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推したちのおかげで今日も生きている

推したちのおかげで今日も生きている

◇私のストレス発散方法はカラオケでした。

比較的残業が早く終わった日にカラオケ店があるのでそこに寄って2時間ほど熱唱することが1週間に1、2回ほどあった。
歌うのはもう自由。
ヲタクなのでアニソンだったり、流行り廃り関係なしの邦楽や発音無視の洋楽だったり。
それはそれは楽しかった。

カラオケにいけない時はお風呂で熱唱していた。
主にはカラオケに入っていない、ミュージカルのCDをスマホから流して、役になりきって歌う。
とても気持ち良かった。

◇歌えない。

うつを発症すると、それができなくなってきた。
お風呂ですら、歌う気力がなくなった。

歌うこともエネルギーがいるんだと知った。

退職する日、お風呂でふと口ずさんだのは、ディズニー映画の「リメンバー・ミー」の主題歌、「リメンバー・ミー」だった。


リメンバー・ミー
お別れだけど
リメンバー・ミー
忘れないで
たとれ離れても心ひとつ
おまえを想い 唄うこの歌
「リメンバー・ミー」 石橋陽彩 ディズニー映画「リメンバー・ミー」より

担任をしていた子達を想って歌った。
涙がとまらなかった。

その後約3週間で症状が悪化し、私は精神病棟に入院することになった。
個室だったけど、だからといって口ずさむことも、ましてや大声で歌うなんてなかった。
入院していた約2ヶ月間、全く家に帰れなかった、ということはなく。
後半1ヶ月は日曜日は家でお風呂に入って(日曜日は病院のお風呂がなかった)いた。

それでも、歌えなかった。


◇ミュージカル忍たま乱太郎という心の支え

実はまだInstagramに載せていない話だが、私は入院中にライブ(2.5次元のもの。毎年行っていたやつ)に行った。

知っている方はいるだろうか。
あの国民的アニメ、忍たま乱太郎のミュージカル版がある。
今年で12弾目を迎える、2.5次元界ではかなり歴史のあるミュージカルだ。
メインは6年生や5年生という上級生。なのでイケメンたちが演じる。
当然、乱きりしんの主役3人も出てくる。小学生くらいの子達が一生懸命演じる姿は可愛い。
私は第2弾の頃から追っている(ちょっとした古株アピ)
年に2回、初演再演という順番で新エピソードを公演し、その後に「学園祭」という名のライブを行う。
普段は大人しく聞いているミュージカルナンバーを、思う存分コールアンドレスポンスできてしまうというものだ。

そのライブは入院後期の頃だった。
入院前にチケットをとっていたので、なんとかして行きたかった。

しかも東京と大阪(大阪は地元)。
会場で演出が変わるので、それも魅力だった。

当然、先生と家族とめっちゃ話し合った。
最初は大阪だけにしては?と言われたが、私がめちゃくちゃゴネた。
それはもう大人気ないくらいに。
「これに行くために、私は稼いで、稼いで、頑張ってきたの!!!!!」
心の底からの叫びだったけど、明らかに入院患者の発言ではない。
先生も家族もどうしたものかと頭を抱えていた。


◇掟破りの強行突破

異例中の異例、大特例で行かせてもらうことになった。
もちろん色んな条件があって、その条件クリアのために家族や、友人たちがめっちゃ頑張ってくれた。
東京公演は三公演とっていた(今思えば本当にばか)。大阪公演も同じくらいとっていた。
合計六公演。
しかもオール入院期間中。それでも行かせてくれた。本当に大特例だった。

担当医は「気をつけて、無理はせず、楽しんできてください」と。
ヲタ仲間となった看護師さんから「絶対楽しんできて!」と。
本当にありがとうございます。

友人から、チケット共に「絶対ライブ会場で会おうね!」という手紙がきた。
その手紙は私のお守りになった。

まだコロナが流行る前だった。
父に会場まで送り届けてもらい、友人たちと無事合流した。
「よく来られたね、偉かったね」
と出迎えてくれて、共に会場入りをした。

開演前、ライブで流れるであろう曲がBGMとしてずっと会場に流れていて、それをペンライトを振ったり口ずさんだりしている人もいた。
始まる前から戦闘態勢だ。

照明が消えて、イントロが流れる。
真っ暗闇の中、それぞれの推しの色のペンライトをみんなが振る。
私も当然、推しの色(6年生の制服カラーの緑)のペンライトを両手に振った。

それでもまだ、歌えるかドキドキしていた。
全力で楽しんでおいで、と言われて送り出されたけれど、果たして楽しめるのか。
ライブグッズで、「この時間だけは忘れられるように」と被せられたはずの入院患者のバングルが透けて見える。


◇推したちの力

でもそんな不安は、推しが出てきた瞬間吹っ飛んだ。

目の前で、大好きなキャストたちが歌っている。踊っている。
こちらに向けて、全力の笑顔を向けてくれる。

それに合わせて、輝くペンライトたち。
黄色い歓声。
お決まりのコールアンドレスポンス。

気づけば、私は全力でライブを楽しめた。
好きなセットリスト、サプライズ演出。
前公演を見ていた友人たちはそのサプライズで腰が抜ける私を見て、大爆笑していた。

私「聞いてない聞いてない!!!!」
友人「言ってないからねwwwwwww」

途中、体力がもたなくて、演出の間に座っていた。
けれど、友人が「ほら、来るよ!」と声をかけてくれて支えてくれたおかげで、全曲ペンライトを振ることができた。

先に買ってくれていたライブグッズのタオルで涙を拭きながら、ずっと歌っていた。
終演後には久しぶりにちゃんとした声を出したからか、喉がガラガラになっていた。
迎えにきた父は、「良かったね」といってくれた。

その日から、口ずさむことができるようになった。
院内散歩の時も、周りがびっくりしないように、こっそり歌ったりしていた。

大阪公演は地元ということもあって、先生は家への外泊として許可を出してくれた。
友人と一緒に、千秋楽含め数回公演をみることができた。

大千秋楽は、通路席でした。
大好きなキャストたちとハイタッチして、友人ときゃっきゃしていました。
「投げチュして❤️」のうちわを振っていたら、
田村三木ヱ門から間近投げキッス&ウインクをくらいました。
ありがとう、あの日から君も推しだ。

推し、家族、友達が、私にもう一度歌う元気をくれた。

この人たちが私の“推したち”だ。

別に歌手でもなんでもない私だけど、歌うことがこんなに心のためになるなんて思わなかった。


◇また行きたい、また生きたい

今はコロナ禍。
どこのイベントも延期になったり、中止になったりしました。
ミュージカル忍たま乱太郎も、何度も東京での公演が出来ても、大阪での公演が何度も中止になりました。
この10月末にもう一度、なんとか大阪に来てくれるようですが、このご時勢、本当にどうなるのかわからない。

それでも、あの入院中に行ったライブを思い出して
今日も私は投薬・通院治療を頑張って生きている。

よく死にたくなるけど、あの時を思い出して、ギリギリ生きている。

君は君だよ 誰とも違う
個性大切 十人十色
もっと自分に自信を持って
きっと世界が鮮やかになる

「Enjoy Mode」ミュージカル忍たま乱太郎 第10弾再演 より

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