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読書・鑑賞記録

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読書とか作品鑑賞した時とかの記録、長めの語りしてるやつもあるよ
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記事一覧

生命体はなぜ眠るのか

「生命体はなぜ眠るのか」

 この問いをもってピノコニーの開拓クエストははじまり、この問いへの答えをもって終わる。最後まできちんと一本の軸で話が通っていて、本当に素晴らしかった。それゆえに、私も、ただ物語を読むだけで終わりたくないと思った。
 というわけで、ひさびさに、読み終えた物語について自分の言葉でまとめるということをやってみたいなと思う。こういうことをするのはかなり、ずいぶん、久しぶりなので

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劇団四季『ノートルダムの鐘』

2023/07/15 ソワレ

※全て現時点での私の主観
※ものすごいネタバレがあるので注意!

◇人物についてメモ(全員載せられてなくて申し訳ない)
【エスメラルダ】
・しなやかで体幹がしっかりしてて、見た目も中身も美しい……彼女が出てきた瞬間の、華やかさがすごくて、周りと全然違う、すごい人が出てきたなって思った。
・エスメラルダの人生、期待と絶望の狭間で揺れ動きながらも、自分であり続けて生き続

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2021年読書記録(13タイトル)

※手元のノートにある感想があまりに個人的すぎるため詳細は割愛。

「BANANA FISH ANOTHER STORY」
吉田秋生著
2021/02/27
・借りたもの。かなり良い。光の庭を読むことで向き合わなければならないものが増える。が、奥村英二の解像度がかなり上がる。

「ナイン・ストーリーズ」
J.D.サリンジャー著 野崎孝訳
2021/03/12
・サリンジャーを好きになってしまった本。

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「悲しみの秘義」

若松英輔著
2020/11/30

偶然書店で見かけて、帯の言葉のやさしさに惹かれて買ってしまった一冊。読んでみると、フランクルの夜と霧や宮沢賢治の詩など、私が好きな言葉たちばかり引用されていて驚いた。この本に書かれた言葉は本当にやさしさに満ちているので、心を落ち着けたい夜に読むとすごくいい。人生において、暗がりもかなしみも、それを持つことは不幸ではないと思えた。素敵な言葉たちに出会えてうれしかっ

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「家守綺譚」

梨木香歩著
2020/11/04

初めてこの本に書かれた文章に出会ってから数年経って、再び古本屋にて再会したので頭からきちんと読んでみることにした。景色、音、匂い、全て文章から湧き立つ。原風景を揺さぶられ、わからないものをわからないものとして受け入れる心意気のある世界観と、精神を養おうとする綿貫のあり方に脱帽した。こんなに素晴らしい本にこの年齢で出会えてよかった。若輩者にはとてもありがたく、なん

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「人間の土地」

サン=テグジュペリ著 堀口大學訳
2020/06/07

3年越しの再チャレンジでした。本当にいい本です。特に7章は星の王子さまと合わせて読むと解像度がめちゃめちゃ上がります。文章は難解で、まだまだ理解しきれていないところも多いですが、サン=テグジュペリが伝えてくれる景色が本当に素晴らしくて、空から見える世界はこうなのか、彼が見ている人間の本質はこういうものなのか、と思い巡らすことがとても楽しかっ

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「流浪の月」

凪良ゆう著
2020/04/13

本屋大賞受賞作、そしてどうやら、犯罪の話を扱っているらしいと聞いて、本屋に飛んでいって買いました。 自分の近くにいる人の笑顔や泣き顔が、違うものに見えてくるような感覚に襲われてしまって、読後は涙が一滴も出ず、ただひたすら空虚な想いで満たされているような気持ちです。 文章はきれいに整えられていて非常に読みやすく、作品のテーマとして通されている思想も極めて現代的だと

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「星の王子さま」

サン=テグジュペリ著 河野万里子訳
2020/03/06

サン=テグジュペリはちゃんと知っているのだけど、「人間の土地」しか読んだことがなくて、この歳になって初めて読みました。とても愛情に満ちた作品でした。砂漠で王子さまに会えたなら、「きみは大人がきらい?」って聞いてみたい。

「BANANA FISH」私は救われなくていい

「BANANA FISH」私は救われなくていい

◇はじめに 本記事はBANANA FISHという作品に出会った筆者が、最終話視聴から3ヶ月経った今、どうにかして気持ちを整理したいと思い立って書き始めたものである。言語化が下手な奴が苦しみながらどうにかこうにかやっているんだなという気持ちで見守っていただければ幸いである。

 また、どうしても作品についてはネタバレになってしまうと思うので、今見ているよ、とか、これから見るよ、という方は、くれぐれも

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「夜と霧」et lux in tenebris lucet

もういいかげん、生きることの意味を問うことをやめ、わたしたち自身が問いの前に立っていることを思い知るべきなのだ。生きることは日々、そして時々刻々、問いかけてくる。わたしたちはその問いに答えを迫られている。考えこんだり言辞を弄することによってではなく、ひとえに行動によって、適切な態度によって、正しい答えは出される。生きるとはつまり、生きることの問いに正しく答える義務、生きることが各人に課す課題を果た

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Disecting Neversista(後編)

※2020/05/16 追記

※本記事は、同人ノベルゲーム「図書室のネヴァジスタ」のネタバレを含みます。閲覧の際はお気をつけくださいませ。

⑨死生観
 死生観はとても大切なものだ。どういう風に生きたいだとか、何を大切にしたいだとか、死をどう定義したいだとか、そういう考えは、とても大切なものなのだ。なぜなら、いざというときに自分の根幹を、支えてくれるものだから。

 生きていく中で死について

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Disecting Neversista(中編)

※本記事は、同人ノベルゲーム「図書室のネヴァジスタ」のネタバレを多く含んでいます。閲覧の際はご注意くださいませ。

⑥ネヴァジスタがプレイヤーに与える傷
 心に傷を負う、という表現を、感想の中で書いていらっしゃる方がたくさんいる。

 わかる。すごいわかる。

 だから改めて、どういう傷を負うんだろう?ということについてちゃんと考えてみたいなと思う。主に私が思いついたのは以下の3点である。

 ま

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Disecting Neversista(前編)

※本記事は同人ノベルゲーム「図書室のネヴァジスタ」に関する感想とかエッセイのようなものです。私なりの大きな感情が込められています。

※内容はネタバレ祭りです。プレイ途中の方やこれからプレイ予定の方はこれを読まずに私の布教記事を読んでください(宣伝)。
→図書室のネヴァジスタについて

※個人の解釈です。思考の整理を目的とする自己満足の産物なので、そんなに大した話はしていないです。

※記事タ

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「春と修羅:序」孤独を抱えて生きること

なんべんさびしくないと云つたとこで
またさびしくなるのはきまつてゐる
けれどもここはこれでいいのだ
すべてさびしさと悲傷とを焚いて
ひとは透明な軌道をすすむ

宮沢賢治の詩集、『春と修羅』に記された詩の一節です。
孤独を抱えて生きていくことを肯定する彼の在り方に、強く心を打たれます。

ひとりっ子で病気をしがちだった自分は、昔から、1人で過ごす時間が圧倒的に長い人間でした。
実家で暮らして

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