【取材した怪談話１５２】謎部屋

え？　怖い話ですか？　不気味な体験というか、場所がありますよ。オバケも出ないし、怪奇現象があったわけでもないんですが、そんな話でもいいですか？

わたし、学生時代に宗教系の学校に通ってたんです。部活やってて、部室がある棟によく出入りしてたんですよ。その棟に地下があるんですが、そこは全然使われてないんです。ずっと入ってみたいなと思ってたんですが、なかなか行く機会がなくて。立入禁止になってるわけじゃないんですよ。

で、ある日の昼休みに、友達と五人ぐらいでその地下に降りてみたんですよ。皆、地下に行くのが初めてで、ちょっとした探検気分でしたね。

地下はワンフロアだけの造りで、通路に沿って部屋が四つ並んでました。
階段に近い手前の部屋から、順番に見て回りました。最初の部屋は、一畳ぐらいの広さで、机と椅子がひとつずつ置かれてました。それ以外は何もありません。

二番目、三番目の部屋も、最初の部屋と全く同じ造りでした。二番目の部屋だけは、机の上に聖書が置かれてました。

最後の一番奥の部屋なんですが、そこだけ少し違くて……。広さでいうと三～四畳ぐらいだと思うんですが、部屋全体が真っ黒に焦げてたんですよ。床、壁、天井が真っ黒焦げ。全部黒焦げです、全部。火災があったとしか思えないような跡でした。

その部屋には、なんでか分からないんですが、ピアノが置かれてました。椅子もありました。グランドピアノじゃないですよ。縦型の黒いピアノ（アップライトピアノ）です。そのピアノは燃えた跡はなくて、普通に使えそうな状態でした。たぶん、ピアノは部屋が黒焦げになった後に運ばれたんだと思いますが、なんでこんなところにわざわざ置くんだろう、って感じで。椅子もあるってことは、誰か弾いてたのかなあ。

あ！　あと、ピアノの上に、ファブリーズがちょこんと置かれてました。あの消臭剤の。

黒焦げの部屋と、ピアノと、ファブリーズっていう組み合わせがワケわかんなかったです。むかし火事があったんですかって先生らに聞いてみたんですが、分からないって言われました。

今でも、あの最後の部屋は何だったんだろう、って謎な感じです。