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文系高校生が頑張れば理解できる相対性理論の話をしよう。

前回に引き続き、今日は相対性理論の話をしよう。

僕は物理の専門家でもないし、学校の先生でもない。ただまあ、文系の先輩に相対性理論の話をして、「へえ、面白いね」って言われたという実績はある。その実績だけで今日は記事を書く。

この記事では、なるべく丁寧に、誤魔化さずに、正しく書くことを心がける。数学を減らした科学にありがちな、「うるせえ!とにかくこうなるんだよ!!」というような押し付けはやめて、順を追って丁寧に説明するつもりだ。

そしたら長くなっちゃったから目次置いておきます。時空が歪むところだけ読みたい人は、「本題」ってところだけ読んでね。


相対性理論の「相対性」とは何か

相対性理論。英語ではTheory of relativity。一体何が「相対性」なのだろうか。まずはその話から始めることにしよう。

物理の世界で相対性というと、「動いていても物理法則が変わらない」ということを意味する。

どういうことか。

よく挙げられる例として、新幹線の車内がある。走っている新幹線の車内では、普段僕たちが地面の上で生活している時と同じ物理現象が起きる。ちゃんと歩けるし、真上に投げたものは真下に落ちてくる。これが相対性である。

ここで、鋭い理系の人なら「この例は厳密には間違っています!」と言ってくれるかもしれない。

「この例は正しくありません」
「なぜなら、どちらも厳密には慣性系ではないからです!!」


ちょっと賢すぎるなあ。


ここからは、「慣性系とは何か」、「慣性系じゃないと何がまずいのか」を順に説明しよう。


まずは慣性系について。

空気抵抗も、重力も、何もないまっさらな世界を想像してほしい。

そこに一つのボールを持っていき、そっと手を離したとする。

ボールはどうなるだろうか。

物理学の答えは、「その場所にとどまり続ける」だ。

では、その世界でボールを投げてみたら?

物理学の答えは、「手を離したときのスピードでまっすぐ飛び続ける」だ。

こんな感じで、「そっとしておけば物体は運動を変えない」という性質のことを「慣性」という。そして、慣性が存在する世界を「慣性系」という。

実は慣性系じゃない世界も存在する。

さっきの何もない世界にボールをそっと離した時、自分の足場(足場はあったんかい)だけが後ろ向きにすーっと加速していったらどうだろうか。

他に何もない世界では、手を離しただけのボールが前向きにスーッと加速していったように見える。これでは慣性が存在しているとは言えない。

このように、ここで何度も使っている「世界」という言葉は、あくまで客観的なものではなく、主観的なものだ。僕の目線が移動することは、物体が目線と逆方向に移動していることと同じ。そう、物理学は考える。

目線が移動すれば慣性系ではないのか、というとそうでもない。僕の足場が一定速度、一定方向にスーッと動くのであれば、ボールは「手を離したときの速度でまっすぐ飛び続ける」を満たす。僕の目線も慣性に従って運動しているなら、僕から見える世界も慣性系である。


つまり、だ。さっきの新幹線の例に戻ると、新幹線に乗った人の目から見る世界は慣性系でないということになる。

今ならわかるんじゃないかな。

新幹線は加速するし、曲がるし、揺れる。これじゃ慣性系とは言えないよね。あと、地上に立ってるだけでも地球は太陽の周りを回ってるし、自転もしてるし、慣性系とは言えない。


じゃあ、なんで慣性系じゃないと問題なんだろう。

これはもう、さっき慣性系の説明の時に言ったことがほぼそのまま答えだ。手を離しただけのボールがぐんぐんと加速してしまったら物理法則はおかしくなってしまう。


なるほど、確かに新幹線の中は慣性系じゃないし、慣性系じゃなかったら物理法則が異なる形になってしまうから、「新幹線の例は正しくない」と言ってくれたんだね。

うーん。98点!

