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【短編小説】ゴミの丘-Garbage hills-

#短編小説 #フィクション #ファンタジー #ゴミの丘 #SDGs #科学 #宇宙開発 #火星 #ワーム #人類移住計画 #マイクロプラスチック #海洋プラスチック #蒸留水 #自己探求 #ストレングスファインダー #幸せの定義

毎月1日は小説の日という事で、
2022年もスタートしました。
1月は、「永遠のレールウエイ」が一旦完結
次の展開を考えてはいますが・・・企業人ですので
あまり時間もございません、
少しづつ進めてまいります。
気長にお待ちください。
そんなこんなんで、なんとか2月も
書き上げる事ができました。
本日は少し毛色を変えた小説をお届けします。

本日は約6000文字です。
お時間のある時にお読みください。

ゴミの丘-Garbage hills-

プロローグ

1995年COP1と呼ばれる国連気候変動枠組み条約の
締約国会議がベルリンで開催された。

1997年COP3、後に京都議定書会議と呼ばれる国際会議は
地球における「温室効果ガスを2008年から2012年の間に、
1990年比で約5%削減すること」

と定めて、先進国にその削減比率を約束させ、幕をとじた。
しかし、人類は便利な生活を捨てきれず、
また新しいイノベーションへの着手も遅れ、
結果的にこの約束は守る事ができないと判断された。

2015年COP21、後にパリ協定会議と呼ばれ、
新しい目標として「世界共通の長期目標として、
産業革命前からの平均気温の上昇を2°Cより十分下方に保持。
1.5°Cに抑える努力を追求」
。が掲げられた。
しかしこれも中途半端なものであり、
明確なGOALと綿密な計画が開示されたわけではなかった。

2021年COP26、いよいよお尻に火がついた人類が
2050年までにカーボンニュートラル、
地球上のCO2排出量をゼロにするとして
先進国の各国は口をそろえて、
カーボンニュートラルを訴えていた。
ただ、これも絵にかいた餅的要素はぬぐえず、
確固たる証拠や実証を得られず、
カーボンニュートラルまでのシナリオが
出来上がっているとは言えない状態での発言となった。
そればかりか、各国で紛争が巻き起こり、
破壊と創造の繰り返しを、まだするのかと思う程、
人類は一枚岩になれていなかった。

2030年カーボンニュートラルの
ターニングポイントとなる2013年比45%削減目標すら
達成できなかった人類が、くだした結論は、
地球の破棄と工場化、人類の宇宙への移住に
その頭脳とエネルギーを費やすことだった。

人類は、NASAの調査から、
火星に第二の地球を創るべく、
国連は、国境や国家権力をはく奪し、
フラットなルールを決め各国の協力を仰いだ。
反対する国、勢力もあったが、
すでに体力、財力の限界に達し、
生きていくためには、
国連の言いなりにならざるをえなかった。
それも一部の国家権力を握っている人や
富裕層の結論でしかなかった。

国連により、火星移住において決められらルールは、
国連が建てたCO2フリーの家に住む事。
食材も、自動で配達され、容器回収も自動の
パイプラインが整備されていた。
排出物はすべて、食物工場の肥料となり、
移動は公共の全自動運転電動ビークルを使う事だった。

不自由はあるが、
完全循環型生活が送れる場となるよう計画され、
2030年から実験的に第一次移住が始まり、
人類は選別され、富裕層だけが、
火星行のシャトルに乗る事ができた。

残された者たちは、
火星へ移住する人類のための物資や、
シャトルを作製するための工場に雇われ、
また、生産用のラインは人が組み立てる必要があり、
奴隷制度とまではいかないが、
国連に近い場所で働くことによって、
いつか自分も火星への移住を夢見ていた。

残された者たち

クリスはゴミの山の中で一生懸命探し物をしていた。
何を探しているのか時々自分でもわからず、
ただやみくもに、あちこちを掘り起こしていた。

2035年、地球にはすでに、青い空は無かった。
それは青い空を反射した青い海も無いという事だった。
クリスはゴミの山から見える水平線を眺めては、
こんな時代に生まれてしまった事、
何のために生まれてきたのかと、
自己葛藤する日々でもあった。

永久凍土は溶け、新種のウイルスも蔓延していた。
人類は既にウイルとの戦いに敗れ、
強い物、抗体ができたものは生き残り、
そうでないものは淘汰されていった。
クリスの友人たちもみな、新種のウイルスに倒れるか、
餓死していった。

