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紙袋

木曜夜の零時少し前
凍てつく夜も温かく
下り電車の賑わいは
健やかなる無法地帯

幽霊の様な境界線を
何でもない風に跨ぐ
通路という概念など
誰も覚えてはいない

ど真ん中に置かれた
高級百貨店の紙袋は
その威厳も虚しく、
なんてことでもなく

夢現の主人よろしく
やけに堂々とした姿
それこそ実に本来の
私だとでも言う様に

昼のいきぐるしさが
存在すら不確かな夜
ただそこに在るのは
星と空と少しの水滴

じいっと見つめても
慰めてくれやしない
無表情で見つめ返し
こう、言ってのける

 重いやつは嫌いだね
 胃もたれしそうだよ
 ライトに生きるのは
 そんなに難しいかい

ふいに、ひょいっと
持ち上げられた紙袋
何でもない顔をして
適当な空気を纏って

幻を見たかのように

幻を見たかのように

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