《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第17話
三月三十一日(日)
「もし温泉だったら、工事費2億円が浮くくらいの大当たりじゃね。」
いつもいっつも肯定してくれる、サッカー少年団からの付き合いのビーバーと、隣町である平塚市のスーパー銭湯に来た。
「湘南天然温泉 敷地内地下1500mから湧出する源泉は、化石海水に分類されます。」
と、湯上がりに廊下の壁に貼られたポスターを見て、すぐさまスマホで温泉掘削工事の地下1500mまで掘った際の施工金額を調べたビーバーは、その金額を言ってくれた。
ビーバーは小学生の頃からいつもポジティブで、チームのスタイルであるスマイルフットボールを一番に体現していた。しかし、いざ試合となると、小柄な体格だったのにプレーは泥臭く、ボランチとして相手の攻撃の流れを止めることが得意な選手だった。
小学校の硬いグラウンドは砂埃がよく舞う。
センターバックだった自分がいいプレーをすると、その都度、拍手しながら笑顔を見せてきたが、前歯にも砂が、びっしりこびりついていて、何だかよしてくれよ。と思っていた。
スーパー銭湯を出ると、近くのサッカースタジアムから試合前のアップ中の選手を讃えるチャントが聞こえてきた。子供の頃はマウンテンバイクだったが、今は車である。最近は、どうせ駐車場代を払うのならばと、スタジアム近くのスーパー銭湯に車を停めて、一風呂浴びてから観戦する。今シーズンこそは熱いプレーを安心して見たい。降格争いのヒヤヒヤは毎年のことで、もう懲り懲りだ。
み!ど!り!と、あーおーの!ドドドン!
勇者!湘南!ドンドンドドドン!
と聞こえてきたが、となるとこれもまたpH10程度のアルカリ性なのか。
切り替えろ切り替えろ。
今日はサッカーに集中だ。
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