ゴミの山は、いつしか、捨てる事ができない、
人間の死体の山にも変わりつつあった。

幾つものゴミの山を越えると、
ゴミの山は海に繋がっていた。
海にはプラスチックの破片、ペットボトル、
原型が何であったかわからないものが流れ着き、
ゴミの山との境で漂っていた。
このプラスチックのゴミが、
マイクロプラスチックとなり、海洋生物や
海洋生物を食する人類の健康被害にもなっていた。

一方人類は、この海水に溶け込んだ
マイクロプラスチックと塩分と汚染物質を
取り除く装置の開発が進み、
火星で使うプラスチックは
全て海から抽出したマイクロプラスチックで
賄われていた。

クリスは対岸の工場と水平線を見つめながら
このゴミの山がどこから海に落ちるのか?
ゴミの山じたいが海なのかもわからない程の
景色をただただじっと見つめていた。

海はそれでも、波をたたえ
時々激しい波がゴミの山に降りかかってては
そのゴミを海の中に連れていくのだった。

ゴミの山は、防護マスク無では
いられない程の異臭がしていた。
そこかしこで小さな火災が起き、
小さな捲りが上がっていた。
ゴミの山をあさっている人たちは、
皆防塵マスクなど買えるはずもなく、
それれぞれが手作りのマスクや
タオルで口と鼻を多いゴミの山を掘り起こして
希少金属が付着しているものや、
鉄やアルミ屑などを拾っていた。

希少金属が付着した物や
金属類等は、
一週間に一度国連政府のトラックがやってきて
買い取ってくれた。
クリス達は少なからず、このゴミで生計を立てていた。

お金があっても物が豊富にある時代からは
一遍していた。
生活物資や食料を買える店はなかった。
時々移動販売車がゴミの山にもたちより
生活物資が購入できた。
一番高いのは飲料水だった。
2000年時代の高級ウイスキー程もする水等もあった。
ただクリス達はそんな時代は、
夢の世界、遠い記憶の隅の話だと思っていた。
クリス達にあるのは目の前の現実だけだった。

クリスは、小さい頃に見た、
戦争によって焼け野原になった大地の
ビデオを思い起こしていた。
ビデオを見た時も、体験していないのに、
鼻の奥に焼け焦げた臭いが漂った感覚でいた。
今現実に、鼻の奥になんとも言えない異臭や
ビニールが焦げる臭いだけが流れ込んでいた。

ワーム

クリスはゴミの山の一角に
少しへこんでいる所を見つけた。
誰かが掘ったにしては、
あまりにも綺麗なくぼみだった。
クリスは1mほどの窪みに入り、
更に掘り進める事にした。
1時間程掘ると、土が見えてきた。

クリスは10歳からゴミの山居る。
小さい頃は両親がゴミの見分け方や
危険な場所などを教えてくれたが
その両親も他界していない。
その頃はゴミの山にも土が見える場所はあったが
それ以来、土を見るのは、クリスの家の土間以外
なかった。

クリスは土に触れてみた。
その土は驚くことにふかふかだった。
クリスは更に土を掘り返した。
そこにはなんと、ワームと呼ばれる虫が居た。
クリスも見るのは初めてだった。
昔父から「ワームはプラスチックを食べるんだ」と
聞いた記憶があった。

2020年代、ワームはその増殖の強さから
コンピューターウイルス用語として使われていたようだ
ただ、ゴミの山の村には、
コンピューターも無縁な世界だった。
クリスは、ゴミの山に捨てられていた技術系の参考書を
持ち帰っては、家で一人眺めるのが
唯一の楽しみともいえた。
昔は繁栄していた地球の姿を思い浮かべながら
ゴミの山に落ちているものを少しずつ持ち帰っては、
実験や組み立てをするのが好きだった。

クリスはワームを10匹程、
麻の袋に入れて家に持ち帰った。

クリスの家は、ゴミの山のふもとあった。
そこは、ゴミの山で生活している人達の
集落でもあった。
クリスは、自分の家の土間に穴を掘り
持ち帰ったワームを埋めた。
ワームと一緒に、プラスチックの破片を
その上に乗せた。

朝クリスはワームの上に乗せたプラスチックが
無くなっている事に気が付いて
昔父が言っていた、「ワームはプラスチックを食べる」
がまた蘇っていた。
クリスは、またゴミの山に行き、
今度はバケツにできるだけ沢山ワームを入れて持ち帰り
家の土間へ埋めた。

