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自分が松岡茉優だと思って1週間過ごしてみた(映画「劇場」の感想)




振られた男に好きな芸能人を聞いたら、

「松岡茉優。マジで1番可愛い」

と返答された時から、私の検索履歴は
「松岡茉優 メイク」「松岡茉優 髪型」で埋め尽くされていった。

この感覚はほぼ10年振りに沸き起こる感情であった。


「好きな男のタイプに1ミリでもいいから、寄せに行きたい。」

可愛い女心である。


19歳の時、ゼミの先輩を好きだった時、
先輩がAKBの横山由依が好き、と言った時は、
目頭にアイライナーで、切開ラインを書きまくっていた。
(目頭にくの字でアイラインを引くことで両目の間が近くなるメイクの方法)

お陰で19歳〜20歳の写真は、
全く似合わない、かつ不自然な切開ラインが引かれていることとなる。
自他共に認める黒歴史である。


自分を松岡茉優だと思って、生活してみると、
私は松岡茉優なのに、なぜ彼は私を振ったのか?マジで勿体なくね?という、
最高にロックな発想が生まれる。


カネ恋の時のセミロング黒髪フワフワヘアが可愛いすぎたので、ウェーブ巻きを覚えた。

黒目がデカくなるカラコンを取り揃え、
眉毛と目が近くなるように、眉の形を整え、
リップは基本マットが好きだが、艶系に変え、
アイシャドウはガッツリグラデーションが好きだが、淡い色を単色で塗るようにした。
アイラインは控えめに、黒目の上だけ強めに。
睫毛はできるだけ、バサバサに。

しかし控えめに言って、
1ミリも松岡茉優にはなれなかった。

松岡茉優が出ている映画も沢山観た。
大好きな「勝手にふるえてろ」をはじめ、今回初めて、ピース又吉原作の映画「劇場」を観た。


画像2

ー映画「劇場」公式Twitterより引用

控えめに言って、最高の映画だった。
松岡茉優、いや、「サキちゃん」は、私だった。

そんなこんなで、今日は映画「劇場」の素晴らしさについて熱く語らせていただきます。
※ほんのりネタバレを含みますので、お気をつけ下さい。

あらすじ
高校からの友人と立ち上げた劇団「おろか」で脚本家兼演出家を担う永田(山﨑)。
しかし、前衛的な作風は上演ごとに酷評され、客足も伸びず、劇団員も永田を見放してしまう。
解散状態の劇団という現実と、演劇に対する理想のはざまで悩む永田は、言いようのない孤独を感じていた。
そんなある日、永田は街で、自分と同じスニーカーを履いている沙希(松岡)を見かけ声をかける。
自分でも驚くほどの積極性で初めて見知らぬ人に声をかける永田。
突然の出来事に沙希は戸惑うが、様子がおかしい永田が放っておけなく一緒に喫茶店に入る。
女優になる夢を抱き上京し、服飾の学校に通っている学生・沙希と永田の恋はこうして始まった。
お金のない永田は沙希の部屋に転がり込み、ふたりは一緒に住み始める。
沙希は自分の夢を重ねるように永田を応援し続け、永田もまた自分を理解し支えてくれる彼女を大切に思いつつも、理想と現実と間を埋めるようにますます演劇に没頭していき―。

ー「劇場」公式サイトより引用


渋谷の画廊で同じ絵を見ていた2人。
永くん(山﨑賢人)が、サキちゃん(松岡茉優)に、声をかけるのが出会いのシーン。
通常運転の爽やかな山﨑賢人なら、全女子ホイホイついて行くと思うが、この映画の山崎賢人は「絶妙に薄汚くて、気持ち悪い」のである。


顔は勿論整っているのだが、
身なりもみすぼらしいし、髭も髪もボサボサ。そして、挙動不審な喋り方。
あそこまでのイケメンが、この演技できるってすごいな、と思う。

そしてお金もないので、声をかけたにも関わらず、サキちゃんにお茶を奢らせる。
しかも、サキちゃんの要望も聞かず、「アイスコーヒー2つ」と注文するのだ。それをサキちゃんは笑い飛ばし、アイスティーに変更する。