君が高校生なら100点でいい。だけど、もし君が理系大学生なら30点くらいかもしれない。

実は、慣性系じゃなくても物理法則の形は壊れない。

「慣性系なら物理法則の形は壊れない」というのはニュートン力学という伝統的な物理学の真実だ。「ガリレイの相対性原理」という立派な名前がついている。あの人が言ってくれたのはこのことだろう。

でも、実は慣性系じゃなくても物理法則の形は壊れない。これを、「一般相対性原理」という。そう、一般相対性理論で出てくる言葉だ。難しいからここでは説明しない。

ちなみに、「ガリレイの相対性原理」の説明では、一部の物理法則は壊れてしまう。これをうまいこと辻褄合わせたのがこれまたアインシュタインで、こっちを「特殊相対性原理」という。

アインシュタインが相対性理論を考えるまでの物理学では、「慣性系では物理法則は変化しない」というガリレイの相対性原理がとても大切にされていた。(今もされてる)

アインシュタインは「物理法則が変化しない」ということを絶対の条件にして考えた結果相対性理論に辿り着いた。だからこの理論は相対性理論っていう名前になっている。



ちょっと話が長くなったね。

とりあえず今覚えて欲しいのは、慣性系という言葉だ。

そっとしておけば運動が変わらないという「慣性」を持っている世界のこと。

今日ここから話す相対性理論は、話を慣性系に限って話そうと思う。慣性系に限った相対性理論のことを「特殊相対性理論」という。何が特殊って、慣性系だけの話してるから特殊なの。一般相対性理論はこれよりもうちょっっっっと難しい。


特殊相対性理論の2つの仮定

さて、特殊相対性理論には二つの仮定がある。

その仮定とは、

「別の慣性系でも物理法則の形が変化しない」
「光の速度は一定」

だ。

慣性系云々はさっき話したとして、「光の速度の話なんてしてないぞ」という声が聞こえてきそうだ。

まずは、光の速度が一定という仮定はどこからきたのかを説明しよう。


端的に言って仕舞えば、実験事実だ。

かつて、「光は粒子なのか波なのか」という議論がなされていた。

昔の物理学者たちは考えた。光が波だとして、一体何を振動させているんだろう。

水面に石を落とした時に広がる波は、水を振動させている。音は、空気を振動させている。じゃあ光は?

物理学者たちは、とりあえず名前のわからないそれに「エーテル」と名前をつけた。エーテルとはギリシャ語で「上空の澄んだ空気」を意味する。なかなかいい名前じゃない?宇宙の始まりに「でっかいバン!!」って名前をつけたのの次くらいに好きだ。

ちなみに、エーテルという名前はバネの「フックの法則」で有名なロバート・フックによって名付けられた。

太陽の光が地球まで届くことを考えると、エーテルは宇宙に満ちているはずだ。その中を地球が動いている。ということは、地球は「エーテルの風」を受けるはずだ。

風を受ければ、光の速度は変化するはず。音も、風が吹いているのなら風上には遅く、風下に早く伝わる。だって振動している空気そのものが風下に向かって動いているんだから。

そして、光の速度を計測するという実験が行われるようになっていった。


様々な実験が行われたけど、一番有名なのはマイケルソン・モーリーの実験だろうか。気になった人は調べてみて欲しい。

とにかく、実験の結果、「エーテルの風なんて存在しなさそうだ」ということがわかった。そしてそれと同時に、「光の速度は一定そうだ」ということもわかった。

アインシュタインはこれを採用したわけだ。



本題

ここまでのまとめ

  • 「慣性」とは、そっとしておけば物体の運動は変化しないという性質

  • 「慣性系」とは、物体が慣性を持つ世界

  • 「ガリレイの相対性原理」とは、慣性系なら物理法則は変化しないという原理

  • 「特殊相対性理論」とは、ガリレイの考え方を修正して、本当に「慣性系なら物理法則は変化しない」を実現させた理論

  • 「一般相対性理論」とは、「実は慣性系じゃなくても物理法則は変化しない」を説明した理論

  • 以降の解説は特殊相対性理論の一部


さて、前置きが長くなってしまった。

そろそろ時空を歪ませよう。

まずは時間が遅れるところから。


とんでもなく遠いところにあるライトから光をピカッと発射し、1秒後に僕が照らされるとしよう。そしてもう一つ、同じようにライトから発射した光が1秒後にカカシを照らす装置を作った。

この装置をロケットに積み込み、飛ばしてみよう。そして、二つのライトのスイッチを同時にオン!!

