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【取材した怪談話147】指示

女性Aさんが通っていた中学校では、コックリさんが禁止されていた。上級生がコックリさんを実行した結果、精神異常を呈して入院しているという噂があった。その真偽は不明だが、禁止されていたのは事実だ。

それにもかかわらず、中学一年のある日の放課後、Aさんは友達B、C、Dさんと四人でコックリさんをした。教室で行うとすぐに教員に見つかる可能性が高いため、教室に隣接する生徒会室の前の廊下で執り行うことになった。廊下に太い柱があり、その陰に身を隠せるためだ。

その時のコックリさんには、A、B、Cさんが参加し、Dさんは側で見ていた。そしてコックリさんを呼び出し、色々質問した。質問内容を正確に記憶しているわけではないが、下記のようなものだった。

「明日の天気は?」
「あなたは誰ですか」
「あなたは霊ですか」
「どこから来たんですか」
「今どこに居ますか」
「あなたは私を呪いますか」

おおかた質問が出尽くしたところで、彼女らはコックリさんを終了させようとした。

通常、コックリさんを終了させる場合、「ありがとうございました。お帰りください」と唱える。すると硬貨が所定の位置に移動するので、それを「帰った」とみなす。

ところが、Aさんらが「お帰りください」といくら唱えても、コックリさんは帰ってくれなかった。それどころが、次のメッセージが示された。

や し ろ に ま い れ

「何のことだろ?」とB、Cさんは首を傾げる。その横でAさんは〈社に参れ〉と解釈して、「校舎の裏手にある木の下に小さな祠があるから、帰る前にお参りしたらいいんじゃない?」と提案した。B、Cさんは頷いた。「それで良いですか?」とコックリさんに訊いたら、やっと「帰って」くれた。

その後、B、Cさんは「ちゃんとお参りして帰る」と言って、先に下校した。Aさんはコックリさんをそれほど信じていなかったため、件の祠には行かず、コックリさんに参加しなかったDさんとダラダラ喋っていた。

柱の陰で駄弁っていると、見回りに来た女性教員に見つかってしまった。「あんた達、まさかコックリさんしてないよね?」と睨まれた。「え? 先生、あの噂ホントなの?」と訊いてみたが、「いや、先生も知らないけど」と返された。

結局、Aさんが下校したのは、コックリさん終了から一時間後ぐらいだ。学校を出て三十分ぐらい歩いた地点で、先に下校したB、Cさんが右側の道からバタバタ走ってきて、Aさんに飛びついてきた。

「怖かったああ」
「お参りしたら、向かいの家の門から」
「真っ黒い影が出てきて!」
「だから走って逃げてきたのッ」

と、口々に泣きつかれた。
ああ、やっぱり行かなくて良かったなぁ、とAさんは安堵した。その後は何事もなく帰路についたそうだ。

・・・

それから数年後、高校生の時にAさんが友人とコックリさんの話をしていた際にこのエピソードを思い出し、ひとつの疑問が生じた。自分よりも一時間早く下校したはずのB、Cさんの二人が、なぜ自分と鉢合わせになったのか。その間、二人は何処を彷徨っていたのか。B、Cさんに直接問う機会がなかったため、今だに不明のままである。

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