感情表現も気遣いもできない永くんと、
喜怒哀楽が全開で街に出ると色んな人に声をかけられてしまう、お人好しのサキちゃん。

永くんが、「デートってどう誘うの?」と、劇団仲間に聞き、「家具を買いたいから付いてきてくれ」というアドバイスを貰い、実行する場面も良かった。
初めてのお茶の帰り、サキちゃんとバイバイすしたあと、永くんは全速力で走って、サキが見えなくなったところで息を整えるところも良かった。



完全に母性がくすぐられた。



サキちゃんの母性爆発発言はすべて共感の嵐で、100いいねあげたい。

街でサキちゃんの友達に会ったときも、挨拶もできずに、離れた場所で俯いて立っている永くん。
サキちゃんの家(永くんが転がり込んで、光熱費も払わず一緒に住んでいる)に帰ってきて、

「ここが1番安全な場所だよ」

と笑うサキちゃん。


酔っ払って家に帰ってきて、明日忘れてくれるなら、手を繋ぎたい、という永くんに

「今までよく生きてこれたね」

と笑うサキちゃん。



二人の関係はお互いに依存し合っていて、不器用で、不格好で。
きっと、お互いの存在を「神様」だと思い合っている。



サキちゃんが、同級生から貰ってきたバイクを永くんは自分勝手な嫉妬から壊してしまう。
落ち込むサキちゃんに、安い自転車を買ってくる。サキちゃんの心の傷は、全く癒えていないのに、表面だけ処理して、騙し騙し過ごしてゆく。 


2人だけ、の世界なら、それでもいいのだ。

しかし、サキちゃんは、結婚をしていく地元の友達に焦り、家族の気持ちも考える。居酒屋で、売れている劇団の人や、元々演劇をしていた店長とも関わる。

けど、永くんの世界は、ずっと、サキちゃんだけだった。
サキちゃんは自分を神様だと思ってくれる。
自分以外の人から影響を受けるなんて、もってのほかで。
ディズニーランドで楽しんでいる彼女を見たくないから、ウォルト・ディズニーにすら、嫉妬してしまう。

自分が、彼女を楽しませることができる「唯一の存在」でないことが、悲しくて、でも、それが感情表現できずに、唯一表現できる「怒り」に変わってしまうのだ。


少しずつ、壊れていく2人の関係。

最後、永くんは変わらないから何も悪くない、変わったのは私だ、とサキちゃんは言う。この言葉は、本当に切ないな、と思う。


確かに、2人の関係がネガティブな方へ変わっていったのは、サキちゃんが原因なのだ。
とにかく永くんを甘やかしまくるサキちゃん。
人との距離感を適切に保てる人から見たら、


「なんでこんな男好きなの?」
「男見る目なさすぎだろ」
「そんなに男に尽くしたら、つけあがるに決まってる」


と言うだろう。


でも、自分がおかしいことなんて、分かってるけど、好きな気持ち、尽くしてしまう気持ちは、私はよく知っている感情だ。

「自分ではないとダメな人が好き」

と昔から思っていたが、自己肯定感の低さがそう思わせるのかもしれない。

この感情は、正しいとかおかしいとか、そういう判断軸に乗るものでも無いとも思う。しかし、周りがそれを許さないのだ。

2人だけの世界だったら成立する関係でも、
この世で2人だけで生きていくことは、不可能だと思い知らされた。




私はこの映画を観たあと、ますます松岡茉優(サキちゃん)が憑依してしまった。
ウェーブ状に髪を巻くのも上手くなってきた。

後輩に「今日さ、私、誰を意識してるかわかる?」と聞くパワハラもかました。

MAX気を遣われて、「石原さとみですか?」と回答されると、
それを聞いた近くの席にいたおじさんに、盛大に笑われた。








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