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読書日記:六人の嘘つきな大学生 人は多面体

 私が地元の図書館で勤めていた頃、よく来館してくれる利用者さんがいた。
彼は毎週金曜日の夕方頃に来館し、本を借りていく気の良さそうな人だった。

 本屋大賞の作品で、ミステリー小説はありませんか?

    ある日たずねて来たので、私は読んだことはないが「六人の嘘つきな大学生」をすすめた。
この本は確か本屋大賞を受賞しており、利用者の希望通りミステリー小説だと記憶していたからだ。
    彼はそれを借りて帰り、翌週の金曜日には嬉しそうに返却に訪れた。

 この本とっても面白かった!一気に読んじゃったよ。

    そういうと軽く会釈して今週借りる本を探しに行ったのだ。

 私はお礼を言われたことが印象に残っており、近々読んでみようと考えていた。
 そして今、本を読み終えたのである。

 主要人物は題名の通り六人で、大学生だ。
波多野 祥吾
袴田 亮
矢代 つばさ
森久保 公彦
嶌 衣織
九賀 蒼太
 装画にも六人の特徴を見事に捉えている絵が描かれている。
あまりに見事なので、小説を読み進めながら登場人物が出るたびに装画を見てしまっていた。
 この小説は就職活動中に起きたある事件を軸に、現在と過去の話が書かれている。
    読み進めながら就職活動は受ける側も良い人材であることを誇張し、採用する側も良い会社であることを宣伝する。全員がそれなりの役を演じている中で人の本質を見抜くのは難しいことだろうと思えた。

 作中でもそれは月に例えられている。
月は照らされた一方向からしか見ることができない。
月の裏側が見えないように、私達が持っている他人の印象やイメージは一面にしか過ぎないのであると…つまりは外面と言うやつだ。
    他人には必ず見えていない面が存在するが、それは見る人によって変わるものだ。
 月の裏側はクレータが多く不細工らしい、普段他人に見せない一面というのは同じように醜い部分だと思う。
    作中にはそれを思わせる展開があって面白かった。

 大学生がお互いに持つ印象があり、面接官が持つ印象もある、そして小説の終盤には第三者から見たその人物の印象が語られているので是非最後まで読んでほしい。

 私も就活の時苦しかったな…そんな自分の過去まで振り返り、思い出される作品でした。


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