するとどうなるだろうか。

まあ、こうなる。

注目して欲しいのは、ロケットの中では光が斜めに進んでいるということだ。カカシをめがけて下向きに発射された光は、ロケットの左方向へのスピードの影響を受けて斜めに進むように見える。

これに違和感がある人は、電車の中でジャンプする人を外から眺めているのを想像してみてほしい。電車の中の人がジャンプした時、外から見ると電車ごと進んでいってしまって着地の瞬間なんか見えないだろう。この時、その人はまっすぐジャンプしていても、外から見ると電車のスピードで横向きにも移動している。それと同じだ。


さて、斜めに進んでいるということは、まっすぐ進むよりも遠いということだ。

遠い距離を光が進む。そして光の速度は一定。もうお分かりですね?

光が僕に到着した時、まだカカシには光が到着していない!

僕のところでは1秒経ったのに、ロケットの中では1秒がまだ経過していないのだ。

つまり、時間が遅れているということだ!!


どのくらい遅れるかは、三平方の定理が出来れば計算できる。斜めに進む分遅くなっているんだから、まあ計算は各自で。


時間が遅れる仕組みはわかっただろうか。結構単純だったでしょ?


次は長さを歪めよう。速く動く物体の長さは縮む。

下の図のような固定した物差しの上を物体が滑ってくるとして、自分は物差しの目盛がちょうど0の真ん中に立っているとする。

そして物体のちょうど真ん中についた印が自分の目の前、つまり真ん中の目盛と一致した時、物体の両端を見る。その両側の目盛を足し合わせると物体の長さがわかるはずだ。

しかしここでも問題になるのは光の速さだ。

物体がちょうど真ん中に来た時に両端を見るということは、両端からの光は物体が真ん中にくる前に発射されていないといけない。発射されてから僕の目に飛んでくるまでに時間がかかるからだ。

左側の端からの光はより0に近いところにいる時に発射されているはずだし、右側の端からの光はより0に遠いところにいる時に発射されているはずだ。

近いところにいるということは、あまり早めに光を発射しておく必要がない。すぐに僕の目に届くからだ。

でも、遠いところにいるときは、もっと早く光を発射しておかないといけない。

つまり、物体がちょうど真ん中に来た時に僕の目に入る光のうち、右側の端からでた光の方が左側の端から出た光より先に発射されたということになる。


そう、止まった状態で測るより長く見えるのだ。


さて、これにて僕から見た長さが測れた。

でも、物体と一緒に動いている人から見ると、物体は止まって見える。だからそいつは「いや、もっと短いです」と言ってくるはずだ。

僕はこう思う。

「動いてる人から見ると物体って縮んで見えるんだ」


これが長さが縮む仕組みだ。

この説明だと、「物体は実際には縮んでいない」「長さが縮むというのは計り方の問題だ」というのがよく伝わると思う。

そうなんだよ。長さが縮むと言っても物体が圧縮されるわけじゃない。ただ、そう見えるってだけだ。


はい、これで時空が歪んだ。


最後に、質量を変化させよう。速く動く物体の質量は重く見える。

ここでの説明には一個だけ方程式を使わせて欲しい。ニュートンの運動方程式ってやつだ。

F=ma と書く。

日本語で書けば、「力=質量×加速度」だ。質量や加速度についての説明は前回の記事に書いた。

さて、さっきまで上で話していた、「時間が遅くなって長さが短くなる」という要素はどこに影響するだろうか。

加速度だ。

時間が遅くなって長さが短くなると、加速度は小さくなる。1秒で加速したはずが、3秒かけて加速したように見える。そりゃ加速度は小さく見える。

さっきの方程式を見てほしい。

同じ力を加えた時に、加速度が小さく見えるのだ。

ってことは?

「質量が大きくなったんだ」って自分を納得させるしかないよね。

ってことでほら、質量も変化した。




以上!!!

長いことお疲れ様でした。

でもほら、ちゃんと時間と空間、そして質量まで歪んじゃったでしょ。


誤魔化さずにちゃんと書いたら長くなっちゃった。

この記事では間違ったことは書いていない。でも、相対性理論を全部書いたわけでもない。もっと知りたくなったら勉強してね。もっと勉強するともっと不思議で面白いことが起きる。

「時空距離が虚数の時、因果律が破れる」

とか格好よくない?

厨二病拗らせた人にこれ見せて物理の勉強させたい。

それでは。

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