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ゴエンカ式のヴィパッサナー瞑想

「仏教の瞑想法と修行体系」に書いた文章を編集して転載します。


ゴエンカ


インド系ミャンマー人で、実業家だったS・N・ゴエンカは、在家向きの瞑想実践の普及を行ったレーディ・サヤドーに由来するヴィパッサナー瞑想を、サヤジ・ウ・バ・キンから学びました。

その後、インドに移住し、インドを拠点にして世界各地で瞑想の指導をしています。

ウ・バ・キンが設立したインターナショナル・メディテーション・センターは、ミャンマーの代表的な瞑想センターです。

また、ゴエンカがインドのムンバイに設立したグローバル・ヴィパッサナー・パゴタは、8000人収容の大きな瞑想センターです。

日本には1981年に初来日し、その後、日本ヴィパッサーナー協会が設立され、京都と千葉に瞑想センターがあります。


ゴエンカ流


ゴエンカ流(ゴエンカ式)はマハーシ流と同じく、一般人が簡単にできるシンプルさが特徴です。

実際、マハーシ流以上に簡略化されています。

アビダルマの教義に沿った瞑想も行いません。

ゴエンカ流の一般のコースは10日間で行われます。

その間、瞑想の質問以外は、沈黙を守ります。

最初の3日間は、安般念によって精神集中(サマタ・止)の訓練をします。 

鼻先からの出入りする息に集中し、心がさまよっていることに気づいたら呼吸への集中に戻すというシンプルなものです。

四日目からヴィパッサナー瞑想を行います。

ゴエンカ流の最大の特徴なのですが、観察する対象を全身の「感覚」に絞ります。

「四念処」では「体(色)」、「感覚(受)」、「思考・感情(心)」、「法」の4つを対象としますが、その中の「感覚」に絞って「受念処」に集中します。

ひたすら全身の感覚を観察するのですが、その時、次のような方法を使います。

頭の上からつま先まで、順に全身に気づきを移していきます。

小さい部分から徐々に大きい部分を感じるようにします。

体全体を感じるようにし、感じることができない部分があればそこを感じるようにします。

体の内部も感じるようにします。

また、感じている感覚が本当の感覚なのか、頭で作り出している錯覚なのかをチェックします。

暗示をかけることで、変化してしまう感覚は偽の感覚です。

感情が起こった場合はその背後には感覚があるので、それを見つけます。

また、何かに対して条件付けられた反応をしてしまわないように気をつけます。

例えば蚊の飛ぶ音が聞こえたら嫌悪感を感じるといったような。

これによって、一つ一つ、過去の条件付けがあらわになり、それから自由になれます。

この瞑想を続けるうちに、微細な感覚が波動ように高速度で生滅することを感じるようになります。

つまり、粗大な形に隠れた微細な現実を見れるようになります。

また、言葉は止まり、強い感情は分解されていきます。

そして、無常、無我を理解し、平静を得て、苦の原因がなくなっていきます。

10日目には慈悲の瞑想も行います。

そして、沈黙が解かれ、外の生活に戻る準備をします。

10日よりも長いコースも多数ありますが、プログラムの内容は、10日コースのものと同じようです。



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