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出会うことの奇跡

目の前に愛しい人がいる。
その人も私を想ってくれているという。

大真面目な顔をしながら「あなたが好きだ」と話すその人の、その言葉のひとつひとつは、とても率直で、あけすけで、そこにはまったく嘘が存在しなかった。私はその人を見つめながら、その嘘のない言葉が私の心のなかにまっすぐ入ってきて、そして徐々に心の内をあたためてゆくのを感じていた。

こんなふうにお互いがお互いを愛しく想いあえるということは、奇跡なのだと、そう思う。

外へ出れば人はあふれているけれど、そのなかでこんなふうに愛情を持てる人に出会えることは、そうはない。そしてそれは歳を重ねるごとにますます難しくなってしまう。

もう自分の人生には、そんな奇跡は起こらないのかもしれないとさえ思っていた。数年前の傷は、もうだいぶ癒えてはいたけれど、あの辛い出来事以降、私の心は誰にも動かなくなった。そして動かしたいとも思わなかった。けれどふいに出会ったその人が、ついに私の心を動かしたのだ。

この人ともっとずっと一緒にいたいと、初めて会ったそのときから思った。その人も同じ気持ちでいてくれたから、気づけばあっという間に二人の距離は縮まって、そしていま、目の前にその愛しい人がいる。

とりとめのない会話。笑いあうことの喜び。もっとずっと話していたくて、もっとずっと触れていたくて、もっとたくさん時間があればいいのにと願う。そうだ。誰かを愛しく想うと、世界はこんなにもきらめくのだった。ずっと忘れていた感覚。いや、むしろ無理矢理にでも忘れようとしていたのかもしれない。またあんなふうに傷付くのではないかと怯えて。

始まったばかりのこの関係が、この先どうなるのかはまだわからない。ただ今は、自分のなかにまだちゃんと誰かを愛しいと想える気持ちが残っていたことを喜びたい。そして、そう想える人に出会えたことの幸せと、想われることの幸せを抱きしめながら眠りにつきたい。

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