《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第6話
三月二十日(水)
ジンベエザメは七十過ぎの土木会社社長だ。
時折電話で手配をしているが今は母屋の縁側でぼーっとしている。シミだらけの肌が少し赤みを帯びているのはぬるま湯を被ったせいだが、セメントまみれで仕事してきた職人の肌だ。痛いそぶりは見せない。
モグラは以前、土木工事の現場監督をしていたようで、そこでモグラの下請け業者の親方として職人たちを束ねていたのがジンベエザメだったらしい。モグラには酷い扱いを受けたと言っているが、スナックに行くような仲だ。戦友というところ