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ファンタジーとおにぎり

きのう夕方のこと、
出先の近鉄電車の駅構内にあるファミマに寄ったらこんな声がきこえてきた。
「運動後の水分補給に一番ふさわしい飲み物は?」
カーン、ピンポーン。早押しボタンを押して答えるクイズかなんか?
でも、答えめっちゃむずかしない?!
振り向いたら私学の中学か高校だか、いや、中学生やろなあ。
運動部(なにかはわからんかったが)の男の子たち3人が喋っていた。
そのうち1人が手にとったのは紅茶花伝で
もう1人が手にとったのはリポビタンDだった。
「おまえ、それありえへんって」
わぁわぁ言いながら小突き合っていた。
 
電車内で読んだ小説はピンとこなかった。
何年も前に新聞の書評欄でも絶賛されていたので気になっていた1冊だった。
古本屋で見つけて「お」っと手に取ったら帯のあおりもすごい。
書店員さんからの絶賛の声が止まらないし、
当時の読書メーター読みたい本ランキング1位だったらしい。
某作家の推薦コメントもあった。「20代の作者が書いたとは思えない」
 
スポーツや運動部が重要な役割を果たす物語だ。
三世代の大河小説。過去と現実を行き来して家族の物語が描かれる。
珍しく行きも帰りも電車内でひらくくらい(電車内で読むのは苦手な方)
次のストーリーというか落とし方(終わり方)が気になったし、
最後は思わず車内にもかかわらず涙してしまいもした。
 
だけれど、けれど。
読みながらなんかなんだか頭の中で思ってしまったし読後も思った。
「ファンタジーやな」ファンタジー小説という意味ではない。
「童話やな」 童話ではない。
いけない。この言い方はファンタジーや童話に対してめっちゃ失礼であるすみません。
ただ「現実味がない」と感じた。「ないのにエモさで売ろうとしてる」と感じた。
さらに、主人公を変に「ADHDだから」と押し付けた設定をしているのも気になった。
設定が前だか後だかはわからない、きっと先なんだろうが。
ここも「現実を描いているようで」「利用している」ように私は感じてしまった。
昭和の激動の時代を生き抜いた主人公の母親についても、だ。
かなり凄惨な人生を送ってきて、今は認知症。
介護のたいへんさも描かれている、けれどなんか薄くに思えた。
同じ若い著者による介護絡みの小説なら、わたしは山下紘加の『あくてえ』のほうが好きかな、かも、とも、ふと、あれはぼろっかすの悪態(からの)だった。
 
なんか、なんだかね、ごめんね。 
「勉強も出来るし物語を組み立てる力もあるし書ける若い人が、資料と年表を目の前に置いて書いた」ように感じてしまってん。
 
だから、泣ける、ちゃんと泣ける。
でも涙はすぐにひっこんだし、余韻はなかった、わたしには。
 
いや、わたしも昭和のその時期その体験はしてへんで。してへんけど。
 
年表と資料と技術からの、エモーショナルな家族愛と(当時)話題のあのモチーフ。

調べるにも書くにもさぞ時間がかかったろうな。よく引っ張ってこられたな。
後から調べると平成生まれ東大卒、受賞作も幾つか、の作者とのことだった。さすがやなあ。
 
映画化やドラマ化にはもってこいやな、はめっちゃ思った。
もう企画されているのかもしれないな、されていそう。
絵が浮かぶ。なんならキャストも勝手に浮かんだ。
 
「ファンタジー」
せやからええということやところはとても大きいしあると思う。
ほんとゴミみたいな世の中で、
だからこそ、手にした小説内では救われたい人は少なくないだろうし、
ハートウォーミングな、そこから自分の家族や身近な人のことなどを考え、
日々の生活を思い身の回りの人に感謝を述べたくなる愛おしみたくなる、
そんなきっかけとなる書の役割はめちゃくちゃ大きい。
ええやん。めっちゃええやん。
なにがあかん。あかんことは全くない。むしろたぶんいい。
それが小説というものの役割や働きのひとつでもあるだろう。
売りやすい。売れる。泣ける。メディアミックスれる。映像になることでより多くの人に届く。
 
でもたぶん水分補給に紅茶花伝やリポDを買おうとしたクソガキたちは出てこない。出てきても脇役だ。
 
いや、出てこなくてええねん(笑)
 
彼らは結局飲み物を買わずにおにぎりを買って帰っていった。
 
なんでやねん。
 


似たような作風で言うと、ってか路線で言うと重松清っぽい感もあった。
せやけど重松清はもうちょっと血が通ってる気もした。
え、おじさんの血? 昭和の血? せやな。
 
つまりはただの好みです。好みであり、いろいろあるから、ええのです。


悪いことは書いていませんが、よくだけも書いていないので、
これから読むかもしれない方に固定観念を与えたくなく、
タイトルなどは書かずにおきます。
出さないのも失礼ってか卑怯かなぁ、と思ったのですが、
読む前の固定観念を与えたくない、がやはり勝ちました。
隠すつもりはないが話題作なのでこれだけでももうわかるかもですね(笑)
読みたい方にはお伝えします。読めて、よかったです。


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以下は、すこしだけ自己紹介 。
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構成作家/ライター/コラム・エッセイスト
中村桃子(桃花舞台)と申します。

大衆芸能、
旅芝居(大衆演劇)や、
今はストリップ🦋♥とストリップ劇場に魅了される物書きです。

普段はラジオ番組構成や資料やCM書き、各種文章やキャッチコピーなども、やっています。

劇場が好き。人間に興味が尽きません。

演劇鑑賞(歌舞伎、ミュージカル、新感線、小劇場、演芸、プロレス)などの鑑賞と、学生時代の劇団活動(作・演出/制作/役者)経験などを経て、
某劇団の音楽監督、亡き関西の喜劇作家、大阪を愛するエッセイストなどに師事したり。
からの大阪の制作会社兼広告代理店勤務を経て、フリー。

舞台と本と、やはり劇場と人間と、あ、酒も愛し、人間をひたすら書いてきて、書いています。

lifeworkたる原稿企画(書籍化)2本を進め中。

その顔見世と筋トレを兼ねての1日1色々note「桃花舞台」を更新中です。
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あ、5月1日から東京・湯島の本屋「出発点」で2箱古本屋も、やってます。

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旅芝居・大衆演劇関係でも、各種ライティング業をずっとやってきました。
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