ワームを見ていると、無性に空腹に襲われた。
クリスは、海水から蒸留した水でワームを煮込んで
食べた。
海水から抽出した塩も加えたおかげで
思っていたほどまずくはなかった。
クリスが拾ってきた本には
2020年代から、人類は昆虫食に目を付け
今後の食糧難の救世主になると記載されていた。
ワームは昆虫ではないのかもしれないが、
多少の空腹は満たされた。
それでも、いつ餓死してもおかしくない程
痩せていた。

クリスが水を蒸留するのは、
父から教えられたからだった。
この地域は、井戸水も既に汚染されていた。
飲めなくはないが、最低限の菌を殺すための
煮沸はひつようだったが、
昔エンジニアだったクリスの父は
ゴミの山から、使えそうな危機を広い集め
蒸留装置を作った。
蒸留装置と言っても、大それた機械ではない。
火をおこすスペースは、ゴミの山にある、
燃えそうな紙や木片を使っようになっていた。
その上に鍋を置き。鍋の蓋に着いた水滴が、
亀の中に落ちる仕組みだった。
海水の場合、鍋の底には塩分が残る。
さすがにこれを精製する装置までは無いが、
少し細かなふるいで、大きなゴミをよけ
多少の塩分が取れるようにはなっていた。

政府が売っているミネラルウォーターは
高級品のため、買う事ができなかった。
それでも、ゴミの山で稼いだお金で
多少の食料とミネラルウォーターを買っては
その高級な味に喉を鳴らす事もあった。

見えない未来

「ケイト今何年だっけ」

クリスは、時々ケイトと一緒にゴミをあさっていた。
今日も朝からケイトを誘って、ゴミの山に出ていた。

「クリス、この世界は2030年から年号もカレンダーも
 時間も、無くなったのよ、
 外が明るくなれば朝、暗くなれば夜、だから今何年なんて
 概念はなくなったの、私達は働き蜂と一緒
 政府という女王蜂のために、せっせとゴミの花園から
 蜜という物資を集めるだけ」

ケイトは少し口をとがらせて言った。
クリスとケイトは幼馴染であった。
二人は2020年に生まれ、2030年に変革が起こり
2040年の今20歳になる所だろう。
けれど今を生きる人類に、時間も年齢の感覚も
残ってはいなかった。

ケイトの両親もまた新種のウイルスに倒れた
彼女も今は一人で生活をしている。

クリスがケイトにワームの事を伝えようとした、
その時だった、3つ先のゴミの山から
爆発音と煙が上がった。
よくある事ではないが、時々ある事ではある。
早く消さないと、煙で息苦しくなるが、
雨でも降らない限りなかなか消えない。
僕らはじっと煙のほうを見ていた。
すると、「ダニエルが巻き込まれたらしいぞ」
という声が聞こえてきた。
クリストケイトは顔を見合わせてながら
走りだしていた。

ダニエルは二人がかわいがっている
6歳の少年だ。
正確には何歳なのかわからないが
だいたい6歳くらいだろうと思っていた。
クリスはダニエルに、ゴミの山のルールなどを
教えていた。
ダニエルには父親はなく、母親と二人で暮らしていた。
その家計を、ダニエルがゴミの山から
稼ぎだしていた。
クリスとケイトは、そんなダニエルに
時々、希少金属が入っている電化製品などを
譲っていた。

クリスト、ケイトが火災現場にたどり着いた時、
火は小さくなっていた。
燃えたのは、リチュウムイオン電池だった。
通常ゴミの山には、希少金属が入った、
リチュウム電池は捨てられていないはずだった。
しかし、その取扱いの難しさから、
使用済みのリチュウムイオン電池を不法投棄していいく
人たちが居た。
流石に原子力発電に使った、使用済み燃料棒が
放置される程、人類は愚かではなかったようだが、
リチュウムイオン電池は時々放置されていた。
正確には昔放置されたリチュウムイオン電池の上に
ゴミが覆いかぶさり、隠れていて、
ゴミをあさり、ゴミを掘り起こしていくうちに
それが表面化したという事だろう。
それに気が付かず、こみをあさりながら、
金属のトングで弱くなったセルのフィルムを破って
発火してしまったらしい。
だれがやらかしたのか、おそらくその犯人は、
ここにはもう居ないだろう。
ダニエルは防塵マスクをしていないので、
有害物質を吸ってしまったのかもしれない。

