8皿目 会津若松の奥座敷でカツの競演―卯之家・よしのや|元気の出るカツカレー
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会津若松の奥座敷でカツの競演
前回に引き続き、今回も取材で訪れたのは温泉街です。
1300年もの歴史を誇る東山温泉は、その立地から、会津若松の奥座敷と呼ばれました。また、会津民謡に登場する「小原庄助」さんゆかりの温泉としても知られています。朝寝、朝酒、朝湯好きで有名な人ですね。きっと食べるのも好きだったんじゃないかと思いますが、江戸時代の人らしいのでカレーは未食でしょう。
仕事での宿泊のため、豪勢な「旅館の夕食」にはありつけず……お店を物色しつつ昔ながらの温泉街を歩いていると、路地を少し登った小高い場所に食堂を見つけました。「卯之家」です。
幟にあるとおり、このお店のイチオシはソースカツ丼。どうやら会津一帯の名物のようですね。「カツ」がおすすめなら、カツカレーも美味しいはずだと勝手な思い込みで、いざ入店。
見つけました。カツカレーライス900円。温泉客だけじゃなく、地元の人たちもよく利用するんでしょうね。ソースカツやカツライスのほか、オムライスやチャーハン、ラーメンにうどんなど、ひととおりのメニューが揃えてありました。
他の人が頼んだソースカツ丼の堂々たる佇まいを見て、確信しました。サクサクに揚げられたきつね色のカツ、どんぶりからはみ出すキャベツ、炊きたてつやつやのご飯……カレーもまずいわけがない!
そして到着したカツカレー。期待を裏切らない色、サイズ。カレー皿に店名と電話番号が書いてあるのがなんともレトロで素敵です。
カツはジューシーで、一般的な食堂のカツより厚め。「カツ」をウリにしているお店のプライドを感じます。カレーは和風のやさしい味。お蕎麦屋さんのカレーを連想させます。美味いうまい。
温泉旅館に連泊して、和食にちょっとだけ飽きちゃったなんて時にもいいかもしれないですね。もし次に来ることがあったら、今度はソースカツ丼を食べてみたい。老舗温泉街に自分だけの行きつけを見つけたような、そんな楽しい気持ちで夕食を終えたのでした……。
と、ここで話は終わらないのです、今回は。
次の日、また食堂を物色しながら歩いていると、卯之家さんから離れること数十メートル。こちらもソースカツ丼を看板に掲げるお店「よしのや」を見つけました。
というとは、こちらにもやはり……ありました。カツカレー850円。
ええ、もちろん頼みましたよ。カツカレー大好きですから。2日連続? 関係ありません。
まわりのお客さんがもれなくソースカツ丼を注文するなか、じっとカツカレーを待ちます。
どうですか、この色と艶! デパートの食堂の食品サンプルじゃないですよ。見事なくらい黄色い、昭和のカレーです。
予想通り、味はすごくマイルド。辛さもスパイシーさもほとんどなく、子どもでも安心して食べられる味。幼い頃に食べたカレーを思い起こさせます。
控えめなルーに比べてカツは分厚くパンチがあり、結果として食べ応え十分、大満足の一皿でした。
あとで調べてみると、2店ともソースカツ丼の名店として知られているようで、食べ比べをしている人もいましたが、カツカレーのレビューをしている人はあまりいませんでした。
東北の静かな温泉街で、思いがけずカツカレーの競演を楽しめた今回の取材でした。