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『モビリティ×Web3事例』~【新しいWeb3ビジネスのアイディアのタネ】・Web3ニュース2022.7.18

■電気っぽいクルマがほしい

昨日、近所に新しくできた日産の大型ディーラー店舗に新型の電気自動車「サクラ」の試乗に行ってきました。軽自動車規格のバッテリーEVです。

普段乗っている車が23年モノだということもあり、新発売された電気自動車との差がすごかったです。プロパイロットの自動運転的機能は一般道の短時間では試せませんでしたが、普通に走るだけでもものすごく進化していることを彼方此方に感じました。

ただ「サクラ」は昨今の半導体不足などによる自動車全般の納期遅延の例に漏れず、今注文しても製造が2月、納車が3月、もしかするとさらに遅れるかもしれないとのことで、興味を持ってもすぐに手に入れられるわけではないようでした。

さらに電気自動車などに出る国の助成金も、予算が尽きたらオシマイ&もうそろそろ予算が尽きそうとのことで、仮に3月納車だとしても助成金が出ない可能性が高いとのことでした。また神奈川県の助成金は早々に尽きてしまったそうです。

国の助成金の額は55万円。これがあるのとないのとでは購入動機や車種選びが大きく変わります。「サクラ」の見積額はざっくり330万円。最近の軽自動車は高くなったとはいえ、軽自動車に330万円払うのはなぁ、とやっぱり思ってしまいます。国の助成金があれば275万円。これでも軽自動車にしては高いですが、最新の電気自動車を体験する中では最も安価な車種ではあります。

助成金は当然「サクラ」以外の車種にも使われるため「サクラ」の発売タイミングが合わなかっただけとも言えるのですが、実車を見ずに予約した人だけが助成金を獲得できる年度予算の執行の仕方は買いづらいですね。申し込みした時点で確定ならまだ検討しやすいのですが。。


■モビリティ×Web3

さて「サクラ」を買うかどうかは置いておいて。

自動車が電化していったり購入所有の価値観が変わっていったりする中で、移動手段・モビリティがWeb3とどのように接点を持っていくのでしょうか。事例をピックアップしてみます。

アルファロメオ、NFTで履歴管理

「ブロックチェーン技術に基づくNFTに車両データを登録し、車両のライフサイクルに関する確実で誤りのない記録を保持することができる」

アルファロメオが、新型SUVの「トナーレ」で車両に関する履歴情報をブロックチェーンに刻む証明書NFTの活用を発表しています。

どこまでの情報が記録されるのかの詳細はわかりませんが、所有者の移転情報、製造時の車両の情報、定期メンテナンス情報、さらには走行情報や事故情報なども(やろうと思えば)すべて誰にも改ざんできないブロックチェーンに記録することは可能です。

丁寧に扱われていたことをブロックチェーンの記録で証明できれば車両の将来価値を高めることができますし、ディーラーとユーザーの関係性を高めることもできるはずです。


モビリティ用dAppsプラットフォームbloXmoveと分散型ID(DID)のオントロジーが提携

分散型IDとデータに特化した、オープンソースプラットフォームを開発するOntology(オントロジー)は23日、ブロックチェーンを使ったエンタープライズ向けモビリティプラットフォームを提供する「bloXmove」との提携を発表。

bloXmoveは、あらゆる公共交通機関や移動サービスのログインを、一つのアプリに統合するサービスの提供を目指すプラットフォームだ。

モビリティに関わる情報をブロックチェーンに記録・管理するニーズが将来高まることを見越して、モビリティメーカーが使いたいと思う機能をプラットフォーム提供するbloXmoveと、運転免許証などを匿名化してモビリティの使用記録と紐づけるDIDテクノロジーを提供するオントロジーが提携。

先述のアルファロメオのように車両の履歴管理をブロックチェーンで行うニーズが高まってくればbloXmoveのようなASPサービスの需要は高まります。

メーカーごとではなくユーザーを軸にすれば、複数のメーカーの車両を購入しても履歴が統合できますし、自動車以外のモビリティに関する情報もDIDに統合できるため、オントロジーがやろうとしていることは更に上位の概念とも言えます。


分散型ネットワークのオントロジー、ダイムラーと提携

そのオントロジーは先にダイムラーとの提携を発表しています。
車両オーナーのプライバシーを守りながら車両情報や走行情報などとのデータ連携を実現させる、MoveXはオントロジーの分散型IDフレームワーク「ONT ID」を利用した「Welcome Home」というサービスを実験中とのことです。

車両の情報管理とオーナーの情報連携が自動車業界ではブロックチェーン・NFT・暗号資産と結びつきそうです。


移動中の車内にVRエンタメを導入する「Holoride」

HolorideはVRヘッドセットを装着して楽しむ車内エンタメプラットフォームを提供。移動中の車から見える景色や速度と連動する形で楽しめる移動式のVRエンタメコンテンツを楽しめます。

