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静かな音楽会

音楽会の練習が始まりました。去年、ぼくは鍵盤ハーモニカをふきました。でも今年はどんな楽器もやりたくありませんでした。いつまでもよそ見をしていたので「まことくんはトライアングルよ」と担任のみつえ先生が決めてしまいました。銀色のトライアングルをたたくと冷たい音がしました。  演奏の中でぼくの出番は3回しかありません。えんぴつがころがるところ。星が流れるところ。そして冷蔵庫のドアが開くところ。楽譜の三カ所に三つの絵を描いておきました。  大きなシンバルの音で練習がはじまりました

    • 主任のつぶやき

      夏空へ雲の落書き奔放に  (風生)  高校生最後の夏休みがやってきました。自身を振り返ると、出来もしない計画をたて、挫折感を背負い込む。教科書を放り投げて背伸びしたい本を読みふけって、重圧から逃げている自分を甘やかしていたことを思い出します。(苦笑)しかしながら「何者でもない自分」を自覚して、他人から見て奇妙に見えても必死に何かになろうとする自分がいたのも確かです。それはともかく夏休みの成功の秘訣としてよく言われるのは最初の3日間の計画と実行であるといわれます。秋の収穫は夏

      • 若者にこそ未来がある

        ●変化を読み取れるか  新クラスが発表されて、最初は落ち着かない日々ですが、そのうち多くの人は漠然と4月を始めてしまいます。しかしある人はルーチンな日常の中にも2年次までと違った変化に気づくはずです。変化は内外に存在します。疾風に舞う桜吹雪は昨年と同じではありません。季節は巡っても人にとっては螺旋(らせん)階段を歩むがごとし、自ら歩むポジションは変化しています。 ●汝自身を知れ  3年次は内なる心の変化に正直に耳を傾けることから始まります。「汝自身を知れ」とは人が生きて

        • 「生と死の教育」を通して生きることの意味といのちの大切さを実感させる教育の推進

          1 取り組みの内容と結果  初任校が上野ヶ原養護学校で、赴任前に校長先生は「君はこの学校へ来たら黒い服を用意しておかなくてはいけない」と言われ、私が不思議そうにしていると「生徒が亡くなるのです。ここは」と言われました。これは大変な学校にきたと思いました。最初に担任した2人の筋ジストロフィーの生徒は天国へ旅立ちました。そういうことがあって「生と死」ということにかかわるようになったのではないかと思います。それから震災や須磨の事件が起き、その後もいじめによる自殺や少年による不可解

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          青春時代は疾風怒濤

          青春時代をゲーテは疾風怒濤(独:Strum und Drang)と呼びました。いよいよ高校時代という後期青年期のスタートです。自分とはどういう人間なのか、と自問する一方で他者に対する目も気になる。妙に比較して優越感を得たり、勝手に落ち込んだりする時期でもある。周りに認められたい、仲間が欲しいという気持ちもあるのに孤独でいたいと思うこともある。なかなか自分自身でも自分が把握できない時代です。この一件危うい青年期を後の人生の根っこにするためにはどのような人と出会うかに決まると言っ

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          明らかな解決法が存在しない課題に挑戦すること

           6月に新聞各社は「日本の先生、遠い働き方改革 そのしわ寄せは授業内容に」という見出で小中の先生の長時間労働について詳しく報じました。経済協力開発機構(OECD)の調査によると長時間勤務の原因は授業に関する研究に費やすというより、部活動や保護者とのやりとりなど雑多な仕事に時間を割いている、割かざるを得ない実態が明らかになりました。私はこれを少し異なる視点で記事を読みました。「明らかな解決法が存在しない課題を提示する授業をおこなっているか」「批判的に考える必要がある課題を与える

          明らかな解決法が存在しない課題に挑戦すること

          磨こう感性!積み上げよう体力!広げよう友だちの輪!

          1月14日からの修学旅行のプログラムをみていると、ワクワクする内容を通して人間力を育てる意図がとても反映されていると感じました。2年ほど前、『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)100年時代の人生戦略』(東洋経済新報社)がベストセラーになりました。著者はロンドン・ビジネス・スクール教授のリンダ・グラットン、アンドリュー・スコットさん。高校2年生のみなさんが人生100年と聞いてもピンと来ないかもしれません。人間の寿命は医療などの発達で伸びており、相当な割合の人が90年、100

          磨こう感性!積み上げよう体力!広げよう友だちの輪!

