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初対面の男性とスシローを食べまくる会(ヒモネギ2)

前回までのあらすじ

30歳目前、恋活しすぎてマッチングアプリ芸人となった私は、結局恋愛より「可愛い年下のペットがほしい」という欲望の果てに辿り着く。
Noteで投げ銭してくれた大学生と会ったが、優秀なトリリンガル商社マンだった彼に尻込みし、近所の居酒屋で愚痴っていると、翌日居酒屋の店員さんから「おすすめの男」と連絡先が送られてきた・・・

7年くらい通っていたので、私の恋愛事情をよく知っている居酒屋の店員さんのおすすめの男。
LINEで、ぽんっと送られてきた連絡先をとりあえず友達追加しておく。

いや、でもいきなり連絡するのもな・・・と一瞬逡巡したものの、
共通の知り合いが誰もいないマッチングアプリより、1000倍くらい安全だな?と急に思い直し、
「はじめまして!(居酒屋名)常連のもぐです、可愛い年下の男の子にご飯を奢りたいんですけど、機会があればよろしくお願いします!」と文章の推敲もせずにサクッと送った。
ここまで数分で処理し、GWのはざまの平日の仕事に勤しんでいると、
是非お願いします、と連絡がきたので、「何か食べたいものありますか?」と食い気味に連絡をしてみた。
「回転寿司が食べたいです」と返ってきたので、10000いいねくらいあげたい気持ちだった。
若い男の子がモリモリと食べて皿を積み上げていく・・・いいじゃんいいじゃん、と思い、すぐに日程の調整をし、お互いアクセスの良いスシローをサクッと予約した。

少し早めに着いて、スシローで予約のQRコードでチェックインをしたあと、赤いソファに座って彼を待った。
お互い初対面のため、店員さんから送られてきた画質の悪い写真が唯一の頼りである。天パのひょろりと細い顔色の悪い男が、エレベーターから降りてきた。
おっ、可愛いじゃん、と心の中で歓喜しながら、
「〇〇さんですか?」と声をかけると、ヘラヘラとペコペコしながら自己紹介をしてくれた。

彼は私が通っている居酒屋の系列店で、学生時代バイトしていたという、25歳、社会人3年目の人だった。
当時29歳だった私からすると、もう可愛い赤ちゃんパンダに見えた。
出会ったときから、店員さん・常連客も含めて共通の知り合いが多く、安心感があり、寿司を食べながら色々な話をした。

鬼のようにマッチングアプリをしたこと、合コンを含め、半年で80人くらい会ったこと、30までに子供を産みたかった事、けどそれが無理だとわかったこと。ひとりで生きていくことを考えたら、急にフランスに行ってみたくなったこと。フランスに行くまで、可愛いペットが欲しいこと。

彼も色々な話をしてくれた。
学生時代のバイトのこと、今は、役所でコロナの対応をしている派遣社員であること、昔、派遣切りにあったこと、学生時代の借金があること、今の自分の状況で恋愛は難しいこと、安部公房が好きなこと。ベジタリアンの元カノの話。

「え、恋愛する気ないの?そしたら丁度いいじゃん。私のペットになってよ。たまにご飯食べようよ。ご馳走するから。」

私がそういうと、逆に良いんですか?と彼は目を輝かせた。
何か請求されないか、壺でも売られないか、宗教勧誘じゃないか、とても不安で、自分でも払える、かつ、オープンな場所である回転寿司を選んだ、と彼は言った。
確かに突然友人から「ペット探している友達いるんだけど、どう?」なんて言われたら怖すぎる。まじでよく来たな?と今でも思っている。

「性的関係は一切なし。面倒だからお互いに相手ができたら終わり。
ちゃんと書面で契約も交わそう!」

私はそういって、彼と握手をした。

そのあと、近所の居酒屋へ行くと、
常連客のみんながいて、「ペットになったんだ~」と彼を紹介すると、
「恋愛だと重いけど、ペットには向いている男だ」
とお墨付きをいただき、とても安心ができた。

結局その日は、17時に集合して、居酒屋で飲み、散歩してたら、終電を逃し、なか卯でうどん(小)を食べた。
本と音楽が好きな彼とは、一切話が絶えず、つまり初対面から8時間近く一緒にいても、足りないくらい、話していて楽しかった。

今思えば、それは恋愛としても相当、相性がよかったのだと思うけど、
恋愛スイッチを全面に閉じた私は全く気付いていなかった。

その翌日、会社の友人宅でたこ焼きパーティーをした私は
「ペットができたんだ~」とみんなに自慢していた。
みんな一瞬ドン引きしたあと、とても面白がっていた。

これから私は男に振り回されない!
パリジェンヌになるんだ!と強く誓いを立てた29歳の春だった。


つづく(多分)





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