自動車の現在地とVRコンテンツがリアルタイムに反映されている形でバーチャル風景が移り変わっていきます。イベントカメラとレーザースキャナーを組み合わせたセンサーを自動車のフロントガラスとヘッドランプに組み込み、物体の距離、方向、速度を計算しているとのことです。

車内で楽しむVRエンタメのサービスだと思われていたHolorideがNFTや独自トークン発行&IDOなど急速にWeb3に接近しています。

たとえば渋谷のとある商業施設と、その周辺に配置されたバーチャル・キャラクターの両方をNFT化して、Holorideのプラットフォーム上に置いておきます。ユーザーはHolorideのVRコンテンツを通じて、キャラクターが生き生きと該当施設周辺で動いている姿を確認でき、かつ気に入ればNFT作品として購入できるといった体験が可能となります。売買が発生すると、キャラクターに紐付いた施設にマージンが振り込まれる、リアルとデジタルが連動した仕組みも考えられます。

VRエンタメの中に登場するオブジェクトやOOH広告などをNFTとして取引する、その通貨も独自の暗号資産、という構成を考えているようです。

実際の車両の走行データと連動するAR要素もあるメタバースにNFT・FTを持ち込んだというかたちで、これまでの車両情報管理の文脈ではない新しいモビリティとWeb3の接触の仕方です。


Ride to Earnを実現する電動二輪車「Pave motors」

シティコミューターとしての電動二輪車にブロックチェーンゲーム要素を組み合わせたのが「Pave motors」です。

基本サービスは街中にあるドコモの電動アシスト自転車のレンタルサービスを電動二輪車にしたようなサービスなのですが、あちこちがブロックチェーン化されています。

乗るためのカギはNFT。
レンタル代金の支払いは米ドル、BTC、ETH、または無料。
レンタル契約はスマートコントラクトで自動執行。
借りて乗ると「ミッション」が発動。クリアすると独自トークンがもらえるRide to Earn。

なんとも面白い発想です。
こちらも現実世界での移動と組み合わせているARゲームでもあります。

またレンタルビジネス以外の収益源として、広告主のお店に向かわせるミッションを発動したり、渋滞情報などビッグデータを収集したり、車両の消耗品をメーカータイアップで販売したりするモデルを考えているようです。

チャレンジを完了したり、友人と自転車をシェアしてPaveリワードを獲得し、割引や特別なオファーを受けることができます。PaveリワードはERC20ベースのトークンで、Paveネットワーク内で使用することができます。

「ドコモのレンタル自転車に乗って走るとdポイントが貯まります」の方が一般にはわかりやすいかもしれませんが、「Ride to Earnです」の方がワクワクしませんか?(笑)


暗号資産をマイニングする3輪EV「Spiritus」

電源・CPU・通信機能を備えたのがEV。そして車両の多くは普段は車庫で眠っている。一説によると90%以上の時間は「走っていない」のだそうです。

であれば車庫でジッとしているのはもったいないので、PoWなマイニングマシンとして稼がせる、という発想を持ち込んだのがカナダのトライクメーカーDAYMAK AVVENIREの「Spiritus」です。

Web3というとdAppsなどオンラインサービス側を発想しがちですが、先のPaveといいこのSpiritusといい、ハードウェア連動でWeb3化するのも非常に面白そうです。


■これからもっとモビリティのWeb3化が進むはず

モビリティが所有から分散・共有に向かい電動化が進む中で、製造と販売のモデルも転換していきます。ハードウェアとしても機械からスマホのような位置づけに変わってきています。

またリモートワークやメタバースなどで「移動」の概念も大きく変わりつつあります。

そんなモビリティ界隈がWebテクノロジーの進化やDXの検討の中で自然とWeb3と接点を持ち始めるのだろうと思います。

ハードウェアありきであるモビリティがWeb3と組み合わさった時、DeFi・DEXのような進化の仕方とは違う発展の仕方をしそうな気がします。

もっとわかりやすくリアリティがあるような、しかし従来の製造・購入・所有・廃棄の価値観を大きく変えるような、そんなことをブロックチェーンが変える可能性が近い未来に見えてくるかもしれません。


「サクラ」は今のところ軽自動車がEVになった以上のものではありません。販売方法も従来通りです。

トヨタのバッテリーEVであるBZ4Xのようにサブスクサービス「KINTO」限定にして所有の概念を取っ払うのはまだ時期尚早な感じもします。

しかしPaveのようなRide to Earn、Holorideのようなメタバースとの組み合わせなどゲーミフィケーションやGameFiがきっかけになって価値観が変わっていく部分もあると思います。やっぱりゲームチェンジャーはゲームじゃないかなと。

補助金が微妙ではありますが「サクラ」を午後にまた別のディーラーに見に行ってきます。普通にクルマとして乗り味が良かったのでもう少し深掘りしてみます。

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