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2023年詩

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#隙間

167「詩」うたが

167「詩」うたが

遠い昔うたったうたが
ぽっかり空いた時間の隙間から
あの頃にすっぽりと
わたしを落とすのです

未来が眩しく輝いていたけれど
そこに続く道は見えないままだったあの頃
がんばれば
道は必ず見つかると信じていたけれど
がんばっても上手くはいかなかった

肩を落とした
秋の夕暮れ
みんなと同じ方向を
仕方なく見ることにした

流れにのまれて
ありふれた形の社会人になった

周りからおめでとうの言葉を浴び

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164 「五行詩」10月5日朝

164 「五行詩」10月5日朝

雨が続いていても
雲の隙間はある
青空が見え
陽の光が
見える

104「詩」そんな時

104「詩」そんな時

大切にしてきた
嘘のない心を込めて

周りにいた人たち
周りにいた生き物
周りにあった草花

それは
ほんとうのことだ

伝えようとはしなかった
感じとってもらえばそれでよかった

ほんの少し
ほんの少し
わたしがなにかの助けになれたら

わたしの周りにいる人や生き物たち植物たちが
ほんの少し
ほんの少し
あたたかな気持ちになれたら

わたしが生きている意味があるように思えた

ある日
ほんの歪ん

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62「詩」ピンクムーン

62「詩」ピンクムーン

西向きの部屋だった

歩くたびに軋む廊下の1番奥
真冬の日暮のひと時だけ
赤茶けた 日差しは
貧しさを 照らした

持っているものは何もなかった
貧しさを笑ってしまえば
豊かな心だけが 残った

その日どうしたら
生き延びられるか
頭の中はそれだけでいっぱいだった

自分を蔑む人々の
視線や
意地悪な言葉など
入り込む隙はなかった

立春を過ぎて
初めての満月

ピンクムーン

うすべにいろの光は

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17「詩」冬の空の隙間

17「詩」冬の空の隙間

凍えた樹々の梢が
暗く重い冬の雲を支えている
食い込むように
ありったけの力を込めて
これ以上落ちてこないように

私の心もまた
暗く重く落ちてしまいそうだった

自分の出来る事は精一杯してきた
そう思う
けれど
望む方向には
何一つうまくいかなかった

ふと
見上げると
空に開いた隙間が見える

生き物たちを目覚めさせ
新しい年の物語を紡ぎ始める
春の陽射しのように透き通った碧い空が
雲の隙間か

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