二人がたどり着くと、
ダニエルは火災から少し離れたところに、
寝かされていた。
傍にいたゴミ拾いの仲間たちが、
助けて運んだらしい。
しかし、ダニエルの息はもうなかった。
クリスは、ゴミの山をおもいっきり蹴飛ばした
「リチュウムイオン電池には近づくな」そう言っていたのに
こんな所にもリチュウム電池があるなんて、
ケイトはただ涙を流し、クリスの手をさすっていた。

綺麗に化粧をすれば、美人だろうと思える。
真っすぐで、大きな瞳のケイトから、
大粒の涙が流れて、ダニエルの顔に一粒、二粒と
落ちていた。

ダニエルの母親は、
ただ黙って、自分の息子を見つめていた。
クリスとケイとは、ダニエルの遺体を
ゴミの山に放置する事ができず、
母親が居る、ダニエルの家に運んだ。
母親は自分の息子の頬を撫でて
「私もすぐにいくから」そうポツリと言った。
稼ぎ手のダニエルが居なくなったら、母い親は
どうやって生活していくのか?
すでに餓死寸前だとも思えるは程
体も心も痩せていた。

「埋めてあげていいですか?」
クリスは母親の顔をみた。
母親は黙ってうなづき、小さな家の横を指さした。
クリスとケイトはダニエルを埋める穴を掘った。
半分はゴミまみれの、
それでも少しは土が混じった庭に、
1時間程かけて穴ができた。

クリスは、家から持ってきた、
ミネラルウォーターの水を、
ダニエルの口に垂らし、そのボトルを、
ダニエルに抱かせて、穴に埋めた。
ダニエルと一緒にゴミを拾っていた人たちも集まり
一緒に穴に埋めてやった。

供える花も、墓石もない。
ただ、虚ろなまなざしで、
ゴミの山と我が子の埋められた場所を見ている、
母親の姿がクリスの胸を突き刺していた。
ケイトはまた大粒の涙を流していた。
集まったメンバーもみな誇りにまみれた涙を、
流していた。

いつまでこの世界が続くのか?
この世界は虚像で、
実は幸せな別な世界があるのではないか?
では幸せとはなにか?
富裕層の仲間入りをして、火星で暮らす事なのか?

クリスは自問自答していた。

あたりは暗くなり、
リチュウムイオン電池により焼け焦げた、
ゴミの山が、いつもより異臭を放っていた。

終わり

編集後記

アメリカの知人が地下室でワームを飼育してます。
「プラスチックも食べるのよ」
なんて言って、写真を見せてくれました。
最近ネットでも、そんな話がでてますし、
昆虫色が未来の食糧危機を救うなんて話もあり、
田舎なのに、自動販売機が設置されたりしました。
たしかに、私達は未来に向けて、
うごきだしてお¥いるのでしょうね。
今更、石器時代に戻れるわけでもなく
争いの無い世界を維持できるのか?
あちこちで、争いの臭いがぷんぷんする中
SDGsは絵にかいた餅だと思っている人も居ます。
先日の講演会で、全部できるのか?
しかし、これは未来へ向けた憲法である。
その先の未来へたどり着くための共通の
法律になれば、少しでも明るい社会が、
見いだせるのではないかという話をされていました。

私が、次に何を書くべきか迷っていたのですが、
やっと、この話を書く気になりました。
きっと終わりのない未来でしょう。
臭い物には蓋をしてきた人生です。
そこへ向けて、ゴミの山で暮らすのか?
私自身の自問自答も含めて、考えています。

今この瞬間も、現実的にゴミの山で暮らす
子供たちも居ます。
格差社会を加速させるも、緩和させるも
私達の行動にかかっているのだと、
自分への戒めも込めて書きました。

この先クリスがどういう人生を送るのか?
続きを書くべきなのか?
そこには幸せはあるのか?
幸せの定義とは何か?

私の中で、ダニエルが死んでしまったことで、
ぽっかりと心に穴が開いてしまった事は、
事実です。
もちろんダニエルは小説の中にだて生きた
少年ですけどね。

ただ毎回、自分の書いた小説で、
自分の感情が揺さぶられている事に
改めて気づきもありました。

本日も長文、最後まで読んでいただき、
ありがとうございます。
皆様に感謝いたします。


サポートいただいた方へ、いつもありがとうございます。あなたが幸せになるよう最大限の応援をさせていただきます。