誘拐なんてうますぎて、ちょっとその技術を披露したら逆に方々から仕事や教えを請わるので、これに関しては僕の前以外ではやってはいけないことにした。

 かくいう僕も彼女に誘拐された一人だ。
 その日目覚め

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