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打撲citypop
「シティーガールでいたいの」
ティースプーンでレモンティーを搔きまわしながら彼女は呟いた。
そう言った彼女の目は死んでいて、
揺れる目の奥に光は届かない。
気取った喫茶店で
気取ったお洋服たち、
気取った大ぶりアクセサリーに
気取った会話。
20歳らしい青くささが愛おしい。
「へぇ、どうしてなの?」
くだらない返事をしてみたのは同い年の僕だった。
「特に理由はないのよ」
僕の目を睨みつけるやる気のない言葉が、レモンティーに凋落した。
角砂糖をソーサーの上に乗せて、
ティースプーンで転がす僕。
「お行儀が悪い」
とむすっとした声で注意をされる。
顔を見なくても声だけで分かるから面白い。
彼女は何1つ変わっていない。
そう確信して僕は安心したのだった。
くだらないことを怒ってくれる、それだけで充分だった。
「どうしていつもそうなの?」
そう問いかけてきた彼女は僕の手元に視線を落としたまま。
「特に理由はないよ」
口角をほんのちょっと上げてみせた。
さよなら青春、続きはまた明日だ。
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