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フランスのシャンパン業界に見る移民労働の現状


 最近、ヨーロッパの移民問題を度々取り上げてきています。7月のイギリスで起こった殺人事件をきっかけに移民に反対するデモが暴徒化したこと、8月にはドイツで不法移民が起こした殺人事件で、その後国境警備を強化するに至ったこと、9月にはフランスで国外退去命令が出ている人物が殺人事件を起こし、国外退去の徹底を求める声が強まってきていることなどを記事にしてきました。

フランスのシャンパン業界について

 今回解説するのはフランスのシャンパン業界についてです。この業界は移民を低賃金で働かせているとか、人身売買の疑いがあるとか、ブラック企業が非常に多いと言われている業界です。

労働環境の問題

 このシャンパン業界が全てブラック企業だとか、そういうことを言うつもりはありません。そもそも農業というのは非常に過酷な作業を伴う、大変な仕事であるのは間違いありません。
 しかし、フランスの農業分野で移民がたくさん働いていて、しばしば問題が起こってきたというのもまた事実としてあります。

シャンパンの定義とシャンパーニュ地方

 フランスのシャンパン業界を整理しましょう。シャンパンというのはスパークリングワインのことですが、実はシャンパンと正式に呼んでいいのは、パリの東側のシャンパーニュ地方というところで生産されたものだけだということです。
 この地域はシャンパンの生産が盛んで、たくさんの農場でたくさんのシャンパンが生産されています。

出所)「WineLive.net」

2023年の猛暑と労働環境

 これまでにも度々労働環境が問題になってきているのですが、最近この問題に再び注目が集まるようになったきっかけが2023年のことです。2023年、ヨーロッパは猛暑に見舞われ、ブドウの成熟が例年よりも早く進んでしまい、8月の一番暑い時期に収穫をせざるを得なくなりました。
 ブドウの収穫は全部手作業で行うそうですが、猛暑の中での作業で熱中症で4人が命を落としました。この時に亡くなった4人というのが移民でした。

劣悪な居住環境と当局の調査

 その後、移民の人たちが劣悪な環境に住まされていたことが分かり、当局が調査に乗り出しました。一部、人間が生活するのに適さないような居住施設もあり、その後閉鎖されたところもあったということです。
 この業界は昔から労働者の扱いがひどいといった見方がありましたが、この件をきっかけに再び注目されることとなりました。
 この業界で働く労働者の多くが移民です。寝るところと食べるものを提供してくれるという約束できたものの、長時間労働は当たり前で、給料が契約通りに払われなかったり、衛生環境の悪いところに住まされたり、食べ物が与えられなかったりといったことが以前から指摘されている業界です。

人身売買の疑いと捜査

 2023年の事件をきっかけに、当局は人身売買の疑いのある2件の捜査を開始しました。そのうち1件は2025年に業者を法廷に召喚する予定になっていて、もう1件は現在も調査中だとされています。
 これだけたくさんの移民が関わっている業界において、本当に疑わしいのは2件だけなのでしょうか。そう考えてしまうのは私だけではないでしょう。
 これはフランスに限った話ではなく、イタリアでも最近不法に移民を斡旋した業者が摘発されています。9月にはイギリスのスターマー首相がイタリアのメローニ首相と会って、不法移民を斡旋するブローカーやマフィアの取り締まりを強化することなどを確認しています。

シャンパン生産の規模と移民労働者

 フランス東部においてシャンパンの生産を行っている畑の面積は3万4,000ヘクタール、東京ドームで言うと8,000個分ぐらいになると思いますが、それだけの面積があって、12万人以上が季節労働者として働いているそうです。そのうちの多くが移民だとされています。
 移民の人たちの低い賃金での労働、ブラックな労働環境によって安いワインの生産が支えられていると言っても過言ではないでしょう。

安価なワインの流入とフランス産ワインの競争

 安いワインというのは言い方が良くないかもしれませんが、最近はフランスにもスペイン産のワインなど安いワインが海外から流入していて、フランス産のワインが売れなくなっていると言われています。
 スペイン産のワインを国内に入れるなとワイン業者がデモを起こしたりもしています。

移民労働とフランス社会の現状

 そのようなフランスのワイン業界ですから、少しでも労働者に払う賃金を安く抑えないと、海外から輸入されてくる安価なワインに対抗できません。この業界は低賃金の移民労働に支えられている面があります。
 今フランス社会では移民に対して否定的な意見が増えてきていて、そうしたことを主張している政党が支持を伸ばしてきていますが、フランス社会の中では移民によって支えられている分野もあるということです。

シャンパン業界の現状と課題

 このシャンパン業界、ワインも含めて、ここ最近厳しい状況が続いています。というのは、若者を含めてそもそもお酒を飲まなくなっていると言われています。そして、安価なスペイン産のワインなどが入ってきて、フランス産が選ばれなくなっているとも言われています。

移民問題とシャンパン業界の未来

 移民問題、そして人身売買の疑いなどのイメージの悪化は、シャンパン業界をさらに苦しい状況に追い込んでいると考えられます。
 EU域内で国境がなくなり、フランスにも安価なワインがたくさん入ってきて、自国の伝統であるシャンパンやワイン業界が打撃を受ける。
 
シャンパンやワイン業界は、国境のないEUという枠組みの中で、移民を使って安価な労働力を使うことで対応してきた。こうした分野も今、社会から厳しい目が向けられていると言えるでしょう。

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いただいたコメントの振り返りと深堀り

 また、ヨーロッパの移民問題や欧州経済のことも、もう少し深掘りした内容を発信していきたいと思っています。今後ともよろしくお願いいたします。


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