見出し画像

図書館各位へのお願い◆『続・自閉症克服の記録・社会参加序章』(インデックス出版)の扱いについて

2004年2月に、インデックス出版より 『続・自閉症克服の記録 社会参加序章』(山岸裕著、石井哲夫協力、日本図書館協会選定図書、以下、『社会参加序章』)が発刊されました。
その際に、 私、森口奈緒美の電子メールが本人の許可なく本書に掲載され、また、改竄された件について、この場をお借りして告知いたします。

●私の電子メール掲載までの経緯
『社会参加序章』の著者が私に対して、メール掲載の可否について問い合わせてきた際、私は本書の著者に対して、以下のような要請を行いました。

 a. メールでのやりとりを本にされるのはまずいということ。
 b. 私の電子メールをどうしても公開なさる場合は、匿名・仮名・ニックネーム等を使用し、また、本文の内容から個人が特定されない配慮をするということ。
 c. 掲載するメールは出版前に私の方でチェックさせて欲しいということ。また、どのメールを掲載なさるのか、事前にこちらで把握できるようして欲しいということ。
 d. 掲載の是非について出版社の方から私の方に直接連絡して欲しいということ。

 a. については、私の要請が無視され、私の電子メールが本書に掲載された。
 b. については、電子メールの本書への掲載の際、私の実名がフルネームで使われた。
 c. については、電子メールの本書への掲載の事前に、私の方でチェックする機会は与えられなかった。また、私が本書の著者に宛てた数あるメールのうちから、どのメールを掲載するのか、私に全く知らされなかった。
 d. については、インデックス出版から私への連絡はなかった。また私に同社の名称や連絡先は知らされなかった。

また、本書に掲載されたメールは私に無断で改竄されていた。改竄が同社によるものか、それとも著者または協力者によるものかは不明。

●本書における問題点
 ・帯のメッセージの捏造。本書の帯に私森口によるとされる「自閉症者の一人としてこの本を推薦します」とあるが、これは何者かによる捏造です。
 ・pp.180-185における、私の電子メールの無断掲載および無断改竄。
 ・p.114においては、私の著作が引用されるも、それが私の著作であることが明記されていない点(p.113にて、引用文がこの本の著者の著作であるような誤解を読者に与える書き方がされている)。
 ・p.97, p.117, p.174, p.177において、私がこの本の著者に宛てた私信・メールの内容が、私に無断で私の実名で開示され、プライバシーが侵害されている点。

●本書に掲載された電子メールの具体的な改竄点
p.182の11,12行目
 「前回『破れがさでもいいじゃないか、私も同感です』と言うメールに反応がなかったのは、あなたが共感したから、返信を送る必要性がなかったのでしょう。」
p.185の6行目
 「ほんと非自閉症圏の人との付き合い方はわかりません。疲れます。」
同9行目
 「相手の意図を察するのが苦手だから読めません。困ります。」
同12,13行目
 「たった一ついえるのは自閉症者の悩みは、自閉症者に言った方がわかりやすいということです。非自閉症の人にはわからないということです。」

これらはいずれも、実際にはこの本の著者の山岸氏の発言であるにもかかわらず、本書では私森口の発言として改竄されています。

また、本書に掲載されたメールは、著者のメールに私がレスを付けたものであり、実際には一続きのものですが、本書pp.180-185では、読者に対し、現実には存在しない往復がなされたかのような誤解を与える編集になっていて、実際のメールにおいては宛名や署名の存在しない箇所に、著者および私の名前が任意の箇所に挿入されています。以下の宛名および署名は、原文のメールには存在しません。すなわち、

 p.182 8行目の「山岸裕」、9行目の「山岸裕様」、14行目の「森口奈緒美」
 p.183 1行目の「森口奈緒美様」、9行目の「山岸裕」、10行目の「山岸裕様」
 p.184 2行目の「森口奈緒美」、3行目の「森口奈緒美様」、13行目の「山岸裕」
 p.185 1行目の「山岸裕様」
の計10箇所。

このように、『社会参加序章』はプライバシー権および著作権を侵害しています。図書館各位および所有者各位おかれましては、当該書籍について人権に配慮した具体的ですみやかな処置をお願いする次第です。
私は日本図書館協会に、当該書籍の選定の取り消しを求めたい。

本件については、今日に至るまで報道やきちんとした広報がなされず、またその出版社の該当ページも現在消えていることに加え、当該書籍が日本図書館選定図書として全国の図書館に収蔵され、現在も当該書籍の中古本が流通している状況がある。
私は自分の発言ではないものが自分の発言として後世に残るのが嫌なので、どうか自閉症者特有の強いこだわりや不安や障害特性を忖度のうえ、関係者各位のご理解を賜りたい。

【補記】
『続・自閉症克服の記録』の著者である山岸裕氏には、当該本以外に、この本の前作である、『自閉症克服の記録 書くことによって得たもの』(三一書房)という著作(本人と、故・石井哲夫先生と、他の支援者たちなどによる共著、以下『自閉症克服の記録』)がある。
この本は1988年3月の初版であり、日本で初めての自閉症者自身によって書かれた手記である。※注
テンプル・グランディン氏の最初の手記『我、自閉症に生まれて』の原著(共著)や、ドナ・ウィリアムズ氏の最初の手記『自閉症だったわたしへ』の原著が、それぞれ、1986年、1992年に出されたことを踏まえるなら、決してそれらに引けを取らない、日本国内のみならず、世界的にみても、かなり早い時期に書かれた手記であり、貴重な資料だと思う。

画像1

私がなぜ、この資料『自閉症克服の記録』を重要かと考えるのかというと、日本初ということや、その書かれた時期ゆえの希少性に加えて、それが、(現在までに手記を出している他の自閉症当事者たちと比べても)社会性の障害が、より重篤な当事者によって書かれている本だからである。
それゆえ、私はこの本の出版の再刊に向けて、各関係者に働きかけるつもりでいた(これは実際、私が過去に某出版社に掛け合ってみたが駄目だった)のだが、そのようなわけで、故・石井先生や山岸氏本人から嫌われてしまったので、もう私自身はこの件では動けない。

『自閉症克服の記録』には複数の関係者(石井先生、著者の母親、支援者の2人、「ボランティアの人」1人)が寄稿しているため、もし再刊するとなれば、本人自身だけでなく、すでに故人となられた石井先生の権利の相続人を含め、(現在はかなりの高齢と思われる)寄稿した人の全ての承諾を得なければならず、それだけでも相当に難事業になると思われる。(とりわけ氏名不詳の「ボランティアの人」を割り出すのは至難を極めると思う。)
だから、(一案として)この本『自閉症克服の記録』のうち、本人が書いたところ(四百字詰原稿用紙180枚分程度)のところを抜粋して、併せて、問題となった続編『続・自閉症克服の記録』から、かようの(上記の)プライバシー侵害箇所・著作権侵害箇所・改竄箇所・捏造箇所を削除・修正したうえで、それらを合本して出版するのがよいかと思われる。
すでに山岸氏は高齢なので、そのプロジェクトは急がなければならないだろう。◆

(※注:拙著『変光星』(初版刊行1996年)も「日本で初めて書かれた自閉症当事者による手記」と言われているが、単著としては日本初になるので、それはあながち間違いではないと思われる。)

#ASD #自閉スペクトラム #発達障害 #自閉症 #日本自閉症協会 #日本図書館協会 #図書館 #改竄 #プライバシー侵害 #手記 #障害者 #障害当事者 #人権 #人権侵害 #著作権 #著作権侵害

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?