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アトピー周辺知識29: 塩化マグネシウム・アレルギー性疾患

 最近まで入浴剤としてはエプソムソルト(硫酸マグネシウム)を利用していたのだが、アトピーにより良い入浴剤は塩化マグネシウムであるとの評判も有りそちらも試し、感触が良ければエプソムソルトを使い切るタイミングで塩化マグネシウムに切り替える事にした。
 取り敢えず試しに少量を購入して使用してみたところ、これが大変良く効いた。実物はフレーク状の結晶をただ触れているだけでも肌にベタついて来る程に水分の吸収性・脱水作用が強く、保湿力の高さや浮腫み解消効果の程が伺えた。
 塩化マグネシウムはエプソムソルトよりもマグネシウムの含有率が高く少量で高いマグネシウム吸収率が見込め(マグネシウム含有率は同量で約2割増、吸収率は用量を参考にするなら倍近くは有りそうだが詳細は不明)、エプソムソルトよりも肌に対する刺激が少なく実際浮腫み改善にもより効果的である。マグバームなど経皮吸収目的のマグネシウム・クリームが全て塩化マグネシウム含有であるのも納得であるし、OS1など経口補水液も同様であり体内に吸収・利用し易い形のマグネシウムと言える。
 一見するとにがりや海水の成分である塩化マグネシウムの方が肌に刺激が有りそうだが、最近の塩化ナトリウムがほぼ完全に除去されたタイプの入浴剤としての塩化マグネシウムはむしろ肌に対して刺激が優しい(にがりや食用塩化マグネシウムは塩化ナトリウムが除去し切れていないため肌や風呂釜を痛める)。またアトピー性皮膚炎に効果的な温泉の成分も塩化マグネシウムが多い塩化物泉であり(豊富温泉も同様)、海水に浸かる事は昔からアトピー治療に効果的とされる。

 「アスパラギン酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、塩化マグネシウムといった形で含まれるマグネシウムは、酸化マグネシウムや硫酸マグネシウムに含まれるマグネシウムより吸収率やバイオアベイラビリティ(生物学的利用能)が高いことが明らか」との事であり、アトピー治療を目的とするなら塩化マグネシウムを選ばずエプソムソルトを敢えて利用する理由はほぼ無いだろう。

 塩化マグネシウムの外用はアトピー性皮膚炎の治療に効果的であるが、そこには複数の理由がある。
 大まかには皮膚修復の促進、抗炎症・抗酸化作用、そして例の如く抗ウィルス活性を併せた免疫賦活作用である(アトピー治療の鉄板三大効果と言える)。

 具体的にはマグネシウムはセラミドやアシルセラミドの合成を促進し皮膚修復を助ける作用が有る。マグネシウムはATP分解にも寄与しミトコンドリアの活動を円滑にするため、それも細胞分裂の活発化として皮膚修復を助ける事に繋がる。

 またマグネシウムは過酸化水素や紫外線などの酸化ストレスからミトコンドリアを保護する役割を担うため、抗酸化作用を持つと言える。

 加えてマグネシウムの欠乏が血清CRPの上昇を招き、逆にその摂取により有意に低下するなど抗炎症作用も示唆されている。ただ詳細な因果関係については未だ研究途上である(強力な抗炎症作用を持つグルタチオンの合成に必須であるためとも)。

 更にマグネシウムは白血球の貪食能を高め、T細胞を活性化させる役割を担うという免疫賦活作用を持つとされる。免疫抑制剤とは真逆の効果であり、薬剤と併用する形でのマグネシウム外用により免疫力低下のデメリットを軽減し補う事も出来るだろう。

 また「げっ歯類のマグネシウム欠乏症は、IgG合成と細胞性免疫を損ないます。合併症には、胸腺の萎縮、IgEの上昇、好酸球増加症、ヒスタミノシス、リンパ腫などがあります。ヒトのマグネシウム欠乏症の免疫学的後遺症は微妙であり、血球マグネシウム濃度の遺伝的制御によって影響を受ける可能性があります。異常なC '活性化、過剰な抗体産生、アレルギーや慢性真菌およびウイルス感染に対する感受性が報告されています。 Mgは、急性アレルギー反応において保護的な役割を果たすようです。」との事であり、マグネシウム欠乏が免疫力の低下とアレルギー性疾患の発症に深く関わっている事が報告されている。

 マグネシウム欠乏によりIgA抗体の産生が低下するとIgA抗体の受け持つ粘膜免疫が低下する事になる。
 「「粘膜免疫」は目や鼻、口、腸管などの粘膜でウイルスや病原体、花粉などの異物の侵入を防ぐ役割をし、さまざまな感染症やアレルギー反応を防いでくれます。」とある通り、マグネシウム欠乏による汎ゆる粘膜での免疫力低下を発端に呼吸器疾患から口腔疾患・胃腸障害を併発し、侵入した異物に対するアレルギーまでもを発症する事になる。つまり粘膜免疫の低下を介してアトピック・マーチの発生にもミネラル欠乏(新型栄養失調)は強く関わっているという事である。

