明らかな解決法が存在しない課題に挑戦すること


 6月に新聞各社は「日本の先生、遠い働き方改革 そのしわ寄せは授業内容に」という見出で小中の先生の長時間労働について詳しく報じました。経済協力開発機構(OECD)の調査によると長時間勤務の原因は授業に関する研究に費やすというより、部活動や保護者とのやりとりなど雑多な仕事に時間を割いている、割かざるを得ない実態が明らかになりました。私はこれを少し異なる視点で記事を読みました。「明らかな解決法が存在しない課題を提示する授業をおこなっているか」「批判的に考える必要がある課題を与える授業を行っているか」という両方の質問に対して日本の授業は48カ国地域の平均の半分、三分の一以下なのです(右図の↘部分)。逆にいうとこのような授業こそこれからの子どもたちの育成に必要だとOECDは考えているのです。

 一方で、OECDは未来を背負う子どもたちを育てるうえで重要な概念を提示しています。キー・コンピテンシーと呼ばれるものです。コンピテンシーとは単なる知識や技能だけでなく、技能や態度を含む様々な心理的・社会的な資源を活用して、特定の文脈の中で複雑な要求(課題)に対応することができる力のことです(文部科学省HPより)。よく企業で学力やその他も同程度と評価していた両者が入社後、業績が大きく開いていくことが多々あったことから研究された概念です。3つのキー・コンピテンシーを左表に示しました。どうですか? 17期生のみなさんが課題研究に真剣に取り組んだ意図がわかったと思います。学びは何事かをなすための実践に繋がるとき価値を増します。論文の出来、不出来ではありません。本冊子には論文作成を通して一人ひとりが格闘した記録が載っています。

3つのキー・コンピテンシー

1. 社会・文化的、技術的ツールを相互作用的に活用する能力
・言語、シンボル、テクストを活用する能力(いわゆる数学、読解力など)
・知識や情報を活用する能力
・テクノロジーを活用する能力

2. 多様な集団における人間関係形成能力
・他人と円滑に人間関係を構築する能力
・協調する能力
・利害の対立を御し、解決する能力

3. 自立的に行動する能力
・大局的に行動する能力
・人生設計や個人の計画を作り実行する能力
・権利,利害,責任,限界,ニーズを表明する能力

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