内面の浄化槽

前回、5つのベストバイという駄文を綴りましたが、やはり物だけを綴って年納めをするのはあまりにも狡猾すぎるのではないかなと思いまして、この文章を書いた次第です。
つまり物の紹介にわずかなエピソードでも添えて小話を拵えれば、自分の内面を振り返ることなく今年を終えれたように錯覚できるからであり、これは極めて卑怯者の所業なのです。

ここで積もりに積もった内面の浄化槽の蓋を抉じ開け、そのメンテナンスがてら僕の内面世界がどう変化したのか一緒に付き合ってくださいませ。

1 対人関係
以前より人と接するようになりました。それによって普通の人は経験済みであろう対人関係の問題に心を煩わすことになりました。人との距離感はいまだにつかめません。自分にとって快適な距離感を把握してないものですから、自ずと相手の距離感に合わせざるを得ません。それは結果として人付き合いへの億劫さや、転じて人間関係のリセット衝動を招いてしまいます。しかし年を重ねるごとに従来の逃避戦術では対処できないことが多々あり、今がその見直しを迫る過渡期なのだと思います。

疑問や不安は多々あります。週に数回あっていれば友達ですか。友達だったらどこまで親密行動は許可されますか。信頼の証として開示される悩み相談に、それ相応の秘密を開示せねばならないのですか。等々。じっくり向き合うべき問題が山積みです。人は利害関係の上でしか行動しないものですし、間柄の名称はその親密さを包装するラッピングのようなものでしかないと頑なに信じ込んでいるのですが、いつか人間経験を積み重ね、この冷徹な世捨て人を気取った論理を打破したいものです。

2 恋愛
浮いた話など皆目ありません。が、一つ目ぼしい発見があったので忘備録として記しておきます。僕はよく人から恋愛相談を持ちかけられる気質(?)の持ち主であることがわかりました。今までそれとなくこなしてきましたが、カウンセラー曰く、なかなか異性に対してできるものではないと。そうなんでしょうか。

他人の恋愛相談に乗るのは楽しいです。それは相談者のために解決策はないかとあれこれ思案したり、助けを与えようとする思いやりに端を発するのではなく、純粋に聞く行為を楽しんでおり、また相談者も聞いてもらえる楽しみを味わい、お互いの利害が一致する最適な戯れなのでしょう。僕は恥ずかしながら今まで一度もお付き合いをしたことはありませんが、女性の心情を精緻な筆致で描いた小説や曲が大好きです。中島みゆきやユーミンはまさに恋愛大全といってもいいくらい豊富な演習問題を作成しており、彼女らの曲から多くのことを学びました。

恋愛相談はそれらから学び得た知識の復習の場であり、実践の場である気がしてならないのです。いつかこの知識が自分の恋愛に生きる日が来れば良いのですが、果たして恋の最中に理性的で居られるほど僕は賢明でしょうか?ただでさえ理性を欠く場面が日常で多々あると言うのに。

3 将来
このNoteを始めたきっかけがそもそも将来への決意を確固たるものにしたかったからであります。しかしながら、いまだにその非現実性を噛み締めては、どうにか生き抜く方法はないものかと画策してはいるのですが、要領を得ないでいます。

はっきりと言えることとして、僕は自分の本業(詳らかにしないでおきます)と明らかに対蹠的な位置に、自己の赫赫たる情熱を見出してしまったと言うことです。これはここ数年立ち込めていた将来への見通しを全く見失わせる黒い霧、つまり虚栄心だとか年収だとか、そういった通俗的な観念に囲繞されはっきりと宣言できなかった状態からの脱出を意味します。

言葉にすることは一つの現実ですが、この夢をたとえ紙面上でも言えるようになったのは、ここ一年におけるとても大きな収穫の一つです。将来設計とは畢竟、この夢を軸に諸々の工面や筋道を考えればいいだけのことです。来年はこの軸を守りつつ軸を涵養しうる外部機構がどんな姿形を描くべきか、その設計図を明確にする時間なのですね、きっと。

4 浄化槽に加えるべき化学材料
 
1 対人関係
もっと感情的な人間経験をした方が良いです。あなたは感情を表現するのが苦手です。特に悪感情に関しては。もっと人と対立しなさい。自分から発露できないのなら、人間関係に飛び込む機会を増やしなさい。そうすれば自ずと、人間経験の機会も増えるはずですから。そして恐れてはいけません。その経験が全てあなたの感性を涵養する優良な材料になりうるのですから。

2 恋愛
恋愛とは対人関係の上位に位置づけられるものですから、今はまず自分にとって適切な対人関係を築き上げるところから始めた方が賢明です。もしかしたら、身を焦がす雷光が突然目の前を横切るかもしれませんが、それまでの準備期間としても対人関係を大切にすることが有効な対策かと思われます。それから、自分の現実離れしたロマンスをあまり開陳しないように。あなたの悪い癖です。人は突然煉瓦の敷き詰められた広場でタップもしなければ、そのタップが高じて夜空へ二人昇っていくなんてこともありえません。夜景を見下ろす二人の耳にふとwest side storyのtonightが聴こえてくるんです…なんてことはあり得ません。こう言っても、きっとサンクトペテルブルクあたりでは普通の出来事だろうと思ってしまうあたり、僕の妄想癖はなかなか厄介です。小説や映画と現実をもっと切り分ける努力をした方がよいです。

 3 将来
上記の化学材料は全てここに繋がるのですが、何事も感性をひいては文章の洗練さへと繋がるはずです。自分に起こる出来事全てが小説の題材になると思って毎日を過ごしなさい。ガラクタの中に黄金を見出しなさい。それから文章を毎日書き続けましょう。最低1000文字は書いて欲しいです(これはスティーブンキングの習慣に準拠しています)。勉強も忘れてはなりません。講義の内容を常に物語に組み込めるか、授業後に試行錯誤してみたらどうでしょう。もっと辞書を読みこなしましょう。先人の作品から優れた表現技法を臆することなく吸収し、あなたのインクにしなさい。モーツアルトも最初は他人のモノマネだったのですから。

さて、ここまで書いてみて、浄化槽は綺麗になっただろうかと言うとまだまだ書き足りず汚れはますます目に付くばかりです。が、今年経験した精神活動の成果をここに記すことはすなわち来年取り除くべき汚れの明確化でありますから、自分にとっては有意義な文章であったと思われます。来年の今頃、これを読んだ自分がどんなに冷笑的な顔で嘲罵するか楽しみです。

もっとも浄化槽の汚れが白髪のように増えないことを祈るばかりですが…。

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