![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/144776572/rectangle_large_type_2_f6c9fa571d393815ad84bb546e80f5d1.jpeg?width=800)
【クリエーター紹介】 引き染め職人・中嶋健さん (2024)
![](https://assets.st-note.com/img/1718958023690-s2QoIQvLBg.jpg?width=800)
日常にとけこむモダンなデザインで伝統を次世代へ継承する
中嶋健は滋賀県出身で、京都を拠点にする日本の引き染め職人。
「引き染め」とは染めの技法のひとつで、刷毛を使って直接生地に色を乗せていくのが特徴。
グラッフィクデザイナーから転向した中嶋は、ぼかしなどの伝統的な技を用いつつも、鮮やかな色彩と大胆な図柄の浴衣生地などを制作し、現代的な和装の提案を積極的に行っている。
![](https://assets.st-note.com/img/1718957012659-AMMJD8Dhbu.jpg?width=800)
引き染めには広い面積を染色できるという利点がある反面、気象条件や気温や湿度、布の高低差などによる染料の偏りで染めむらができることもある難しい染め方で、豊富な経験と染料に関する知識などが必要とされるが、中嶋はこれらの技術を独学で習得した。(用語参考:きもの用語大全)
大好きな海外で目覚めた、日本の伝統文化への意識
もともと大学で建築を学んでいた中嶋は洋楽やデザインが好きだったこともあり、卒業後ニューヨークへ留学。大好きな海外文化にどっぷり浸る中、逆に日本について尋ねられる機会が多くあり、海外で認められるためには、自国の文化をきちんと持つことの大切であると痛感し、これが日本文化へ目をむける機会となった。
帰国後、グラフィックデザイナーとしてTシャルのデザインなどを手掛けていたが、次第に物づくりのサイクルが早いデザイン業界と合わないと感じ始め、デジタル媒体でなく形あるものを作りたいという思い、手仕事への憧れなどから伝統工芸の世界へと足を踏み入れた。
そして陶芸、木工、ガラス、和紙などさまざまな体験教室に足を運ぶ中で、自身の得意とする「色」を活かせる引き染めの技法に出会った。
「引き染めという、布に直接刷毛を使って柄をのせていく染色方法を見た時に、これだと今までやってきたグラフィックデザインをテキスタイルデザインに置き換えられる。これまでの経験を一番活かすことができる」と直感したのだと語る。
![](https://assets.st-note.com/img/1718956607973-HfR4JZeuaB.jpg?width=800)
夢中で独学した引き染めの技法
引き染めの工房へ就職した中嶋は、外国人向けのワークショップなどを担当した。仕事を通じて最低限のスキルを身につけることができたが、そこから先は独学だった。
会社の運営する体験施設で働きながら、そこに所属する70〜80代が大半の熟練の職人たちの技を見てシュミレーションし、家に帰って実験を行う。
住んでいたアパートの玄関ドアから外のベランダまでロープを使って染色用の布を張り、会社から帰った夕方から作業を始める。給料は材料費にあて、染料を乾かすのに夜は吊った布地の下で眠る。換気のため窓を冬でも窓を開け放し、ダウンを着込んで眠る…
自分が志すものに出会えた喜びと、新しいことを吸収しようという探究心とで無我夢中だった。
「そうですね、楽しくないとそこまでできないですよね。家に来た友達もびっくりしてました。ただ、こうやってゼロから独学し、自分のやりたい表現の技術を追求できたのはよかったと思う。職人として就職してしまうと、ある特定の技術はのびるかもしれないけど、そればっかりになってしまったり、デザインも古典的なものしかできなかったり…それだと自分の行きたい方向とは違ってモヤモヤしたと思うんで」
![](https://assets.st-note.com/img/1718956711879-eQmAhGrqC4.jpg?width=800)
今日のライフスタイルにフィットする和装の提案
![](https://assets.st-note.com/img/1718957140333-Obf01U7xwf.jpg?width=800)
6年間の独学期間をへて独立し、かばんや椅子の座面に使うテキスタイルのデザインと制作の受注を開始する。最初は染の面白さに夢中になっていたが、徐々に染めをはじめた原点、自国の文化や日本人らしさについて考えを巡らすようになる。
「染色業界はどこで話を聞いても『厳しい』という声ばかりだし、僕自身、色々な工芸について調べていなかったら引き染めのことは知らないままだった。染の技法やそれに関わる産業を残していくためにも、まずは知ってもらうことから始めなければ、と思い始めて。自分自身が和装についてもっと知りたかったこともあり、色んな世代が楽しんで使える浴衣生地に挑戦してみることにしました」
伝統を大切にしたいと思う一方、着物の高級化が進みすぎ、かえって文化が先細りしていることにも懸念していた。
「絹の高額な着物だと、敷居が高くなって、間違いなく着ることだけに意識がいってしまう。その点、浴衣や綿の着物だと、ハードルも下がって着やすくなる。ちょっとくらい着崩れしても、足下はスニーカーといった自己流なスタイリングでも、自分たちの文化をデイリーに纏う機会が増えてくれればいい」
中嶋は和装である浴衣にも自身の強みである色やグラフィックデザインを生かし、従来の伝統に囚われない鮮やかで自由な色彩を発揮する。
「もともと呉服業界にいたわけじゃないから、それが僕の強み。伝統的な色合わせや季節のモチーフに捕われすぎず、今までになかったデザインや発想を提供していきたいし、着る人にも自由に楽しんでもらいたい」。
まずは楽しむことで和装を広め、継承していきたいという思いを、自身のクリエーションとともに発信し続けている。
中嶋健インスタグラム:https://www.instagram.com/takeshi.nakajima/
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?