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【MofuマガNo.1】FRBウォラー理事の発言で考える利下げ局面

割引あり

◆疑問点はFRBウォラー理事の発言

28日の講演で、FRBのウォラー理事が利下げについて触れました。これは発言部分の中から一部取り上げたものになります。

「インフレ減速が、あと3カ月、4カ月、5カ月と、数カ月続くようなら、単にインフレ減速という理由で、政策金利を下げ始めることが出来る」

この発言を受けて市場は大きく反応しました

  • 米長期金利は4.3%台まで低下

  • 為替は1ドル=147円台まで円高・ドル安に

  • 米国株も利下げ期待から上昇

利下げには慎重だった、タカ派のウォラー理事が発言したことも大きかったと思います。

それでは、何故ウォラー理事は利下げについて触れたのでしょう?

市場では、利下げについて発言があると考えている人はほとんどいませんでした。

その結果、市場はそのサプライズに大きく反応したわけです。

そして、ウォラー理事も反応があることは、当然分かっていたはずです。

それを疑問に思った私は、数日の間この発言について色々調べてみました。

今回の記事は、その調査をまとめて発言の意図を考えるものになります。

まずは、結論から言いましょう。発言の意図は

単純に利下げをする準備をしたかったから

拍子抜けかもしれませんが、おそらくそれが一番の理由でしょう。

私はまだまだ利下げには早いと考えていたので、この発言には何か深い意図があると勘繰りました。

しかし、調べてみると意外とそうでもないことが分かってきたんです。

◆FRBの目標とは?

最初に、基本になるFRBの目標を確認します。

それは『雇用の最大化』と『物価の安定』の2つです。

つまり、失業率を増やさないようにしながら、物価を上げすぎないように、米国の経済をコントロールするのがFRBの目的なわけです。

これが所謂、軟着陸(ソフトランディング)と呼ばれるものですね。

それを意識したうえで、まずは雇用統計を確認していきます。

10月の失業率は3.9%となっていて、市場の予想の3.8%よりも増える結果になりました。

FRBが利上げを始めた2022年3月から、失業率は3.4%-3.7%の間を推移していました。

自然失業率とされる長期見通しの失業率は4.0%なので、失業率は利下げを意識してもおかしくない数字になっていると考えます。

次は、もう1つの物価についてです。

FRBはインフレ率の目標を2%としています。

その目安になる代表的な物価指数には、CPI(消費者物価指数)とPCE(個人消費支出)物価指数があります。

CPIをよく聞く方が多いかもしれませんが、FRBが重要にしているのはPCEです。

10月のPCE物価指数総合で3.0%、エネルギーと食料を除いたコア指数でも3.5%となっています。

共にインフレ率が落ち着いてきて目標の2%に近づいていますが、それでも1%離れてるのは大きいだろうと個人的に感じていました

しかし、利下げ局面は意外と近づいていたんです。

◆『モノ』と『サービス』のインフレ


それを調べるために、PCEを『モノ』と『サービス』で分けて考えてみます。

モノ』とは食品や、日用品等が挙げられます。

一方、『サービス』は住宅(家賃)に外食、レジャー等になります。

ここで重要なのは、「モノ」のインフレ率は落ち着いてきているということです

それに加えて、10月から学生ローンの返済も再開されました。

米国の個人消費はこれから落ち込んでくるかもしれません。

個人消費米国のGDPの7割を占めているので、もし落ち込めば利下げを考えてもおかしくないといえます。

問題なのは「サービス」です。インフレ率は4%を超えています

インフレ率が高い要因は住宅賃金が多くを占めています。

住宅の価格が上昇して家賃が上がることや、人手不足で平均時給がどんどん上がることも、インフレ率に関わってくるということです。

一見、まだまだ引き締めが必要そうですが、実は意外と楽観的な意見もあります。

賃金は鈍化傾向にあるデータや、仮に増えても個人消費を支えてくれるので問題ないというものです。

しかし、賃金は良いにしても住宅はどうなんでしょう?

気になった私は米国の住宅業界について調べました。

すると、3つの問題点が見つかりました。

◆米住宅業界における問題点

それは、『急激な金利上昇による中古住宅の減少』『コスト増による供給減』『人口増』です。

2022年3月からFRBは急激な利上げを行います。

住宅ローンは7.4%と2年で約2.3倍となりました

その結果、安い住宅ローンの家を手放す人が激減したのです。

米国の住宅販売の9割は中古住宅なので、その影響は大きく出ました。

そして、資材のコストが増えて新築住宅の在庫も減っています。

中古も新築も住宅が減るなかで、人口増により家を求める人は増えています。

それにより、住宅ローンが上がっているのに、住宅の価格が上がるという不思議なことが起きています

一般的に住宅の価格が上がれば、家賃もあがります。

これ以上金利上げても家賃下がる気配ないし、これもう詰んでないか?

調べれば調べるほどそう感じる自分がいました。

一応、このまま家賃が落ち着くというデータもあるみたいですが、私自身あまり納得が出来ません。

そんな中、ある記事を見つけて1つの仮説が生まれました。

なるほど、これなら利下げを考えて発言するかも。

そう考えた仮説がこちらです。


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