月ぞ流るる 澤田瞳子著
赤染衛門が何故に[栄花物語]を書くに至るまでの物語です。かって和歌の名手と謳われた赤染衛門こと朝児、夫大江匡衛を亡くし、五十半ばを過ぎてこれからは夫の菩提を弔いながら、余生を過ごすのか。朝児はかって大納言源雅信の屋敷で姫君の倫子付きの女房として働いていた。倫子は宇多天皇の曾孫に当たる血筋正しき姫君、我こそは婿にと、大勢の公達が出入りしたが、倫子が選んだのは摂関家の五男、今の左大臣道長、この時朝児の所に通ってきたのが匡衛だが、いざ添ってみれば浮気な男、よその女に男児まで生ませた