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『レオナルド・ダヴィンチ』by ウォルター・アイザックソン

レオナルド・ダヴィンチ』by ウォルター・アイザックソン(土方奈美訳、文芸春秋文庫)

いつか英語でと思っていたけど、結局くじけて翻訳本を買ってしまった。
はじめの主な登場人物を見ただけでも、チェーザレ、フランソワ、ロレンツォ・デ・メディア、ミケランジェロなどそうそうたるメンバー。

レオナルド・ダヴィンチの生涯を追っているのはもちろんだが、時代背景の説明が、歴史の本といってよいほど詳細で、かつ作品の紹介も丁寧。
膨大な手稿をもとに構成されているので、一般の本ではあまり紹介されていないような話もある。
レオナルドのすべて分かる、と言っても過言ではない伝記だ。

作品も、カラーで掲載されているのは嬉しいが、文庫本では、ダ・ヴィンチの細かいタッチまでは分からなかったりする。ハードカバーだったらその辺もわかったのかもしれないが。

ゆっくりゆっくり、読みながらメモは取ったけど、また読み返してみたい。
同じ著者の『スティーブ・ジョブズ』は読んだけど、他の伝記も読んでみたい。

序章プラス、33章まで、読みながらとったメモを貼り付けておく。
写真は載せないので、無味乾燥な記事になるけど、ダヴィンチの作品と言えば、思い浮かぶ方も多いだろうし、ネットでもすぐ検索できるので省略っていうことで。

序章 「絵も描けます」

第一章 非嫡出子に生まれた幸運
生い立ちからとても詳しく書かれている。

第二章 師に就き、師を超える
ヴェロッキオさんの工房へ。 ヴェロッキオさんも結構納期に遅れていたらしい。
モナリザの微笑につながる1枚→『ジネーヴラ・デ・ベンチの肖像』

第三章 才能あふれる画家として
同性愛者であることを隠さなかった。そのため逮捕歴も。
ボッティチェリを批判。 ボッティチェリは、メディチ家のご機嫌を取るのが上手で、フィレンツェで活躍。 ダ・ヴィンチは媚びないので良い仕事も貰えず。 というか完璧主義で仕事がなかなか完成しないので、周りも手を焼く。

第四章 レオナルド、ミラノへ「贈与」される
共和国であるフィレンツェは、周りの国とうまくやっていくため、優れた芸術家を派遣。レオナルドはミラノへ。 軍事独裁国家のミラノの人口はフィレンツェの3倍。 ミラノの宮廷の廷臣になるべく、レオナルドは、ハッタリ満載の手紙を送り、採用される。
実現しなかったが、ペストが猛威をふるったミラノで、原因が不衛生な環境にあることを見抜いたレオナルドは、美と衛生に主眼をおいた新たな「理想都市」の建設という過激なアイデアを提唱。

第五章 生涯を通じて記録魔だった
手稿がたくさんあることは有名。 一枚の紙にいろんなことを書いちゃう。騎馬像のスケッチから、髪をダークブロンドに染める方法まで。

第六章 宮廷付きの演劇プロデューサーに
ルドヴィーコ・スフォルツァの宮廷から声がかかるようになったと言っても、建築家や技術者としてではなく、余興のプロデューサーとして。 この仕事は楽しく見入りが良いだけではなく他の利点も。絵画と違い演劇には絶対的な締切りがあるので、完成せざるを得ないし、舞台装置は科学的研究にのめり込むきっかけにも。
自らリラを演奏。 グロテスク・シリーズは、不思議の国のアリスの挿絵を描いたジョン・テニエルにも影響を与える。 300点以上の文芸作品。寓話、ジョーク、予言、謎かけなど。デカメロンスタイルのファンタジー小説も。

第七章 同性愛者であり、その人生を楽しむ
サライの話など

第八章ウィトルウィウス的人体図
ブラマンテや、フランチェスコ・デ・ジョルジョとともに仕事。親友になる。
ウィトルウィウスは、紀元前の建築家で、シーザーのもとでローマ軍に使え、大砲の設計や制作も。最も重要な功績は『建築論』。 レオナルドと、フランチェスコはこの著書に惹かれる。特に人体比例に刺激を受け、あの有名な図を作成。

