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奇想天外旅。

久々に彼と小旅行に出た。
相変わらず何の当てもなく、とりあえず車を走らせる。
どこに行くかも決めず、日帰りか泊まりかも決めず。

下道で自然のある方へと走らせていたら山梨に着いた。
それも日が暮れてからの到着。
宿は決めていない。どのサイトの宿も満員。空いてるところは高い。

何とか探し、お手頃なところで空室を見つけ予約。早速その宿へと向かった。

到着するなり、暗がりの駐車場にある木の下で男の人が1人椅子に座っていた…。
エンジンを止めると近づいてきた。
どうやら無断駐車を見張っていたようだ。
宿泊することを告げると、「あっそ」と素っ気ない。


外観から見えたレストランは良さげ。
館内に入るとロビーは歴史を感じられ、煌びやかで何やら期待できそう。


しかし、フロントには誰もいない。電気も付いていないし、もう5月だというのに、“Merry Christmas”と書かれた飾りがしてある。
心配になってきた。


暫くして、さっき素っ気ない返答をされた男と、そのお母さんらしきおばさんが出てきて、カウンターにある用紙に名前と住所を書くようにと言われた。

その紙には別のお客さんの名前も書いてあったが、全員中国人。
そしてその用紙もよく見ると中国語が書いてある。


部屋を案内された。絢爛なロビーには階段があり、上の階に部屋があるようだったが、私たちが案内されたのはロビー横の廊下を抜けた先の部屋。
その廊下から様子はおかしかったが、案内された部屋の襖は破れ、何にも入ってない家具が陳列され、カーテンを開けると鬱蒼とした裏庭が見え、しまいには部屋の鍵は掛からない。
そしてトイレとお風呂は隣の部屋の人と共同で、それも我が家のお風呂よりももっと古く汚い。

そしてロビーには暖炉が置いてあり、何やら燃やされた跡がある。
中国人、部屋と風呂場の汚さ、他の客は姿を現さない。
自分たちの想像力が肥大化して、生きて帰れないかもしれないという気がしてきた。


とりあえず夕食を食べるため外に出た。
しかしどの食事処もホテルからは30分ほど掛かる。
暗がりの道路脇を歩いていると、雷がなってきた。
本当にいよいよ不安になってきた。

少し歩くとアンティークショップの灯が見えたが、古い置物を照らすランプが私たちの不安を助長させる。


やっと辿り着いた居酒屋で何品か頼み、お酒も飲んだこともあり、先ほどまでの不安は少し和らいでいた。
近くのコンビニでお酒を追加し、いざホテルへ。



到着するとまたしても恐怖が。
部屋には大きめなアシタカ蜘蛛が先にくつろいでいた……。。
相方は本当に蜘蛛がダメな人なので私が1人で紙コップで取ろうと試みた!
何度か戦ってみた末、逃がせず。


食堂の方へと向かうと電気が消えていたが、ちょうどスタッフと落ち合い電気を付けてくれた。


2人で飲んでいると、先ほど受付してくれたおばさんが来た。
話してみると、そこのホテルは元々保養所だったが使わなくなって勿体無いからとお金持ちの中国人が買い付けた。
しかしそのまま使われることなく暫く経っていたそうだが、25年以上日本で暮らしていた、そのおばさん夫妻がホテルを営むことになり、移り住んできて3年ほどだという。


なるほど。事情が掴めてきた。

また2人で飲んでいるといい感じに酔っ払ってきて気が大きくなってきた。
「ねぇ探検してみない?」と2人で館内を散策した。
全館くまなく探検してみると、どうやら空室がある。


これは交渉してみる価値があるぞ。


ダメ元でおばさん夫妻を尋ね、蜘蛛がいたこと、そして逃がせなかったことを話、空室と交換できないかと聞いてみた。


中国語で何を言ってるかは分からなかったが

おばさん「いいんじゃない。大丈夫よ、使わせましょう」
おじさん「でもなぁ…」
おばさん「いいじゃない。どうせ空いてるんだし」

みたいなやりとりがしばしされた後………





なんと交渉が成立した!!!

穴だらけの襖、鍵が掛からないドア、窓の外は雑草だらけの裏庭、デカい蜘蛛、なぜ置いてあるのか分からない空のタンス、薄暗い廊下、汚い風呂場とトイレ………

からの

綺麗なベット、広々とした部屋、大きな窓、冷蔵庫もある、部屋のドアももちろん鍵が掛かる、ちゃんとしたお風呂場、何なら2部屋ある、お水も置いてある!


言ってみるものだな。


今回の旅で体験したことは、人の心情によって景色が違って見えること。異文化に対する恐怖心。海外では交渉せよ。
そんなところだろうか。

なんとまぁ奇想天外な旅であった。
面白かった!







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