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【掌編小説】バレンタインに好きな女の子から手作りチョコをもらった件♪

 僕は、同じクラスに、好きな女の子がいる。

 彼女は、バレンタインに、手作り本命チョコを、誰かにあげるんだろうか?

 僕は、そんなことばかり考えて、モヤモヤした日々を過ごしていた。

 そこで僕は考えた!

 こんなにヤキモキするのなら、僕の方から申し込もう! 「僕に、君の手作りチョコを、お願いします!」って、バレンタインの前に、こちらから逆告白しよう! 当たって砕けろだ!

 昼休み。

 授業中に書いた手紙を、彼女にそっと渡した。

 放課後。

 彼女は、学校近くの公園に来てくれた。

「き、来てくれて、あ、ありがとう」
「う、うん。話って~、何?」
「あ、あ……、あのさぁ……」
「うん」

 僕は緊張のあまり、足がガクガク。でも、勇気を振り絞って、彼女に伝えた。

「バ、バ、バレンタインに、き、き、君の手作りチョコ、ぼ、ぼ、僕に、お願い出来ませんか?」

 言えた! とにかく、言えた! 後は、野となれ山となれ! 当たって砕けろだ!

 すると、

「い……、いいよ♪」

 エーーーッッッ!!! マ~~~ジかーーーッッッ!!!

「ほんとに?!」
「ほんとに♪」
「ヤッターーーッッッ!!!」

 天にも昇る思いだZZZゼーーー~~~ッッッ!!!

「じゃあ~、注文承りました~♪」
「ありがとう♪ よろしくお願いします♪」

 これって~、その~、僕と付き合ってくれるってことで、いいんだろうな~♪ 彼女は、どんなチョコを作って来てくれるんだろう?

 バレンタイン当日。

 昼休み。

 彼女は、僕の机の横を通り過ぎる際、他の誰にも気づかれないよう、そっと、手紙を握らせてくれた。

 こっそり手紙を開けると、『放課後、この前の公園に来て♪』って、書かれていた。

 僕は、必死に、ニヤニヤを抑えながら、いよいよ彼女と、交際が始まるんだな~と、喜びにひたっていた。

 放課後、この前の公園に行くと、ベンチで彼女が待ってくれていた。

 僕に気づくと、サッと立ち上がり、飛びっきりの笑顔で、右手で大きく手を振ってくれた!

「青春だ!」

 僕も、右手で大きく手を振りながら、彼女の元へ駆け寄った!

「ごめんね! 待たせちゃって!」
「うぅぅん♪ 全然全然ッ! 私も今来たとこだから♪」

 すると、彼女は、早速、ベンチの上に置いてあった真っ赤な紙袋を両手に持って、

「はい、手作りチョコ♪」

 と、上目遣いで、僕に差し出してくれた!

「あ、ありがとう♪」

 ク~~~ッッッ!!! シビれる~~~ッッッ!!! この青春リア充展開ッ! 神様、ありがとう~~~ッッッ!!!

「じゃね♪」
「えっ?! 何で何で?! 一緒に食べようよ!」
「ゴメン! 今日はちょっと用事があって、急いでるの!」
「あっ、そうなんだ。逆に、ゴメンゴメン!」
「いいよいいよ。私に手作りチョコ頼むって~、そ、そういうことだよね?」
「そ、そういうこと~、……だね♪」
「だよね。うん! 中に、ちゃんと、返事、書いてあるから♪」
「あ、そうなんだ♪」
「じゃね!」
「じゃね♪」

 そう言うと、彼女は、まるで時限爆弾でも僕に手渡したかのように、モーレツなスピードで走り去って行った!

「急ぎの用があるのに、時間作ってくれたんだな~。悪かったな~」

 僕は、ベンチに座り、真っ赤な紙袋から、真っ赤な包装紙に包まれた、わりと大きめの箱を取り出した。ちょうど、正方形の食パンを、二枚横に並べたくらいの大きさだった。包装紙を破らないよう、シールをそろりそろりとがし、濃紺の箱を取り出した。そして、それを両膝の上に置き、僕は、ドキドキワクワクしながら、両手でフタを、そっと持ち上げた。

 すると、

『NO』

 と、大きな文字が、目に飛び込んで来た!

「えっ?」

 食パン二枚を、『N』と『O』にカットして、油で揚げてから、チョコレートを掛けてくれたらしい……。

 箱のフタの裏に、事務用の茶封筒が張ってあった。フタから剥がすと、中に手紙が入っていた。

『この度は、手作りチョコのご注文を賜り、誠にありがとうございました。材料費、包装代、光熱費、手作り工賃の明細です。2月28日までに、下記銀行口座まで、お振込みの程、よろしくお願い申し上げます。またのご注文お待ちしてります』

 ……とのこと、ガビ~~~ンッッッ!!!

 そして、その明細書の裏には、ピンクのポストイットが貼ってあり、

『尚、交際をお申し込み頂いていましたのならば、お返事は、チョコで表現の通りNOでございます』

 ……とのこと、ガビ~~~ンッッッ!!!

 ここで、一句♪

 手作りの、チョコをもらって、フラれたよ♪

 後は代金、振り込むだけかな♪

 ニャハ♪

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