第九章 未完の騎馬像
タイトルからして、ダ・ヴィンチさん、また凝りすぎて完成しなかったんだろうなあ、と思ったけど、それだけではないらしい。 軍事支出が芸術のための支出より優先されるように。1494年、シャルル8世がイタリア全土に攻め入り、ルドヴィーコ・スフォルツァが騎馬像のために確保していたブロンズは大砲になってしまった。

第十章 科学者レオナルド
第一一章 人間が鳥のように空を飛ぶ方法
第一二章 機械工学の研究者
第一三章 すべては数学であらわされる
第一四章 解剖学に熱中する

残された膨大な手稿から、あらゆることに興味を持ち、とことん追求尽くしたレオナルドの異常なまでの情熱。 元は作品を作る目的から始めても、それだけにとどまらない。 数学者のルカ・パチョーリと懇意にして、教えを請う一方、パチョーリの著書に挿絵を書くなど、互いに尊敬しあう。 レオナルドは、計算はあまり得意ではないようで、簡単な計算も間違えたりしているが、幾何学に優れ、視覚的な解決を好む。

第一五章 岩窟の聖母
やっと作品の話に戻ってきた🎵 これは実物を見たことがあるし、新情報もないかと思ったらとんでもない! 岩石や植物の知識まで駆使していたなんて。

第一六章 白貂を抱く貴婦人
この章では4作品が紹介されている。
『音楽家の肖像』(唯一の男性像)、『白貂を抱く貴婦人』、『ミラノの貴婦人』、『美しき姫君』。
『白貂』は有名な作品だが、モデルの美女チェチェリアにまつわる話は興味深い。
『美しき姫君』は、レオナルドの作品かどうか、論争が続く。「発見」や「鑑定」の過程などの詳細がすごい。

第一七章 芸術と科学を結びつける
絵画に関する論考をいろいろ執筆していたが、絵と同じでなかなか完成せず、レオナルドの死後、愛弟子で相続人のフランチェスコ・メルツィがノートと格闘してレオナルドの『絵画論』としてまとめた。
影にまつわる考察、光学、遠近法の研究など、完全な理解は難しい。レオナルドの探求心だけは伝わってきた。

ここから下巻
第一八章 最後の晩餐
最後の晩餐については、有名すぎてあまり新情報は、なかった気がするけど、写真もしっかり、説明も詳しくわかりやすい。

第一九章 母の死、そして苦難
フランス軍がミラノに攻め込む。フランス軍はレオナルドに好意的だったが、結局ミラノを去って、フィレンツェに戻ることに。

第二〇章フィレンツェへ舞い戻る
1500年初頭、フィレンツェに戻る旅の途中で最初に立ち寄ったのがマントヴァ。ここでイザベラ・デステの歓待を受け、肖像画の依頼を受けるが、結局描かなかった。催促の様子などが面白い。
『糸車の聖母』の話。

第二一章 聖アンナと聖母子
『聖アンナと聖母子』にもいろんなバージョンがあるとか。
どこまで弟子が描いてどこまでレオナルドの筆なのかわからなかったりする。工房で製作するとそういうことになるのか。当時の習慣としてはごく当たり前。

第二二章 失われた作品、発見された作品
『レダと白鳥』は、は模写しか残っていない。
『サルバトール・ムンディ(救世主)』は、2011年に発見されてニュースになったので、記憶に新しい。経緯も詳しく書かれているが、それよりも、水晶玉の描き方については初耳で、興味深かった。

第二三章 殺戮王チェーザレ・ボルジアに仕える
8か月にわたり、チェーザレに仕え、念願だった軍事技術者として活躍。
しかしチェーザレの残忍性、戦争の悲惨さに心を痛め、マキャベリがフィレンツェに呼び戻されて間もなく、レオナルドもチェーザレのもとを去る。

第二四章 水力工学
フィレンツェ共和国から離脱したピサを支配下に置くためにアルノ川の流れを変えるプロジェクトに携わる。結局成功はしなかったが、レオナルドの理論は、他のことと同様、数世紀後に、別の形で実現。