 また塩化マグネシウムやマグネシウムイオン自体にも「有害菌の黄色ブドウ球菌の生育だけを抑制して、有益な表皮ブドウ球菌の生育には影響を与えない」という性質があり皮膚常在細菌叢を良好に保つ効果が有る。これにより有害菌の出すアレルゲンを減らし、アレルギー反応による炎症を抑制して肌荒れや痒みの発生も防ぐ事が出来る。マグネシウムは肥満細胞からのヒスタミンの放出を抑制するためその点からも痒みは起き難くなる。


 上部HPにも書かれている様に塩化マグネシウムは入浴剤として現状最もアトピー性皮膚炎に有効かつリーズナブルな外用剤であると言えるだろう。次点では亜鉛・亜鉛華軟膏が挙げられるが、亜鉛はどちらかと言うと内服が主となる。
 外用の塩化マグネシウムと内服の亜鉛は共にアトピー性皮膚炎及びアレルギー性疾患の治療に非常に有効であると言える(勿論どちらも内服・外用共に行っても良いし、併せてビタミンCも摂取出来ると尚良い)。入浴剤として利用する事で塩化マグネシウムは下手な保湿剤や外用剤を使うよりも遥かにアトピー治療に役立ってくれる(マグネシウム欠乏状態では肌の炎症も充分に収まらず修復も進まず、幾ら保湿剤を使用しても役に立たないとも言える)。


 また1%弱の低濃度の水溶液にして肌に塗布するだけでも痒みに対して効果が有る模様(海水が0.3%、マグネシウム風呂が0.001%程度)。実際に使用してみると以外と即効性も有るが、皮膚への刺激や脱水作用も有るため高濃度にはせず、敢えて高濃度で使用する場合は15分程度かより短時間で洗い流すこと。また低濃度でも刺激が強過ぎてしばらく経っても肌に合わない場合は同様に洗い流すこと。
 経皮吸収を狙って吸収率の高い頬や顎周りに塗るのも良い。個人的には刺激を惹起しがちな患部に直接塗るより、他の健康な部位の皮膚(吸収率の良い所だと尚良い)に塗って吸収させ体内で循環させるのが無難だと思われる。

 マグネシウムを内服する場合の摂取推奨量は通常なら1日400mg前後、治療基準量では1日1〜3gを3回に分けて摂取する。体質改善目的での摂取においては亜鉛同様に少なくとも1〜3ヶ月程度の期間継続して行う必要がある。また内服においてならば塩化マグネシウムよりもクエン酸マグネシウムの方が吸収率が高く、サプリメントとしても広く利用されている(海外では大人向けのサプリから子供向けのグミ等まである)。
 注意として亜鉛サプリを大量に(1日140mg程度など)摂取している場合はマグネシウムの吸収率が低下するため、亜鉛サプリの摂取量をある程度抑えるかマグネシウム摂取量を増やす必要が有る(恐らく経口摂取での話であるため経皮吸収ならば問題は無いか)。


 マグネシウムの経皮吸収に関しては有名な様でいて研究が不足しており、経皮吸収率も詳細には分からない様である(個人的にはコルチゾール合成とHDL・LDLコレステロール及びマグネシウム等のミネラルとの関係も更に知りたいところ)。マグネシウムの抗炎症作用と併せて今後の研究の進展に期待したい。


・追記
 マグネシウムはアトピー性皮膚炎の皮膚症状の改善に有効であるが、亜鉛と同様に補酵素として様々な酵素反応に関与する他、ホルモンバランスの調整や副腎皮質ホルモンの原料となるなど多様なホルモン分泌にも関わるミネラルである。
 アトピー性皮膚炎患者は元来胃腸障害や皮膚症状により亜鉛同様にマグネシウム欠乏にも陥り易く、この事がホルモン異常を来し易いアトピー性皮膚炎患者の体質にも深く関わっている可能性が疑われる。
 皮膚症状の改善のみならず根本的な体質改善、アレルギー全般の解消と免疫力の向上のためにも亜鉛と共にマグネシウム摂取を日々心掛けるべきだろう。

「無機質と内分泌疾患」https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/109/4/109_760/_pdf



 マグネシウムの経皮吸収の方法としては風呂以外にも、最近やや話題になっていたクリームに混ぜて足裏に塗る、脇に消臭も兼ねて塗る、マグネシウムオイルを塗ってしばらくしてから洗い流す、頬や顎周りの吸収率の良い部位に塗る、舌下から吸収、マグネシウム入り歯磨き粉を用いる等々多々有る様である。
 …ネット上でもアトピー性皮膚炎に効果があったとの評判はちらほら見受けられる。

 雑穀や玄米(分つき米)、はと麦がアトピーに良いというのも白米や小麦粉よりミネラルが豊富に含まれるのが理由の一つとして有るだろう。
 …個人的には自身が頭痛など体調が悪い時によく食べて回復していた梅干し・海苔・わさびのミネラル増々茶漬け(普通の茶漬け)もおすすめしたい。

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