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月曜日の図書館51-60

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2021年1月の記事一覧

月曜日の図書館 片付けと厄除け

月曜日の図書館 片付けと厄除け

図書館で働く人は極端な人が多い。事務室を見渡しても、ものすごく潔癖な人か、片付けという概念を知らない人かの2択に分かれる。

K川さんの机の上は、無印で買ってきたファイルボックスに書類が整然と分類され、あいまいに投げ出されたものはひとつもなく、清浄な空気が流れている。

一方向かいの席のI元さんの机の上は積載量の限界を軽く超える高さまでありとあらゆるものが積み上がっている。のみならず、机の横にはこ

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月曜日の図書館 怖くない話

月曜日の図書館 怖くない話

怖い話が苦手だ。人が死ぬ話も嫌。窓口で「おすすめのホラー小説を教えてください」と言われたらどうしようとびくびくしている。

前に仕事で『エクソシスト』を観なければいけなかったときは、半年くらい不眠症になった。克服するためにわたしもブリッジができるようになればいいのではと思ってせっせと練習していた。

背骨をすこぶる痛めた。

怖い話はしかし魅力的でもある。小さいときに読み聞かせをしてもらった絵本の

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月曜日の図書館 地味な宝物

月曜日の図書館 地味な宝物

〇〇株式会社50年史とか、△△学校100年のあゆみ、などといった本は、たいてい重厚感を出そうとして布張りの高級なつくりをしているため、ラベルシールがすぐにはがれてしまう。こんなときにはラベルの上からボンドを塗りたくるのがうちのやり方。最初にそれを教えられたときは絶句したが、確かにこの方法だとラベルは本体にしっかりとくっついてはがれなくなる。

筆または大胆に指で塗るため、あちこちにムラができて、乾

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月曜日の図書館 技を引き継ぐ

月曜日の図書館 技を引き継ぐ

カウンター業務のかたわら、郷土玩具の本をめくり、エクセルに文字を打ち込んでゆく。玩具の名前と、起源と、ゆかりの場所をリスト化するのだ。この地に伝わる素朴な玩具をこつこつ集め、いつか郷土資料コーナーに展示するのがわたしの夢である。

展示に必要なケースや資材はまだない。いつも年のはじめに「お金がふってわいたら買いたいもの」の照会がきて、毎年応募するのだが、残念ながら実現できていない。お金は大抵「トイ

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月曜日の図書館 諸行無常

月曜日の図書館 諸行無常

研究室の奥から、古老のインタビューが発掘される。100年くらい前、図書館ができた時に働いていた人たちの貴重な話である。

わくわくしながら読み進めると、××は軍人上がりで気位は高いが仕事をしないので△△係の仕事を押しつけてやった、とある。早速ディスっている。

奇しくも昔ここで働いていた、というおじいさんから電話がかかってくる。自ら「伝説の司書」と称して苦労話や自慢話を延々聞かせてくるので、携帯電

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