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YOU CAN DANCE~『ヤクザときどきピアノ』、あるいはコロナ禍の今思う事~

表紙をめくり扉にあったフレーズにもう痺れました。
「俺は反逆する。残酷で理不尽な世の中を楽しんで死ぬ」
さすがヤクザライター…なんて決めつけで言うのはいけないが
この本は普段ヤクザを取材してるストロングスタイルなライターさんが
人生で初めてピアノを習い発表会の舞台に立つ一部始終を書いた一冊。
すげータイミングで!雷に打たれたように!子供の頃から憧れていたピアノを習う事に決める。
「ABBAの『ダンシング・クイーン』を弾きたい!」・・・ABBA?!?!
それだけのことで、でもそれだけのことがそれだけじゃない。
読み終えて、そして観て(!)、
大袈裟だけれど生きていく勇気すらもらえた一冊でした。
ちょっとしんどくて気持ちがあがったりさがったりな昨今だから、なおのこと。

著者のことはずっと知っていました。
Twitterをみていて&著作を読んで内容は勿論ですが滲み出るお人柄にとても興味を持ちました、ただのファンです(笑)
ピアノを始められたこと、その顛末を本にすることになったこと、
Amazonで予約が始まったその日に予約して心待ちにしていました。
出版当日、4月、もう早速Twitterのタイムラインにレビューが流れてくる。
そわそわ、はよ届けっ、届かないっ、本屋行こうかな(だぶる!)やっと届いた!
一気に読みたいのがもったいなくてちょびちょび、でも一気に読んで、「うわー」。
そして夜中にオマケ(!)のYouTube動画を観て「うわぁ」っとなって泣きました。
(なんと巻末のURLから発表会動画が観られるのだ5月30日まで!)

ああ、この人は「弾ききった」んやなあ、ってグッときたのです。
誰もが知るこの曲の最強フレーズは、そう、「YOU CAN DANCE」、
ああ、踊れたんや、って。なんのこっちゃ。
でも、読んで、観たら、そない思って泣けました。
会うたこともない。知ってる訳でもない。
コワモテのおじさんがめっちゃ緊張した面持ちながらも
大好きな憧れの1曲を人前で詰まりながらも弾ききった。
教わった通りにちゃんと椅子を調整して止まりそうになりながらも
ちょっとすっ飛ばしながらも、そして引き終わって「あ!」「ああ」ってなっても。その顔の素敵さ!
ちょっとしんどいこの時期、
いや、しんどいなんて軽々しく言ってはいけないのだけれど幾度か観返しジーンとしています。

なんでこんなにグッときたのだろう。
一言では言い表せません。
でもなんというかこのステージは〝人生そのもの〟やねんなあと思ったのです。

人の前でなにかをみせる(発表する)ということ。
その裏にあるその人の日々だったり想いだったり。
結果がどうとか他人にどういわれるとかじゃなく。
想いをもってなにかをやろうとしてやりきることの尊さだったり。
人と出会うということ。
光さす方へ導いてくれる人との出会いはきっと絶対ふとしたところにあって
想像もしていなかったその人との出会いが自分の人生を変えるときがある。
いくつになっても人生は輝くということ。
なにかを始めるのに年齢なんていらないしstartさせなきゃなにも起きない。
そして、芸、芸術というものの力。
芸術は、人の心を変える。
この場合は習い事やねんけど、
でも「たかが習い事」だなんて思い込みや知ったかで言うんじゃない。
習い事だろうと、プロの仕事だろうと、
もちろん正確にはこれを一緒に並べるのもあかんのやろうけど、
でも、人がなにかを創ること、人にみせず努力して創り見せる(出す)こと、
創り、見せること。見ることの尊さ。
それを見て感じること、感じた人が個々の人生の糧とすることの尊さも。
いくつになってもいつでも楽しむ。全力で楽しむ。踊る。踊れる。どんな人もきっと。
それは生きる楽しみであり喜びであり、
オーバーだけれど人が人であるということそのものなのだと思う。
楽しむんだ。戦うんだ。いつでも。反逆するんだ。
こんなときだからこそ、より強く思います。願うように。
何か言われたり否定されたりは勿論、奪ったり奪われたりしてはいけないことなんだ、どんな状況であっても。

読んだときは文章のうまさで正直さらっと読み終わりました。
楽しみにしすぎてあっという間だったのだと思います。
でもそこここに散りばめられたストロングスタイルでありながら茶目っ気すら感じる文章と
ヤクザな例えや用語がいっぱい散りばめられた一冊に後から後からじわじわきてる(笑)
世界でも珍しい、ってか、絶対にない「ヤクザな俺のピアノレッスン記」(※ヤクザではない)。
こんなときだからこそ余計に勇気や生きる元気をくれた一冊でした。
私だけじゃなく読者皆、そしてこれから読んでみようと思っているあなたにもきっと。
前を向こう。さあ踊ろう。楽しもう。
私も、書く。
生きようね。

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