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風よ、万里を翔けよ(著:田中芳樹)【読書紹介もせめて千理を説いたが、しかしそれにしては地響きがしなさすぎるな。天が地に。地が天に入れ替わってもおかしくはないものを】

田中芳樹先生は言わずとしれた銀河英雄伝説でブレイクした人ですが、
どちらかというと、中国歴史小説みたいなのが、本業に近い人らしいです。
なので中国歴史小説。長編一冊読切。

時は隋の時代。
隋と言えば、日本から遣隋使が派遣された時代ですが、
あの隋は、あの後、大変なことになってしまうのです。
知らなかったでしょ!?

長い南北朝の戦国時代を超えて、ようやく全国統一した隋。
国力も充実しまくり、これで平和な時代が来ると思いきや、

第2代皇帝、煬帝が、中国史上最悪クラスの暴君だったらしい。
煬帝というとあの小野妹子が謁見した相手ですな。
四大暴君。
(ちな他の3人は、始皇帝、朱元璋、毛沢東です)
隋はなんと!
第2代でいきなり滅亡するという((おったまげ))展開になります。

といっても、煬帝は、いわゆるどこから見ても暴君・・・というタイプではありません。
優秀な人物で才気煥発な秀才です。
中華歴代皇帝の中でも、並み以上に有能で視野が広い。

そんな人物が暴走したときこそ、事態が極度に悪化するのですね。
ヨーロッパでも、ナポレオン、ヒトラー、決して無能ではありません。
むしろ真逆。
だからこそ、現実をグリップできなくなった時が怖い。
なまじ出来てしまうからこそ、最悪の中の最悪に向かって突き進んでしまう。なんというか、逆説です。

というか、第2代でいきなり国を滅ぼした人って稀に見るんじゃないでしょうか?
(ドイツのウィルヘルム2世が近いような気がしますが)
歴史上にほとんどいません。
第2代ってのは、無難にやってれば、絶対失敗しないポジションなんですよ。にも関わらず。

隋から唐に移り変わるときの乱世は、短いですが、
人口が10分の1になるくらいの凄まじい乱世だったようで、
唐の初期は国力がだいぶ落ちてしまっていたようです。

そんな時代を舞台に、女性の武人、花木蘭を主人公にして、
その同僚たちを絡めながら書かれる時代小説。
と同時に、後の唐の第2代皇帝、李世民(中華最良の名君?)や、
乱世の梟雄(と言えばこいつ)李密なども、顔出し参戦してきます。
まあ顔出しエピソード程度ですが。

*中国の近年の映画だと、花木蘭は北魏の時代となっていますね。
まああの辺の時代で、伝説、伝承といった話のようです。
史実かどうかは微妙。
元ネタは何かあるんでしょうけど。
ディズニーでも「ムーラン」として映画化されていました。

女性ながら武人。しかも正体を隠しつつ。
どことなくサファイア姫感がしますが、これはあれの影響でしょうか?

女性の武人というのは長い歴史の中では結構います。
実在が確認されている人も多く、いるところにはいるので、まして乱世では不思議ではないかも。
田中芳樹先生の中華歴史小説は、なんとなく短編で終わってしまう話が多かったのですが、これは長編読み切りで、切りのいい終わり方をしているので、読後感が良かったのでした。

まあ、この人の本を読もうとする人は歴オタが多いので、
話がとっちらかっていてもそんなに不満を感じないかもしれんですが、
それは現実の歴史がとっちらかった話が多いからだと思います。
物語みたいな歴史の方がむしろ少数派。
・・・というか、そのはずなんですがね。

日本の近代史みたく3世代で起承転結がつく話は、むしろ珍しいんじゃないかと思います。たいていはだらだらと続くので、スポットだけ注視することになる。

超大河ドラマなら、起承転結がつく話はたくさんあるんですが、
とても読み切れない。(なんなら現在進行形だし)

こういう一冊で終わる話は貴重ですよ。

*タイトルのもやもや文章は「タイガーという子」に出てきたジュリアス・シーザーからの引用文なんですが、さて原本にそんな文章があるかどうか。翻訳だからね。

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