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取材した怪談

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私が取材した心霊的・不可思議現象の話です。
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#学校

【取材した怪談242】楽しそうにすると出てくる

40年ほど前の話である。 慎一郎さんが通っていた高校では、少々珍しいスケジュールの修学旅行が実施されていた。 N県に二泊三日で旅行するのだが、宿泊先はクラスごとに生徒が自由に決めていた。だから宿泊先はクラスごとにバラバラになる。 但し、二日目に所定の場所で必ず田植え実習を受けなければならない。田圃に直に入り、手で苗を植える実習である。この実習場所を考慮して宿泊先を決める。 慎一郎さんのクラスは、A旅館に宿泊した。 インターネットなど普及していない時代だから、生徒の一人が

【取材した怪談231】空白の四時間

四十代男性Hさんが小学高学年の時、学校行事としてS県で移動教室(野外実習のような行事)が実施された。二泊三日ぐらいの日程。宿舎は四階建てで、就寝用フロアには二段ベッドがずらりと並んでいる。フロアごとに男女別れて就寝した。 初日の夜。 深夜一時頃、彼は尿意を催して目が覚めた。「時刻は間違いない」とのこと。目をこすりながらベッド下段から抜け出て、暗い廊下の奥にある共用トイレに向かってゆっくり歩いていく。扉を開けてトイレに入り、小便器前に立ってぼんやりしながら用を足す。そのとき、

【取材した怪談202】事情聴取

いわゆる霊感を有する方が「自分は視える」と認識したキッカケの話。 当時小学四年生だった莉奈さんはその日、理科室で授業を受けていた。理科担当の年配の男性教員の指導のもと、ワークを黙々とこなす授業だった。早々にワークの課題を終えた莉奈さんは、やることがなくなって窓の外をぼんやり眺めていた。 「外を見てたら、若い男の人が上から落下してきたんです。身体はこちらに向いて逆さまの状態で、目が合っちゃいました。無表情でした」 吃驚した彼女はすぐさま教師に「人が落ちた!」と知らせた。

【取材した怪談話159】合わせ鏡、二題

二枚の鏡を対面させ、合わせ鏡の状態に配置すると、悪鬼が出現したり、過去や未来の自分の姿が写し出される、などの都市伝説が存在するようだ。今回は合わせ鏡に関するエピソードを二話ご紹介する。 一話目 女性Aさんが通っていた小学校は、百年以上の歴史がある。児童数も多く、新校舎と旧校舎に分かれている。 その中で、<旧校舎二階の女子トイレは、できるだけ使用するな>という注意事項があった。単なる児童間のウワサ話ではなく、教員から直接に忠告されていたそうだ。立入禁止になっているわけでは

【取材した怪談話153】物色

デザイン系の専門学校に在籍していた女性Aさんが、デザイン画の実習を受けていた時の話。 その日の実習では、各々が洋服のデザイン画を描いて、教壇に座っている担当教員に提出することになっていた。実習には四十人ぐらいの学生が参加しており、七~八割が女子学生だ。皆もくもくと描画しており、教室内は試験中のように静かだった。 そんな中、Aさんの隣に座っていた女性Bさんが突然、プッと小さく吹き出した。何かに対して思わず笑ってしまった、そんな様子だ。Bさんは、いわゆる霊感体質者だ。 「ど

【取材した怪談話152】謎部屋

え? 怖い話ですか? 不気味な体験というか、場所がありますよ。オバケも出ないし、怪奇現象があったわけでもないんですが、そんな話でもいいですか? わたし、学生時代に宗教系の学校に通ってたんです。部活やってて、部室がある棟によく出入りしてたんですよ。その棟に地下があるんですが、そこは全然使われてないんです。ずっと入ってみたいなと思ってたんですが、なかなか行く機会がなくて。立入禁止になってるわけじゃないんですよ。 で、ある日の昼休みに、友達と五人ぐらいでその地下に降りてみたんで

【取材した怪談話147】指示

女性Aさんが通っていた中学校では、コックリさんが禁止されていた。上級生がコックリさんを実行した結果、精神異常を呈して入院しているという噂があった。その真偽は不明だが、禁止されていたのは事実だ。 それにもかかわらず、中学一年のある日の放課後、Aさんは友達B、C、Dさんと四人でコックリさんをした。教室で行うとすぐに教員に見つかる可能性が高いため、教室に隣接する生徒会室の前の廊下で執り行うことになった。廊下に太い柱があり、その陰に身を隠せるためだ。 その時のコックリさんには、A