          「一生ものの人間力をそだてる」視点から時代を読む

           令和元年度は入試改革の混乱、文部科学省の失態として記録される年度になるかもしれない。そもそも入試改革のいきさつを振り返ると、大変懸念される問題が浮き上がる。2000年代に入りOECDが実施する学習到達度調査(PISA)で読解力や理数のリテラシーにおける日本の順位が低下した。まずこれが教育改革の原動力となっている。また、AIの台頭やネット社会の進化を想定したソサエティー5.0社会の到来にむけてイノベーションを作り出す人材育成が急務であるとする産業界の要請が教育に圧力となって押

          「一生ものの人間力をそだてる」視点から時代を読む

          音楽演劇伝達技法とは

          【何をなすのか】 音楽(今回は古典音楽)を用い、 単に鑑賞の素材とするのではなく 優れた芸術作品が有する精神に働きかける力を使って 自己に湧き上がる感情や情念など身体を使って表現する。 【目的は何か(または期待される成果)】 (1)自己変容 その表現過程を体験することにより、 創造力や表現力、および自己発見など生きる力の根底を掴むことを目的とする。 (2)他者とはなにか また、他者の表現を受容し、相互に批評することによって 深いコミュニケーション力を涵養

          音楽演劇伝達技法とは

          今日一日 (佐藤愛子)

          今日一日、親切にしようと想う。 今日一日、明るく朗らかにしようと想う。 今日一日、謙虚にしようと想う。 今日一日、素直になろうと想う。 今日一日、感謝しようと想う。

          今日一日 (佐藤愛子)

          研究1年目を終えるにあたって

          発達障害など種々困難さを有する生徒が高等学校にもかなりの人数が入学している。教育課程の編成基準を改定して、新領域となる「自立活動」を編成できるようにして、高等学校において個々の能力・才能を最大限に伸ばす特別支援教育を実施できるようにする方向が打ち出されている。本研究はそのための実証的研究を行うものである。文科省で行われた研究協議会の席でも初等中等教育局特別支援教育課課長補佐は「本研究は高等学校での通級指導にかかるもので、特別支援教育の最重要課題と位置づけている」と述べている。

          研究1年目を終えるにあたって

          「自立して未来に挑戦する態度」をどのように養成するか

           子高齢化が一層進み、高度情報化社会における知の流動性は一層早くなっている。経済においては豊かさを維持発展させていくためにイノベーションが求められている。また、グローバル化のなかで積極的に世界に貢献していく役割を担う必要が日本に求められている。このような時代の要請もあり、自立して将来を担っていく若者を育てることはすべての教育者の使命である。私は以下の4つの段階を踏みながら課題を実現する学校作りを進める。 1学びの意義と社会を結びつける教育  ぜ学ぶのか。この問いに対する答

          「自立して未来に挑戦する態度」をどのように養成するか

          賢治の知のぬくもり

          東日本大震災後、宮沢賢治の作品の力強さ、言葉の力にあらためて注目が集まりました。賢治というと「銀河鉄道の夜」や「よだかの星」など生と死のテーマを扱ったものも多く、童話といえども大人をも魅了する作家ですね。数ある名作の中で私は「虔十公園林」(けんじゅうこうえんりん)という短編が好きです。かつて、高校生と授業で何回となく読みました。(30分もあれば読了できる短編です)  本文の中で「本当のさいはひ」(本当の幸い)という言葉が出てきます。難しいですね。幸いを求めているのに結果とし

          賢治の知のぬくもり

          読書偶感

          高校生の頃、友人の部屋に上がり込むのが楽しみであった。四方山話に花が咲いた後、本棚を覗くと発見がある。山上たつひこの漫画本に挟まれてアルチュール・ランボーが手招いている。フィリップ・K・ディックの『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』は題名に惹かれて「貸して」と頼む。友人曰く「本棚を見られるのは好きじゃない。自分の脳内をのぞかれるのと変わりないから」。なるほどと感心したことを思い出す。 その後、親元を離れて下宿生活を始めたのでより頻繁に友人と行き来するようになった。脳内の風

          読書偶感

          「エウレカ(我発見せり!)」

           今や課題研究は多くの高校で採用されています。先鞭をつけたのは総合学科高校ではありますが、教育における有効性を多くの教育者が認め、また時代の要請でもあるわけです。  次期学習指導要領では育成すべき資質・能力が三つの柱で示されています。 ① 何を知っているか、何ができるか(個別の知識・技能) ② 知っていること・できることをどう使うか(思考力・判断力・表現力など) ③ どのように社会(世界)とかかわり、よりよい人生を送るか(主体性・多様性・協働性・学びに向かう力・人間力)

          「エウレカ(我発見せり!)」

          餞の言葉

          卒業おめでとうございます。人生を登山に例える先人は多いです。 人生100年時代といわれる昨今、まだ2合目あたりかもしれませんね。 しかし、時間の物差しだけで語るよりも人生という登山は山そのも のを自分で高めていく過程であると思っています。矛盾する光景か もしれませんが山そのものが常に標高を高めています。そして試行 錯誤を繰り返しながら頂上を目指します。当然、いつまで経っても 頂上は見えません。それでも卒業生にエールを送りたい。「自分自 身の山に登れ!高みを目指し

          餞の言葉