結婚して安心を手に入れた話
大人になった。
自分の稼ぎで生活をした。
そんな日々の中でも、
ひとりぼっちだという感覚がぬぐいきれなかった。
家庭というものに対して良い印象はなく、家庭の事情もあり、結婚できるとは全く思っていなかった。
恋人はいたが、もし結婚するのならば事情を話して許してもらわなければいけないと思っていた。
夫と出会う前、別の人と付き合っていた。私の就職により遠距離恋愛だった。仕事を辞めて地元に帰ってきてほしいと言われた。即答でお断りした。仕事を失って、許しを請うて結婚生活をおくるなんて、恐ろしくてできなかった。
そして、仕事をつづけながら、夫と結婚した。
結婚してからも、わたしはあまり家族という感覚はなかった。すこし保障のある恋人みたいな感覚だった。
離婚と再婚を繰り返す両親を見て、まあ最悪そういう選択肢もあるかとも思っていた。ただ、失いたくないとは思っていた。
そんなこんなで結婚して、
一緒に住み始めてしばらくした頃、
私は気が付いてしまった。
わたし、家庭ってものが苦手だ。
結婚してから気が付くなんて滑稽だ。
わたしにとって家庭は、まったくいい印象がなく、評価されて怒られるもので、評価されないと居場所がないし、そのうえ責任があるものだった。
夫は、私の料理が好き。笑顔が好き。
私から、夫が得るメリットは料理や笑顔。
それができない日、絶望的な気分になった。
結婚したことで生活のレベルは上がっているのに、見合う働きをできていない。どうしよう。私がそうやって泣くたび、夫は意味が分からず困っていた。
夫に慰められたり、困った顔をされたり、ケンカになったり、何度もくりかえすうち、ふと思った。
べつに、評価されてないんじゃない?
べつに、できなくても、居場所なくならないんじゃない?
責任はあるけど、それはわたし一人でやるものじゃないんじゃない?
わたしの思う結末が、全然現実にならない。
自己肯定感は地の底なので、そんなはずない、きっといつか捨てられるんだってたくさん泣いた。
でも、くりかえすうちに、だんだん否定できなくなってきた。
わたし、ここではできなくても怒られないんだな。
居場所なくならないのか。
ああ、わたし、ひとりじゃないんだな。
今でもときどき、心配になる。できない自分じゃここにいちゃいけない気がする。めそめそ泣く。それでも、ダメダメなわたしが泣きつかれて寝て起きても、夫はわたしのことを見捨てずに横で寝ている。
おとなになって、結婚して、わたしはまたひとつ、安心を手に入れた。
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