【取材した怪談話146】とばっちり

女性Aさんが中学生の時の話。 ある日の五限目と六限目の間の休み時間に、クラスのノリの良い男女六人ぐらいのグループが教室の一角を陣取ってコックリさんを始めた。 「お前ら、ふざけてコックリさんやるなよ」 その様子を傍から見ていたB君が、真顔でクギを刺した。彼は地元では著名な寺院の跡取り息子だ。 だが彼の忠告は受け入れられず、コックリさんは速やかに進行された。 それは、開始数分後のことだった。 ぱらぱらぱらぱらぱらっ。 教室中に、軽い音が響き渡る。 B君が身に着けていた数

【取材した怪談話142】夜間警備・高校

Jさんが警備員として勤務していた頃の話。 ある夏の深夜、彼は夜勤の巡回として担当エリアの学校の外周点検に赴いた。外周点検とは、外から校舎を目視し、ガラス、窓、壁面の損壊の有無を点検して巡回する業務である。警備会社と契約している小中高の学校を、一晩で巡回する。 とある高校の外周点検をしていた時、三階の一室に明かりが灯っているのを見つけた。 持参している鍵で職員用の出入口の扉を開錠し、靴を脱いで校舎に上がる。校舎内に設置された機械警備システムを確認すると、正常に作動している

【取材した怪談話141】夜間警備・小学校

Jさんが警備会社に勤務していた頃、仲の良い直属の男性上司が教えてくれたエピソードだそうだ。 その上司が夜勤時に、とある小学校の外周点検に赴いた時のこと。外周点検とは、外から校舎を目視し、壁、窓、ガラスなどが損壊していないかを点検する業務である。特に通報がなくても、夜間に巡回して点検する契約になっている。その小学校は夜勤の際には必ず点検に行くため、建物の配置や構造は熟知していた。 いつものように校舎外周をぐるりと点検したところ、職員室のカーテンから明かりが漏れていた。時刻は

【怪談実話110】深夜のテニスコート

二十年ほど前、Aさんが中学一年生の頃の話。 彼女は年上のB君に片想いしており、頻繁に連絡を取り合っていた。 その夜も、自宅で電話越しにぺちゃくちゃと彼と雑談していた。彼から「今からちょっと、コンビニ行かない?」と誘われ、Aさんは快諾した。 夜間に、しかも片想い中の男性とふたりで会うことは、Aさんにとって初めての経験だった。夜だというのに張り切ってオシャレもした。もしかしたら手を繋いでくれるかも……と淡い期待を胸に秘め、ワクワクしながら彼が自宅前まで迎えに来るのを待っていた

【怪談実話101】寮に潜む女

ある高校野球の名門校の寮でのエピソードです。いつもの4〜5倍の文量ですが、野球部員ならではの結末が待っているので最後まで読んでいただければ幸いです。 ・・・ 10年前、A君が高校の野球部に入学して間もない時期の体験談である。 彼は中学卒業と同時の親元を離れ、高校野球の名門校に進学して寮で生活することになった。その高校は歴史が長く、寮も年季が入っていた。 寮には野球部員が数十名ほど住んでおり、その約3分の1が新1年生だった。寮は2人部屋で、A君は同じ野球部1年のB君と同

【怪談実話91】封印されたUMA?

UMA(ユーマ):Unidentified Mysterious Animal(未確認生物)。伝承や目撃談、噂などで実在を主張されていながら、生物学的に確認されていない未知の生物を指す(Wikipediaより)。 ・・・ 女性Aさんが中学3年のとき、美術の卒業制作として印鑑ケースを作ることになった。朱肉と印鑑本体を収納するための木製の箱で、木材を彫刻し、ニスを塗布して完成となる。授業は美術室で行われ、Aさんは一番後ろの席に座っていた。 作業工程が進むにつれ、卒業制作用に

【怪談実話88】子牛

※動物に関して酷な描写が含まれますので、苦手な方はご遠慮ください。 ・・・ 男性獣医師Nさんが獣医学部生だったころ、2年次の必修科目『解剖学実習』で子牛を解剖したことがあった。 解剖学実習の流れは、以下のとおりだ。 ・生きている新鮮な子牛を、学生が屠殺する。 ・皮を除去し、筋肉をスケッチする。 ・筋肉を除去し、内臓をスケッチする。 ・内臓を除去し、骨格をスケッチする。 ・廃棄処分。 実習は、解剖専用の実習室(解剖実習室)で行われる。1日では全て終わらないため、屠殺し