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[修行日記③] 修行の決意

 震災後しばらくすると通常の学生生活に戻りました。仏教学部禅学科では主に坐禅・曹洞宗の経典について学んでいました。当然、曹洞宗寺院の息子である友人も多く、「お寺の長男」としての相談話につきあうこともありました。その中でも「本山での修行」は彼らにとって一生に一度といっていいほどの大問題です。実家のお寺を継いでいくには絶対に避けては通れない難関なのです。大問題・難関と書いてはいますが、なかなか一般の方にはご理解いただけないかと思います。これから、私の永平寺修行時代をいくつか紹介する事でいくらかは分かっていただけるのではないでしょうか。

 学生生活を送るなか、菩提寺である長泉寺の結城俊道老師からご縁をいただき弟子にしていただきました。これを得度といい、いわゆる出家をしたことになります。仏教を学び、友人達の姿を見ているうちに自分もとことん仏教を突き詰めたいと思うようになりました。私はお坊さんを目指す決心をしたのです。

 曹洞宗は両本山と言って横浜市鶴見の総持寺、福井県の永平寺が本山になります。私は、師匠が修行された永平寺を修行の場として決め、修行に入る準備を始めました。春上山(2月中旬~3月下旬に修行に入る)の場合12月頃に2泊3日の日程で永平寺での事前研修があり、修行に入る際の持ち物や、覚えておかなければならない偈文を、すでに永平寺での修行を終えられた方から丁寧に教えていただきました。その後は永平寺へ向かう3月6日まで様々な準備に追われました。自分の持ち物にはすべてマジックで名前を書きます。真っ白な下着の一枚一枚まで︙まるで小学校一年生です。また、先輩から着物や衣の着方、扱い方などを教えてもらいましたが、お寺で生まれ育ったわけではないのですべてが難しく思えました。上山が近づいた数日はもうしばらく口にすることができない肉・魚を感慨深くいただきました。食べ納めでおいしいお寿司やとんかつを食べた時のあの気持ちは今も忘れられません。

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そして平成26年3月、私は師匠と父に見送られ永平寺の修行へと向かいました。

(第四回に続く)

齊藤崇広
平成2年新庄市生まれ。
曹洞宗大本山永平寺での修行を経て、現在は横浜の寳袋寺で納所中。

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