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【怪談実話91】封印されたUMA?

UMA(ユーマ):Unidentified Mysterious Animal(未確認生物)。伝承や目撃談、噂などで実在を主張されていながら、生物学的に確認されていない未知の生物を指す(Wikipediaより)。

・・・

女性Aさんが中学3年のとき、美術の卒業制作として印鑑ケースを作ることになった。朱肉と印鑑本体を収納するための木製の箱で、木材を彫刻し、ニスを塗布して完成となる。授業は美術室で行われ、Aさんは一番後ろの席に座っていた。

作業工程が進むにつれ、卒業制作用に準備された新品のニスだけでは足らなくなり、美術準備室に長年保管されていた瓶詰めのニスを使用することになった。

ある日の授業前に、Aさんはその瓶の開封を担当教師から任された。「もう何年も保管してるから、なかなか開かないかもな」と忠告されていた。

彼女がニス瓶を両手で持ったとき、何やら瓶自体がカタカタ動いているような感触があった。(ニスが固まってるのかな)と思い、Aさんは蓋を開けることに専念した。

「起立」という他の生徒の号令がかかる中、Aさんは起立しながら、蓋をねじっていた。そして、「礼」のタイミングで、頭を前に下げた瞬間、ようやく蓋が開いた。

とたん、瓶の中から、<それ>が飛び出してきた。

「小さいティラノサウルスでした。骨だけで、臓器はありません。眼も空洞になってました」

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(Aさんに描いて頂いたイラスト)

体長10~15センチほどのその<骨の恐竜>は、瓶から飛び出し、Aさんの机の上に着地した。着地の勢いで、恐竜に付着していたニスが飛散した。

二本脚で直立し、ぷるぷるぷる、と何度か身を震わせて、ニスを払った。それにより、さらにニスが飛散した。

「礼」の後の「着席」の合図のとき、<骨の恐竜>は、机の上から、他の生徒をキョロキョロと見回した。Aさんは驚きと衝撃が強すぎて、完全に固まっていた。その後、<骨の恐竜>は、Aさんの方を向いた。しばらくの間、目があったような気がした(実際に目はないのだが)。

どうしよう……。
このままだと、ニスこぼしたの私のせいになる。
捕まえようか……?

そう思い、彼女が両手をスッと出したとき、恐竜は少し後ずさりした。

だが、<骨の恐竜>の牙が非常に鋭利であり、うかつに捕獲しようとしたら、噛みつかれるのではないか、と恐れた。それ以前に、自分に敵意を持っている印象も受けた。

諸々の考えが逡巡するなか、<骨の恐竜>は、机からぴょん、と床に降下して着地し、そのままスタスタスタスタと高速で走って逃げていった。おそらく、美術室の外に逃げていったと思われるが、見失ったそうだ。

床には、ニスで形成された足跡だけが残されている。

Aさんがまごついていると、教師が彼女の元に歩いてきた。

「おまえな、蓋を開けろとは言ったけど、こんなに散らすなよ」
「いや先生、さっき恐竜が……」
「はあ? こぼしたニス、ちゃんと拭いとけよ」
「いや、恐竜……」

Aさんがあまりにも、恐竜、恐竜、と異次元の反論をするため、他の生徒らが「受験勉強で疲れてるんじゃないの」と宥(なだ)めてきた。

ただ、普段あまり話さない男子生徒が、「恐竜?」と訝りながら床に残された足跡を見たら「マジだ。恐竜の足跡だ」と呟いた。

つまり、床に付着したニスの足跡は、他のクラスメイトも目撃していることになる。

Aさんの前に姿を現した〈骨の恐竜〉が何だったのか、謎のままである。

・・・

※ビン詰めにされた未確認生物としては、マレーシア・インドネシアの『トヨール』という生物が挙げられる。体長15~50センチの吸血性の小人だそうだ。

※個人的には、ドラゴンクエストシリーズに登場する「スカルゴン」に似ていると感じた。

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(スマホアプリ『ドラクエウォーク』より)

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