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「プラン75」からわかる生きる意味とは

 第46回日本アカデミー賞にて優秀脚本賞(早川千絵)・優秀主演女優賞(倍賞千恵子)を獲得した映画『プラン75』。これは、75歳以上の高齢者に死を選ぶ権利を認め支援する制度プラン75が施行された世の中を描いた作品です。

 この映画は、ほとんど台詞がなくひっそりとした静かな映画です。でも、その静けさが、役者の表情や仕草をやけにリアルに演出し、その状況の深刻さ、辛さや切なさを誇張し、とても感情移入しやすく、現実社会の深刻さと深く向き合わされる作品であると感じました。この作品は、架空のプランであるがゆえ日本の近未来を描いた作品であると言われています。しかし、プラン75という制度自体は架空でありフィクションですが、その他は全て、日本社会の今の現状がそのまま浮き彫りにされていると感じました。
 映画の中では、死を選ぶ権利が付与されることによって、75歳以上の高齢者が「長生きしよう」「生き延びようとすること」は恥ずべきことだという風潮が生まれます。そんな風潮が、社会のお荷物であるとされる高齢者たちに肩身の狭い思いを強いることになります。また、高齢者だけでなく、そんな社会を支える若者や出稼ぎに来ている外国人までもがこの制度に翻弄され、そこからの目線にも焦点を当てています。
 倍賞千恵子演じるミチは、老いた体に鞭を打ちながらも毎日真面目に働き続け、「死」とはまだまだ自分には無縁のことだと思いつつも、一人暮しによる孤独と向き合います。自分と同じ世代の友人がいても、皆が棺桶に足を半分突っ込んでいる状態で、いつまで続くかわからないこの人間関係の儚さから、「孤独」とい最大のテーマが伝わってきます。
 また、老人たちの「生き延びよう」という意思の中に、日本人のDNAに組み込まれている「真面目に懸命に生きよう」とする姿が顕著に現れています。そして、そんな老人たちと接し、こんなに真面目に懸命に生きる人々をなぜ見捨てなければならないんだという現代社会への怒りと、何もできない自分の無力さと葛藤する若者たちの心情。その想いがうまく表現されていて、静かな映像とは裏腹に感情を大きく揺さぶられます。そして、ネタバレになるので詳しくはいえませんが、私のオピニオンとはなりますが、結果は「何もできない」ということです。何もできないんです。無力な私たちでは何も変えられないんです。でも、何もできなくても、何かしようとすればいいんです。そんなことを強く感じました。何もできなくても、何かしようとすること。それが私たち一人一人の最大の課題です。そのためには、まずは知ること。知るためには、社会と向き合うこと。社会のあり方を他人任せにせずに、責任を持つこと。

 私は、常日頃から、犬の散歩の時やバスでお年寄りに会ったときは、必ず一言声をかけるように心がけています。
「今日は暖かいですね」
「お散歩ですか?」
「お買い物ですか?」
なんでもいいんです。あなたのその一言で救われる心があります。

 そして、人間にとって最大の疑問、謎ともいえる「生きる意味」。この作品から深く感じたことは、「生き延びろ」というメッセージでした。本当の本当に「死」を迎えるその時まで、自分の問題回避能力をフル活動させて、生き延びようと必死になってもがき続けること。最大のピンチを迎えても、ここからどうしたら助かるかを試行錯誤して生き延びること。大海原に放り出され、あたり一面に海が広がっていても、溺れまいとして顔を水面下だ突き出し、息を吸う。それこそが、何よりも正しい行いです。

survive(生き延びる)

人生とはサバイバルです。人生にピンチはつきものです。平坦な人生なんてありません。
どんな設定の人生を生きているかは人それぞれ異なります。ゲームに例えると、ライトモードの人も、ヘビーモードの人も。ロールプレイング設定の人も、アドベンチャーの人も、アクションの人も。みんな同じです。
人生最大の目的は、死を迎えるその時まで、生き延びようと懸命になって生きること。

それだけです。

前回の記事(世界は人の数だけ存在するのに、曇った眼鏡が世界を一つにしているというお話)でも書きましたが、曇った眼鏡を外して本当の景色を眺めてください。身体が求めている声を聞いてください。そうすれば、あなたが、懸命に生き延びようとしている声が聞こえてきます。

鼓動を打つ心臓も
グーっと鳴るお腹も
暖かい家で眠りたいと思う気持ちも
人と交わりたいと思う好奇心も

そんな声を叶えてあげること。
それが生き延びていくことです。

毎朝のぼる朝日で新しい一日が始まります。
どんなに歳を重ねていても、今日生まれた赤ちゃんも、新しい一日の始まりは同じです。

今日はどんな一日にする?
毎朝あなたの身体に問いかけてください。
余計な思考はポイッと捨てて、正直にその願いを叶えてあげましょう。




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