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お悩み:怖くて出来ないことがあります。そのせいで人に迷惑をかけて、1人になってしまったらどうしよう? と思ってしまうことがあります。

【初めての方へ】
催眠スクリプトは単なる物語であり、催眠的効果があるものです。どういう意味を持つものなのかというご説明と、ご使用上の注意を、以下の固定記事『ものがたりガーデンの催眠スクリプトについて』にまとめました。出来ればお読みになってから、お楽しみいただきたく存じます。
また、頭がぼんやりしたり、眠くなったりすることがありますので、車の運転や機械の操作等、注意を必要とする作業中には、決して読んだり聴いたりしないでください。

「怖いことがあるせいで人に迷惑かけて、1人になってしまったらどうしよう? と思ってしまう」人のための催眠スクリプト


怖いことがあるんですね。
怖くて出来ないこともあったりするんですね。
そのことで人に迷惑をかけてしまうと思うことがあるんですね。
そのために1人になってしまったらどうしようって考えてしまうことも、時々、あるのかも知れませんね。

そんな人が、ある物語を聴きました。
それは、「鱗(うろこ)」の物語だといいます。
その人は、はじめ、「鱗」と私と、どう関係があるの? と、思いました。
けれど、だんだんと、ある感覚になったんです。
そんな物語に、耳を傾けてみませんか?
「鱗」が語り始める声が、聴こえてきます。


私の眼差しは、悠久の時の流れに注がれています。
この地球に、最初の生命が生まれてから、現在までの、長い、長い、時の流れに。

誰かがそうするように言ったのか、そうでないのか知らないけれど、ある時に、私の生命は始まりました。
深い深い海の底に、マグマの熱で温められた海水が噴き出す所が見えていました。
海の底の、さらにその下から響く音が聴こえるようでした。
小さな小さな私には、そこで感じられるものがすべてでした。

そして、どこまでも続く海のゆりかごに揺られて、私は瞼をそっと閉じたんです。
10億年以上もの間、やさしい眠りの中で見た夢は、私のものだったのか、あなたのものだったのか、今となっては分かりませんね。
子守唄を歌ってくれたのが誰だったのか、知っているような、知らないような、そんな気がするのは、海に揺られながら、そしてまた私の中にある海にとけるような、そんな感覚に身を任せていたからなのかも知れません。
満ち足りて、安らかで、心地がいい、そんな遥かな眠りが、私をすっかり育んでくれました。

知らない間に、泳ぎを覚えていたようです。
泳ぎながらたくさんの仲間たちと出会い、言葉にはならなくとも、けれど言葉のような何かを、交わすようになりました。
私は、そんな、躍動する生命の一部でした。
そして広い広い海の中を泳ぎながら、私は海水の圧力を感じていたのか、いなかったのか、徐々に体の大きさが変わり、より頑丈になっていきました。
そして、そう、その過程の中で、今の私が形作られていったんです。

私の役目は、鱗(うろこ)となって生命を守ることです。
鱗は、進化の過程によって、また生き物によって、さまざまな形状をしています。
鱗同士、当たれば音がするほどとは言わないまでも、生き物をしっかりと守れるように、まずは頑丈な、厚くて重みのある形になりました。
生き物は、より力強くなりました。
守りが固くなったことで、より勇敢になれるということも、あるかも知れません。
そして、営々と生命を繋いでいく中で、鱗はだんだんと薄く、軽くも、なっていくのでした。
より自由な動きを妨げずに、そして同時に守れるように、工夫し続けているんです。
そうして生命は、碧く澄んだ海の中を、スイスイと、軽く動きやすくなった体で、気持ちよさそうに泳いでいくんです。

時の流れが私を変容させたのか、それともこの地球を変容させたのか、ある時見ることになったのは、陸の上の、高く広い空、広大な大地、そびえ立つ山々でした。
すべてが堂々と眼前に迫りくる、あの景色でした。
海の中とは違った音が、違った聴こえ方で、聴こえてきます。
風が渡っていく音や、生き物たちが大地を踏み鳴らす音や、山から響いてくる生き物たちの鳴き声が、私の興味を引きました。
私は、そんな陸の上に暮らす生き物や、さらには空を飛ぶ生き物の鱗となりました。
巨大な生き物も、小さな生き物もいました。
そう、私は、さらに姿を変えたんです。

