《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第14話
三月二十八日(木)
モグラに物語の続きを語って欲しくなり、ジンベエザメとお店に行ったが、研修のため不在だと従業員の若い女の子が教えてくれた。一週間くらい不在となるらしい。雇われ店長が何の研修だろう。研修とはまたいい言葉を使ったものだが、セミナーと言い換えればなんだか聞こえが悪い。若い女の子も危なっかしくて詳しい話は聞かなかったようだ。
二人の女の子がついてくれた。
モグラがいない時のお店は初めてなのか、ジンベエザメはとても上機嫌で、女の子に「へ」の話をしている。
ジンベエザメは謎かけを始めた。
体で表すとヘソが一なら首の付け根が七のもんがある。と、指を体に差して言った。四は、みぞおちだからか読むのを飛ばした。では八と九はどこだと思う。と聞き、上半身をカウンターから乗り出して女の子に触らせていた。
触られるたびに「そこは違うそこは違う」と、アウアウ言っている。
怒涛の二週間だった。今日くらいは良いだろう。
女の子が酒のおかわりを取りに行った隙に、ジンベエザメが、ざっと教えてくれたが、明日から陶器の管に新たに管を接続して、ぬるま湯の排水ルートを作るらしい。
また忙しくなる。
帰り道、ジンベエザメは青森の漁師の家の末っ子で、地元である八戸は、ちょうど左脇のあばらの下あたりなんだと言っていた。
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