第二五章 ミケランジェロとの対決
完成しなかった戦争画『アンギアーリの戦い』の製作当時の顛末。
気難しいミケランジェロと社交的なレオナルド。
完成はしなくても、2人の下絵は多くの画家が模写をし、学び、ルネサンスの転換点ともなった。

第二六章 ミラノへ
父の死とともに、異母兄弟との遺産相続騒動に翻弄される。
そのわずらわしさから逃れるとともに、フィレンツェより厚遇してくれるミラノへ。
当時のミラノはフィレンツェに比べ、華やかで知的多様性があることから、好奇心旺盛なレオナルドに合っていたのかも。
ミラノに戻って、地質学、水、鳥類、光学、天文学、建築学の研究でノートを埋め尽くす。
パレードや祝祭では見事な機械仕掛けの装置を作成。

第二七章 解剖学への情熱再び
レオナルドが正確な絵画を描くために解剖まで行っていたことは知っていたが、解剖学そのものに没頭し、発表の一歩手前だったということに驚いた。
しかし、共同研究をしていたマルカントニオがペストでなくなり、実現しなかったのだ。
解剖学の研究には引き続きうちこんでいたものの、発表より知識の追求に熱心で、あとには膨大な未整理の手稿が残された。
もし発表していたら、科学史に残ったはず。

第二八章 地球と人体を満たすもの、その名は水
水であったり、宇宙であったり、多くの事象を科学的に考察、何十年も何百年も先取りする正確さ。
人体のしくみと自然のしくみの共通点を見出すなど、アナロジーをよく用いる。

第二九章 法王の弟に呼ばれ、新天地ローマへ
ようやく見つけた信頼できるパトロン、シャルル・ダンボワーズ(フランス国王からミラノ総督に任命された)が亡くなると、ミラノを離れる決心をする。
弟子であり、息子代わりのメルツィの実家で心地よく暮らしたあと、ジュリアーノ・デ・メディチに呼ばれローマへ。
絵画制作より、化学と工学にのめり込むレオナルド。絵画制作にいそしまないことやジュリアーノが結婚でローマを離れ、その後亡くなったことなどが影響、レオナルドは、メディチ家を中心とする人の輪から疎外されるように。

第三十章 人間の姿をした天使の秘密
新たなパトロンを探してミラノからローマまでさすらった十年間に、3枚の絵を描いている。
『洗礼者ヨハネ』など。

第三一章 モナリザ、解けない微笑の謎
この一番有名な作品を終盤に持ってくるとは!
ここまで読者を引っ張って来られるという自信も必要だし、それよりも、レオナルドが晩年、いや死ぬまで手元においていたという事実に沿った順番なのだ。
この章の内容だけで、新書一冊書いてしまうような作家もいるだろう中、丁寧に、かつ、無駄なページ数を使わずに説明。
離れてみたほうがより微笑んで見える、という最新科学による考察は初耳。

第三二章 最期の地、フランスへ
人生の大半を良いパトロン探しに費やしたレオナルド。
64歳にしてイタリアを離れ、若く、即位したばかりのフランス国王フランソワ一世に仕えることに。フランソワは、カリスマ性と教養を兼ね備えた完璧なパトロンだった。王宮のそばに館を与えられ、絵画制作を強制されることなく、十分な報酬と、研究の時間も。
晩年、思うように身体が動かなくなった苛立ちもあったことだろうが、王に見守られた最後は、幸せだっただろう。

第三三章 ダ・ヴィンチとは何者だったのか
レオナルドに学ぶ、というタイトルでいろいろ。
たとえば、飽くなき好奇心を持つ、他者と協力する、リストを作る、紙にメモをとる、などほかのひともいいそうなことから、先延ばしにする、なんて、まずいだろう〜ということまで。
一番勇気づけられるのは「学ぶこと自体を目的とする」かな。

そういえば、この本をもとにした、デカプリオ主演の映画が公開される、なんて、書いてあったけど、そんな映画はあったのどあろうか?



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