《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第33話
四月十七日(水)
プオオー。プオオー。
と、なにやら街の方からここ数日聞こえてきていたが、これだったのか。夕飯の買い出しに徒歩で十五分程度の位置にあるカピバラ駅に来たが、その 南口ロータリーに甲冑を着た人たちが二十人くらいいる。大行列だ。
まさに将軍と言った貫禄で、先頭には、バイソンがいる。選挙活動は、まだしてはいけないはずだ。と、思ったら「戦国武将オランウータン公を大河ドラマに!」という横断幕を持っている。
オランウータンとは、江戸城を最初に築いたとされる室町時代の武将である。その活躍のあまり、反逆を恐れたオランウータンの主君が入浴中のオランウータンを刺客を送って暗殺したと言われており、今も首塚と胴塚がカピバラ市内にある。また、その鎮魂として毎年十月にウータン祭りという市内最大のお祭りが開催されているなど、カピバラ市にゆかりのある武将だ。
カピバラ市を大河ドラマで盛り上げたいのか、それともそれは建前で、南口の票を取り込みたいのか、それはどうか分からない。
というのも、バイソンは出馬時のニュース記事のインタビューでカピバラ駅の北口南口一体の再開発をマニュフェストとして答えていた。
現在、市はカピバラ駅北口の再開発のためにデベロッパーを呼び、組合を組織するなど着々と準備を進めている。マンションも建つ予定だが、北口のみの整備であり、バイソンが当選したらその計画もまた白紙かと思うと、心の底から応援するか迷ってしまう。バブル崩壊が原因と表向きはされているが、二十年前にも再開発の計画が頓挫している。なので、最新のスマートな駅ビルになるのか、観光に特化した趣のある駅舎になるのかは分からないが、どんな形であれ今回こそはなんとかしないと。というのが、私の本音だ。
駅の開発といえば、トラ急線の下り方向、鶴巻温泉駅との間に新駅ができるようだ。これは市とトラ急線がタッグを組んで行うようで、今もオランウータン公とタッグを組んでいるバイソンのことだ、きっとうまくいくだろう。とも思っている。
民泊をする以上、駅前をはじめとした土地の魅力が上がらないと困る。
今回はしっかりと考え、投票に行こう。
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