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タイムマシンに乗って未来の年金を観に行こう!【その②】

※その①を読まれていない方は、まずこちらからお読みください!

トシ(30歳):博士、再開したメルシーのラーメン、大満足だったよ。
博士:後ろの席に座った女子学生も、田舎から出てきた両親に「ここのラーメンは本当においしんだから」ってずっと熱弁振るっていたな。そこまで美味いかどうかはともかくも中毒性の高い味だ。また食べに行きたくなる。
先輩(50歳):ところで博士、そろそろ我々の年金の未来を観にいきせんか?
博士:そうじゃな。ではまず君が65歳になる15年後の未来からにしようか。


「失われた30年」が続いた2039年の年金は?

博士:さあ、2039年についたぞ。
先輩(50歳):高齢者がますます増えている感じだなあ。
博士:そうだな。2042年までが「高齢者の増加」と「労働力人口の減少」が続く「最も厳しい」時期だからな。
先輩(50歳):では私の年金も厳しいのでしょうか?
博士:「失われた30年」の経済が今後も続く前提条件だと、2039年の65歳の平均年金額は一人あたり月11.95万円※だ。
(※ 未来の年金額は物価上昇率で2024年に割り戻した実質値、以下同様)
先輩(50歳):2024年の平均額月12.1万円からは1,500円の微減ですね。
トシ:年金額が減る理由は、マクロ経済スライド(下図参照)で年金の実質水準の引き下げ調整をしているからですね。

いっしょに検証!公的年金(厚生労働省)より

先輩(40歳):でもマクロ経済スライドの調整は、年金収支が確保できれば終了ですよね。
博士:厚生年金は2026年あたりで調整が終わりそうだが、国民年金はなんと2057年(!)までかかる見込みなんだよ。

「失われた30年」が続いた2049・2059年の年金は?

先輩(40歳):私が65歳になる2049年は、調整が続いているから更に年金が減るのでしょうか?
博士:いや、2049年の65歳の平均年金額は一人あたり月12万円なので、2039年からは500円アップするぞ。
先輩(40歳):意外です・・・でもそれはマクロ経済スライドの減額より、女性の厚生年金加入期間の伸びによる増額が大きいからですか。なるほど。
トシ(30歳):結果として「失われた30年」の経済が続く前提でも、今の年金より「ちょこっとダウン」で済みそうなんだ。ちなみに俺の2059年の年金な12.7万円か。6,000円のアップだね。
先輩(50歳):しかし65歳でリタイアせず70歳まであと20年は働かないといけないのかなあ。
博士:無理して今のペースで20年働く必要はないぞ。例えば週三日勤務にするとか、自分のペースで働くのもいいかもな。
先輩(40歳):さらに今後は空前の人手不足、言い換えれば「労働力希少社会」だから労働条件も良くなるだろうし、波はあるかも知れないけど長期的には「賃上げ」が進むのではないでしょうか。
トシ:やはり「成長型経済」に移行した我々の年金も投影して欲しいですね。
博士:そうだな。高度経済成長期も人手が足りなくて、中小企業でもしっかり賃上げが進んだからなあ。では「成長型経済」に移行して労働参加も更に進んだ未来を投影しようか。

「成長型経済」に移行した2039年・2049年・2059年の年金は?

博士:さあ、「成長型経済」に移行した15年後の2039年に来たぞ。
トシ:国民年金のマクロ経済スライド調整は2037年に終わったようですね。20年前倒し出来たんだ。
先輩(50歳):2039年の私の年金は・・月13.25万円ですか。さっきの「失われた30年が続く」未来より月1.3万円のアップですね。15年間だとこの程度かな。
先輩(40歳):その10年後の2049年だと・・月15.6万円だ。夫婦二人だと31.2万円、悪くないですね。
トシ(30歳):さらに10年後の2059年は・・月19万円だ!!ヤル気になってきたぞ。
博士:つまり、努力次第で若者ほど年金の未来は明るくなるわけだ。
後輩(20歳):少子高齢化イコール若者は年金がもらえない、などという「直感的」な考えは改めるべきですよね。
先輩(50歳):そうですか。若者ではない私には厳しい未来ですね・・。
博士:いや、君個人の年金を増やす方法ならあるぞ。年金の繰下げ受給じゃ。これが年金額を増やす効果が最も大きい。
後輩(20歳):あっ、それ知ってます!5年繰り下げたら年金額が42%増えるんですよね。
先輩(50歳):その理屈はわかるんですが、やはり5年間も年金をもらわないというのは結構長く感じてつらいですね。
博士:まずは65歳から66歳まで1年だけ長く働いて、8.4%の繰下げ増額を目指すくらいのスタンスで十分じゃよ。以降は1ケ月毎に0.7%増額となるから、それを励みに働けるところまでやってみたらどうじゃ。いずれにしても、60代、70代をどのように過ごしたいのかまずは自分自身で考える事が大切じゃな。
先輩(50歳):月13.25万円の年金がまず1年で8.4%増額なら、月14.36万円の年金になるのですか。この金額で一生涯もらえるのはイイですね。
先輩(40歳):確かに「ちょこっと長く働く」というプランを持っていれば、年金に関してそれほど悲観的にならなくて済みますね。
博士:なお、繰下げで年金が増額になると税金や社会保険料も増えるし、在職老齢年金による年金が減額される部分は増額対象外だったり、特別支給の老齢厚生年金は繰下げ出来ないとかいろいろあるので、今から詳細を知りたい人は年金事務所などに相談に行くのもいいな。最近混んでいて予約が1~2ケ月先になるなんて話も聞くけど、急ぐ話でなければじっくり構えていこうか。
先輩(40歳):公的年金シミュレーターで簡単な手取額試算もできますね。
博士:今後も様々なシミュレーターが提供されるようじゃな。まあワシの作ったタイムマシンはそう気軽に使えんから、簡易版タイムマシンと思ってシミュレーターをうまく活用してみたらどうかな。ではそろそろ現代に戻ろうか。

制度改正をした場合の年金の未来は?

先輩(40歳):博士、年金が人口や労働参加と経済成長で変化していく事がタイムマシンでの可視化で実感できました。ありがとうございます。ところで今は年金の「制度改正」についての議論が続いていますけど、これらが実現したら更に明るい年金の未来が投影できるのでしょうか。
博士:うーむ。年金は金融商品と違って「政治的な妥協の産物」だから、いつどんな「制度改正」になるのか読めないんじゃよなあ。
トシ:博士、続きはまた美味いラーメンを食べながら議論しませんか。
博士:そうだな。でも今度は過去の世界へ行って懐かしいラーメンを食べるのはどうかな。ワシが若い頃の東京には今みたいに豚骨ラーメンの店は殆ど無くて、数少ない店の中でも西麻布の「赤のれん」には良く行ってたなあ。よし、思い切って本場の博多まで行ってみるか。昔西新にあった「みち」というラーメン屋でな、メルシーとはまた違う中毒性があった。ああ、もう我慢できん。では早速1980年あたりの博多に飛んでみるか!
(つづく)

※この話はフィクションですが、数値は「令和6(2024)年財政検証結果」を参考にしています。


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