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昨日も今日も明日も 『さよならライライラ』

その曲を初めて聴いたのは、大阪のちいさな芝居小屋だった。
元はスナックだと言う。ワンルームみたいな小屋だ。
ひょうきんキャラの座長の歌に合わせて、客席が揺れていた。
明るい曲調に合わせて、ペンライトや手を振り振り、謎の一体感。
笑ってしまった。(この記事ね)
知らない曲だと思っていたら、後に知った。
旅芝居の役者であり歌手デビューもした人のオリジナルソングだということを。
有名な歌手に作曲してもらった、まさに「旅芝居の役者が舞台で使う歌」だ。

二度目に聴いたのは、先日の、関東の老舗の芝居小屋。
大千穐楽、「念願かなってやっとこの劇場で公演が打てました」
と、涙ながらに語った座長が踊った。

御礼とお別れと再会を約束する明るいメロディーの中、
舞台を降りて客席をずーっと踊って回るその人の胸に腰に、
たくさんの御礼とお祝いの花が咲いた。
普段は「笑わない女」?
きっと心中いろんな想いで舞台に立っているのであろう。
その人が、ちょっと笑顔を見せたように見えた。
いい顔してるなあ、皆いい顔。
やっぱり私はこの光景が嫌いじゃない。
好きかはわからないし、肯定もしないが、
これがこれこそが清濁併せ呑む旅芝居の景色の象徴としてのひとつだとも思うから。
咲き、咲かせるその光景に、明るいメロディーと熱の入った歌声は、なんだかとても合っている気がして。
じんとした。

「きっと近々会いましょう、出来れば明日会いましょう」

歌う彼は九州の役者だ。プロの歌手としても活躍中。
テンションと熱演、まっしぐら。まさに「熱と力」の九州役者。
矢沢永吉タオルを掲げて矢沢songで踊ったりしたのを見た。
女形で米米CLUBで踊って飛び跳ねていたりするのも見た。
でもちゃんと袴で踊るし、三味線も弾ける。実力はめちゃくちゃある。
歌だってデビューするくらい巧い。愛嬌もある。芝居も、力がある。
ただ、「まっしぐらで一途な不器用」故に、いろんなことがあって、
現在は劇団として毎日は舞台には立っていない。

そんな彼が4年前にリリースした件の曲は、
現在の旅芝居舞踊(歌謡)のテッパンソングのひとつだ。
明るいお別れと、日々続く旅芝居だからの「また会いましょう」の気持ち。
旅に生きる彼ら彼女らの気持ちそのままだ。

中間のセリフもまたいい。

「「まってました!」と言われたら100%の力を出すしかねえんだよなぁ。
みんな魂込めた俺の舞台観て下さい!」

旅芝居は、うつくしくない。
綺麗事とは真逆の世界だ。
毎日が舞台で、人生が舞台だ、休み(ほぼ)なし。
一か月に一度〝引っ越し〟、旅で、舞台で、人生で。
毎日昼と夜の舞台にお客さんが入ってくれないと大袈裟ではなく食べていけない生きていけない。
さらにこの数年のコロナ禍で状況は本当に厳しくなっている。
休業休団、廃業、そんな役者や劇団も少なくない。もう見て見ぬ振りは出来なくなっている。
でも、それでも。
全国で、今日も、さまざまな大小の劇団が役者が、日々の舞台に立っている。

その様はすべて舞台に滲み、咲く、匂う。

きれいなことも、そうでないことも。楽しいことも、切ないことも。

泣く。笑う。

順に……
(三代目大川竜之助座長の『さよならライライラ』)
(劇団寿 2022.3.18@演劇館水車小屋、寿翔聖座長)
(劇団朱光 2022.8・30@浅草・木馬館、水葉朱光座長)


■omake①■

別枠にしようか悩んだがここに書いておく。

関東の劇団、朱光をみて、ちょっと嬉しかったこと。
それは樋口勝次朗をみられたこと。
賑やかなラスト舞踊の前に村田英雄の吉良常を踊っておられた。

ちょうどこの夏、大島劇場で観た劇団三ツ矢(もうこの劇団名じゃないけど)の芝居が「人生劇場」。
送り出しでお聞きすると、
三ツ矢洋次郎座長が「樋口勝次朗先生から教わった芝居です」って。

続けて観られたのもなにかのご縁か。

お兄さんである二代目樋口次郎総帥は2018年に亡くなられて。
あの芸風にあこがれた役者はとても多くて。よい芝居もたくさんあって。

しかし、息子さんである三代目樋口次郎座長は先月の愛知県での公演をもって劇団の解散・廃業を宣言された。
知らせを人から聞いた時、本当にいろんなことを考えました。
たくさん悩まれたであろうと、彼だからこそ。

でも、こうして、樋口のいろんな芝居がいろんな劇団に継がれ、残されてゆく、ゆくのだ。

(しかししかし、考えてみれば、朱光という劇団は、
樋口の芝居も若葉の芝居も、
若水さん(つまりこれはどこと言っていいのかここだけでもめちゃ広いよね)の芝居も、
不二浪の芝居も、
全部持ってて全部やれるやっている訳だ。
めっちゃすごくない?! すごい劇団!
ちなみに私が観た大千穐楽は
若葉さんの芝居『夫婦酒』だったよ!わぁ!)

三ツ矢の人生劇場をみたときのこと

樋口のこと、二代目と三代目のこと、そして、劇界の伝説である平手造酒のこと


■omake②■

三代目大川竜之助座長のことも。

YAZAWA。10年前やけど(笑)

他のオリジナルソング。11年前やけど(笑)

そして、例の歌は、これだ! 作曲は小田純平!


■omake③■
そして長くなっていますが、
これも、貼らせておいて下さい。
咲く、咲かせる、旅芝居の清濁併せ呑む光景の話です。

旅芝居初心者の頃(何年前やねん)のこんな話もね。

長々と失礼しました。ありがとう。

◆◆◆
以下は、ちょろっとですがいつもの自己紹介 。
と、苦手なりにもSNSあれこれ紹介、連載などなどの紹介!!も。
よろしければお付き合い下さい🍑✨
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大阪の物書き、中村桃子と申します。 
構成作家/ライター/コラム・エッセイ/大衆芸能(旅芝居(大衆演劇)やストリップ)や大衆文化を追っています。
普段はラジオ番組の構成や資料やCM書きや、各種文章やキャッチコピーやら雑文業やらやってます。
現在、lifeworkたる原稿企画2本を進め中です。
舞台、演劇、古典芸能好き、からの、下町・大衆文化好き。酒場好き。いや、劇場が好き。人間に興味が尽きません。

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