私は姿を変えながら、あらゆる生き物に寄り添って旅を続けてきました。
ある時はキラキラと光る魚の鱗として、ある時は可愛らしい小鳥の足の鱗として、またある時は美しく丈夫な亀の甲羅として、そしてまたある時は蝶々の羽を鮮やかに彩る鱗粉として……。
たくさんの出会いの挨拶と、再び出会う約束とを繰り返しながら、今も旅の途中です。
そして、大切な指先を守る爪として、さらにはよく噛んで食べるのに欠かせない歯として、あなたと出会っていることでしょう。
長い長い旅の途中、あなたと出会えて、共に旅して、そしてあなたの笑い声を聴くことが出来たなら、あの日、私が生まれた理由など、分からなくてもいいんです。
生まれて、育まれて、守ろうと思って、でも守るだけではなくて、もっと自由でいてもらえるようにと工夫を続けて、さまざまに姿を変えてきました。
そんな旅路が、金色に光り輝く、喜びの道になるんです。

遥か遠い昔、この地球で聴いた、さまざまな音を、今でもよく、思い出します。
それは、幾重にも重なる、豊かな音でした。
私を取り巻くそんな音が、生命の息吹を、躍動を、そして大自然の営みを、この身に感じさせてくれました。
今、目を閉じれば、かつて見た、あの時の空の色が、風の音が、そして土の感触が、ありありとこの胸に蘇ります。
どこまでもどこまでも続く空。
見果てぬ大地。
どこからどこへと流れていくのか、音を立てて吹き渡る風。
それらの果てしない広さを感じる時、私のこの小さな胸の中に、無限の広がりがあることを知るんです。
そしてまた、思い出します。
あの陽の光の眩しさに、私はキラキラと光りました。
あの風が草や葉をかき分ける音に、私は心を躍らせました。
大地を踏み締めるあの感覚に、私は生きているという実感を見出しました。
そうした瞬間と無限とが、私の中で永遠のダンスを踊っているんです。

そう、あの懐かしい海の波を眺めていても、私たちは無限を感じるのかも知れません。
そんな海の波を表した日本の伝統文様に「青海波(せいがいは)」と呼ばれるものがあります。
「青い海の波」と書くその文様は、波を表す半円が一面に鱗状に描かれているんです。
波がさざめく音を立てながら穏やかにゆらめく、あの広い海のように、無限に繰り返す波の様子を描いています。
青い海の波を眺め、そしてその波の音に耳を傾けていると、私はまた無限の中にとけ込んでいくようです。

そんな大海原の向こうには、緑の大地が広がっています。
動物たちの声が聴こえ、地面は柔らかい草に覆われて、緑の樹々が繁っています。
樹々は、めぐる季節の中で、美しい花を咲かせ、瑞々しい果実を実らせます。
太陽きらめく夏が過ぎようとする頃には、梨の実が旬を迎えます。
美味しそうな梨の実をひとつ、見繕って、枝からパキッと音を立ててもいでみます。
手の中の梨の実の手触りや、大きさや、重さを感じながら、そっと鼻に近づけて、香りを確かめてみます。
ほのかな甘い香りに満足して、その実の色や美しさをもう一度確かめてから、
「いただきます」
と言って、思い切って皮ごとかじります。
シャリシャリとした独特の食感で、口の中にたっぷりとした甘い果汁が広がります。
目を閉じて、シャリシャリとした食感と、甘い果汁を、ひと噛みごとに味わいます。
季節の恵みが、染み渡ります。
夏が去ると、樹々が錦に染まる秋がきて、しんしんと雪が降り積もる冬を迎えます。
私は、やがてくる暖かな春を待ち侘びるんです。
季節もまた、無限にめぐってくるものだと、知っているからです。

樹々が冬を越す間にも、その枝には、花や葉の小さな芽が少しずつ、育っていきます。
そう、あの桜の木も、季節が無限にめぐると知っていて、やがてくる春への準備をしているのかも知れません。
私は、そんな桜の冬芽を、じっくりと見てみたことがあるんです。
そこには、花や葉の小さな芽を守っている、茶色い鱗状のものが見えました。
それは、「芽」に「鱗」と書いて、「芽鱗(がりん)」と言うのだそうです。
花の季節がくるその日まで、小さな芽を包み込んで、守っています。
だんだんと明るくなっていく陽射しと、北から音を立てて吹いてくる風とを、繰り返し感じながら、あの桜の木は、季節の声を聴くのでしょうか。
再び花の時がめぐってくることを、感じるのでしょうか。
ある日、芽鱗の中から緑色に芽吹いた様子を、見ることができました。
そして、春の足音が近くなればなるほどに、生命の喜びに頬を紅く染めているかのような花の蕾が現れました。
小鳥たちが春の歓びを歌う頃、蕾は少しずつほころんで、やがて桜色の5枚の花びらが、音もなく、まるでやわらかな陽射しとの出会いに微笑むかのような、美しい姿を見せました。


さあ、ひとーつ! 爽やかな空気が頭に流れてきます!
ふたーつ! 体がだんだんと軽〜くなっていきます!
みっつで! 大きく深呼吸をして〜! 頭がすっきりと目覚めます!


©️2023 Monogatari Garden

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