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Vol.3 材料はないけど、立体作品を作る

卒展のための作品制作過程を記録するnote、その3です。

「米」をテーマにして、米の持つ神話的な側面を伝えたい...というアイデアがありました。水田は美しい風景であると同時に、厳しい自然災害や米作者の苦難の歴史も刻んでいます。水害や干ばつを免れて収穫を得るには祈るしかない、人の力を超えた存在であるからか、古代から稲や米は神格化されてきました。そうした物語性を、一つのランドスケープに統合したいと思いました。2Dと3Dのピースから構成された架空の風景をインスタレーションで表現したいと思ったのです。

 これまでの制作で、水田を版画や絵画で表現する実験を繰り返していました。今度はこれに立体のオブジェクトを組み合わせて、奥行きのあるランドスケープを作りたかった。オブジェクトとしては、いくつかの象徴的なモチーフを選びました。人間の手、米を運ぶための小さな船、そして眠る嬰児など。
さて、そこで現実的な問題が。ロックダウン状況下では、オブジェクトを作るための素材が全く手に入りませんでした。4月当時、唯一買い物のために外出できたのが、食料品を売る近所のスーパーマーケット。そこで売られていた、5個3ポンドのごく普通の固形石鹸のパックを見て、「これでも彫るか...」と手に取りました。

そして、まずは手のひらの形を彫刻刀で彫って見た。すると、これが彫りやすくて、するする彫れます。そうだよね、ソープカービングっていうジャンルもあるくらいだもんね。なんとかなりそうな気がしてきました。

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続いて、嬰児のイメージも石鹸で。

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ライスペーパーで羊膜のように包んでみました。周りの白いものは塩です。

あとは「水」を何らかの形で表現したい。手や嬰児などが、水の力で前に進むというイメージです。水の表現は、米をそのまま使おうと思いました。米でできた枯山水のようなものを作ります。

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表現したいイメージに近づいてきました。

次回はここから、インスタレーションを構成していきます。



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