《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第2話
三月十六日(土)
調査開始。
地盤の調査は一週間程度かかる予定だが、玉石混じりの土の層が1m、関東ローム層という富士山の噴火でできた古い火山灰の層が2mの計3mを越えれば筒はスルスルと入っていくようだ。
この調査は、地盤の深さごとの強さを可視化した土質柱状図という図表を作るためにやる。
今説明した内容を図表にするとこんな形だ。
モグラが言っていたが、この調査は図表を作りながら、強さが50になる硬い地盤に辿り着くまで調べるらしい。
このあたりの地盤は地面から深さ10m程度まで、強さの数値が3未満で弱いだろうから、早く掘れるだろうとも言っていた。
ジンベエザメは、あまりの作業の早さに笑顔を隠しきれていない。硬い地盤に辿り着くのは、時間の問題のようで、早く終わっても一週間分の工賃は見積どおり請求するのだろう。
どうやら、やられたようだ。
ここは神奈川県カピバラ市イグアナ地区。地理学でいうところのカピバラ台地の南端付近だ。カピバラ台地は縄文時代の海岸線とも言われており、地盤は良いとされている。
ただここは、残念なことに南端よりもさらに外れの海の中。イグアナ地区の田んぼが広がる平地部分一帯は海だったとされている。気候が寒冷化したことに伴い海面は低下。奈良時代あたりにようやく土地ができたらしく、当時の海岸線は、今よりずっと入り組んでいて、三ノ宮比々多神社、四ノ宮前鳥神社、一国一社平塚八幡宮が海岸線だった。なんて言う人もいる。
なんにせよ地盤は悪い。
地盤が悪いことを良いことと捉えているのはジンベエザメだけかと思いきや、浮かない顔をしている。
想定よりも早く進んだはいいが、なかなか硬い地盤に辿り着かない。
正しくはロッドという名の筒が足りなくなってしまったから手配する。と言われた。
この日もまた、まだ日の明るい時間に作業を終了したジンベエザメは、モグラと街のスナックに行くらしい。
やられた。
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