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「アリスとテレスのまぼろし工場」の感想と「すずめの戸締り」との関連性(ネタバレあり)

岡田麿里監督とMAPPAさまありがとうございました。遅まきながら映画を拝見いたしました。今回は映画「アリスとテレスのまぼろし工場」を観て思ったことと「すずめの戸締り」との関連性を書いていきます。

「アリスとテレスのまぼろし工場」と「すずめの戸締り」のネタバレを含みますのでまだ観ていない人は先に映画を見てから記事を見てみてくださいね。


「アリスとテレスのまぼろし工場」の感想

こじらせ映画をよくまとめきれてるなぁ

嫌いだけど実は好き。好きだから嫌い。好きだから痛い。それぞれのキャラクターの内面の感情がいくつもの感情で折り重なっていたり、キャラクター自身も自分の感情がよくわかっていないところが中学生っぽい感じがでていてさらにリアリティがありましたが、母と娘で旦那もしくは父を取り合うなどなどこじらせてるぅーと思っちゃいました(笑)そしてキャラクターごとの内面感情を把握しつつシーンを作っていくにあたり、よくスタッフさんの間で情報を共有しつつこじらせ感情を伝わるように表現できたなと思いました。ふつうに映画を見ていけばわかるようには作られていますが、世界観も相まって映像の理解とキャラの整理がとっつきづらい方もいるかもしれません。個人的には主人公の正宗の父とおじさんがちょっととっつきづらかった。

岡田麿里監督が以前作っていたP.A.WORKSさんとの作品でも感情の機微をよくここまで繊細に表現できると思っていましたが、今回のMAPPAさんとのタッグでも最大限表現されていて感情揺さぶられる作品でした。意識的に作られたとは思うのですが、正宗と園部がトンネルに行くときに、正宗が園部に気を配ってないあたりが、あえて表現しないことで好意の有無を表しているなーと個人的に芸が細かいポイントでした。睦実と二人でトンネルに行っていたらもっと気にしてたはず。ほかシーンでも正宗がやけに睦実を目で追うシーンもありましたしね。

パラレルワールド側の世界

って自分は解釈しました。現実からパラレルワールドに向かって現実世界に戻るような作品は多くありますが、物語の主軸は常にパラレルワールド側になっています。BGM(るるるるるるるーるるるるーのメインテーマ?)と冬景色、変化のない世界も相まって、息が詰まってきそうな閉塞感を感じました。監督と世界観と舞台設定から「もう絶対おもしろいやつやん」って期待したのを覚えてます。

タイトルってアリストテレスからだったんですね

上映前にタイトルをもう一度自分の中に反芻し、アリスとテレスもしくはアリスとテレスに相当する人物が誰なのかが重要になるなーと思っていて、事前公開の映像から工場は分かりそうだと思って映画を見始めました。五実が出たあたりでAlice in Wonderland的に不思議世界のキャラとして五実=アリスと思って見ていて、ということは睦実=テレス??と思ったのですが、映画を観ているときにはぼんやり思った程度で終わりました。岡田麿里監督のインタビュー記事でタイトルについてなどありますので、ぜひ見てみてください。今回のインタビューではないのですが、他のインタビュー記事で視聴者にトラウマを残すくらい感情を揺さぶりたいという件の話が好きです(調べたのですが検索しきれず…)。

好きがわからない➡わかる

正宗の「俺の好きって気持ちは大嫌いって気持ちとすごく近くて…」というセリフ。なんか目で追っちゃうけどイライラするし、見たくないけど気になっちゃうみたいな自分の気持ちと行動の説明がつかないし、自分の気持ちもよくわからないみたいな部分が分かるーってなりました。自分が中学生くらいのときに見たら救われるような気持ちになれるだろうなと思えました。どうしたらいいのかわからない。けどそれでもいいんだと思えたかも。

変わらなかったことで変わったこと

おじさんのことですね。あとは原の告白、仙波のDJへの夢、佐上の影響力ですかね。不変の世界が続いたからこその心情の変化がおもしろい。今の世の中でも今のままの状況で静止したら、今だからこそしないと!って気持ちになるかもです。

おじいちゃん!?

上映中でいちばんびっくりしました。脱線しちゃったけど、無事そうでよかった。ポイントポイントで笑える要素がちょっとあるんだよなー。

愛された製鉄所

上映中でいちばん意表を突かれたところでした。劇中ではおそらく現実世界では製鉄所の大爆発で工場で働いていた方たちは巻き込まれて事故死していたような描写やセリフがあったのですが、現実世界での工場は張り紙やペイントで愛されていた場所だったことがわかり、事故があった忌まわしい場所という表現がなかったのが意外に思えました。

「すずめの戸締り」との関連性

原発

なんでも関連付けるのはよくないとも思いますが、映画を観終わった後に思えたのが「すずめの戸締り」との関連と製鉄所と原発のモチーフについてでした。事故があった製鉄所そして生まれた世界。そう思うとやさしい気持ちがベースにあって作られた映画なのだなと思えました。新海誠監督とは違うアプローチでの表現でした。物語は創作だったとしても、両作品ともそうであったかもしれない可能性もあります。まだ世の中のことすべてがわかっているわけではないですからね。岡田麿里監督と新海誠監督の二人ともが作品のテーマの要因として土地が見る夢や土地を悼むという話が出ており、共通する着眼点だと思えました。

最後に

上映中はキャラクターの熱が伝わってくるというか、同じ気持ちになってみれるというか、のめりこんで観れます。キスシーンも恥ずかしかったですが、長いとは感じませんでした(笑)はじめって歯がぶつかってましたよね!?Youtubeで一番初めの超特報を見返していたのですが、インタビューでもあったようにカットシーンで使われなかったと思われるシーンがいくつかありますねー。どんなシーンだったのか気になる…。っていうか神機狼の色も違う!まぼろしの世界ならではだったのかもしれませんが、崇め奉る対象が製鉄所内っていう人工物だったのがアンバランスで面白かったです。そこに住んでた五実や切り崩した山を奉るという意味だったのかもしれませんが。いちばん好きなシーンは五実が製鉄所内でクレーン?に登り、大声で叫ぶシーンですね。劇中で大きな開放感をはじめて感じたからかも??

多少強引に時間を作って映画館に観に行ったのですが、観れてほんとうによかったです。まんまるの目と好奇心と希望のシーンが割と刺さりました。制作していただいたみなさま楽しく拝見させていただきました!ありがとうございます!

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