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100万回の言い訳

あらすじ

知り合った頃、この人と恋人になりたいと思った。恋人になったら、結婚したいと思った。夫婦になった今、次はどうすればいいのだろう──。士郎と結子は結婚七年。平穏な生活で仲は悪くない、だけど何か足りない。ところが思いがけない事による別居生活が始まって、ふたりは……。離れて、恋をして、再び問う夫婦の意味。結婚に悩めるあなたの胸に、静かな波紋を呼び起こす長篇小説。

感想

唯川恵の女性像が狡くて弱くて強くてなんだかんだ恋愛って切なくて苦しくて、もう二度とこんな想いしたくないと思ってもまた恋愛してしまう学習能力のない人間が読みたくなる世界観が好き

思いっきりネタバレします

※読み進める方は自主判断でお願いします

結子

負けず嫌いでプライドも高くて実家に帰れば娘気分でいつまでも甘えている
強がっていてでも決断力が弱くて誘惑に弱くて狡い人
仕事で今まで順調だったのが、陸人が現れて勝手にプライドがズタズタになって、現実逃避したくて士郎と子供を作ろうと画策するも上の階の火事によりタイミングを失って、その場しのぎの実家へ

もうこの時点でも女として子供産んだら変わるかもと、士郎の気持ちも考えずに押し進めようとする狡猾さが好きじゃない

ひょんなことから反発し合っていた陸人と意気投合して、あるキッカケで一気に一線を越えて
そのキッカケも負けず嫌い所以では?

士郎の不貞も勘付いていつつも、自分もやましいことがあるから追及しない
陸人が嫌悪している人物なのに、伊島に翻弄されつつも言い訳しつつも最後は電話して行ってしまう意思の弱さ

子供を産んで別の世界に行きたかったのに、いざ生理が来ない、思い当たるのは陸人、そして生理がきたときの安堵感にそれが本音だよね

結局陸人は都合のいい相手だったってことで、それなのに陸人が去ると分かると動揺してしまう矛盾

士郎

この人の倫理観は何だろう
許子との一線を越えてからのリミッター壊れた感が何とも言えない
男性として機能を果たせなくても3回もチャレンジしたんだ、という男としてのプライドはないのか

自分が許子とのことでやましい気持ちしかないから、結子に関して何も言えない男の弱さが滑稽

なのに都合よく志木子の家庭に入り込んでいく
母親に似ているから?ただただ志木子の気持ちを振り回しているしか思えない
男はずっと母親像を求めるのか

陸人

過去の恋愛から上手く女性との距離感が分からなくなってしまったトラウマは分からないでもない
それなのにトラウマの元凶である伊島を同じように嫌悪した結子に一気に惹かれていく
この距離感が初めて恋愛したばっかりの男子って感じで可愛らしくもあり、メンドクサイ部分もありつつ
最後は自分のこれからを考えて沖縄に行く決断はカッコよかった

志木子

何も知らなすぎたまま、ただ自分の子供を守るために必死に生きてきた
だからこそ、母親の面影を求めた士郎の手助けにも結婚しているのも分かっているのに、それ以上の期待を持ってしまう
最初は図々しい感情だなと思っていたけれど、許子との事にも何となく気付き現実を知り、そこから自分の立ち位置を弁えてからが強かった

伊島

お金があるかと決して心も裕福ではない悲しい象徴
自信満々な男は嫌いじゃない

許子

お隣さんからの士郎と欲望のままに素直な女性
士郎が男性としての機能が果たせなかったときに終わりを告げる
そして旦那と一緒に転勤についていく
一番本能に順応でわたし的には一番大好きな女性

総評

結子も士郎も結婚しているのに、それぞれに対しては不満はなくて
上の階の火事は原因で一時的な別居からのそれぞれの恋愛
めっちゃお互いに都合のいい関係で、それぞれ後ろめたさを感じつつも継続する
心の中で自分自身に言い訳をしながら、これからも進んでいく

それなのに結局二人でまたリセット
お互いの都合のいい関係で割り切れていたのは許子だけ
陸人は最初っから最後まで振り回れっぱなし

何か釈然としないけれども、この瞬間の恋はいいもんだなと思ってしまうのが、唯川恵ワールドで好きなんだな


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